レベル11・スケルトン は 諦め なかった!
「ちっ、もう来やがったか」
「ま、どうせ暇だったんだ、いい遊びにはなっただろ」
えー、あんたらこの人ら来るんわかってたんですかい。
わかってたんなら言ってよね、無駄に気を使っちゃったじゃん。
さて、冒険者の記憶さんマジ頼りにしてます、今日も教えて冒険者の記憶さ〜ん。
あ、まずは見た目から伝えないと情報提供してくれないんですね。
えーっと銀色っちゅーよりあれはなんてーの? 鉄の色? 鈍色ってゆーんかな。
まあそんな感じの全身鎧ですね、似たような形を何枚も重ねたような蛇腹っぽい見た目をしております……あ、これ結構珍しい作り方なんですか。
そんで胸の中心あたりにちっちゃいカイトシールドみたいな頂点が下向きの三角形で、金縁の青い飾りが付いてます、金の装飾はあっちこっちにありますな、なんか貴族の鎧みたい、実用性あんのかなー……
あ、あれ魔法を付与するための模様なんですか、へーあれ魔法防具なんだ。
そんで下着? なんか卑猥な響きだからインナーって言っておこう、インナー。
そのインナーは青で統一されとります、青っちゅーか空色っちゅーかなんちゅーか、模様とかは無い無地だけどなんか魔力みたいなん感じるなー……
どうでもいいけどあの鎧カッコイイなー、いーなー、ほしーなー、くれないかなー、無理か。
全身鎧から肩以外の関節の部分だけ動きやすく少なくしたようなデザイン、イイネ!
俺も鎧が欲しい今日この頃です、今って防具と呼んでいいもの着けてるわけじゃないし、むしろ魔力タンク以外の意味ないし、言ってて悲しくなってきた。
えーっとそんでこれはどこの騎士団になるんでございましょ?
……
…………
………………
どっかの王国の正規軍ですか、しかも最強って言われてる部隊ですか、魔法も剣も踊りまでこなせちゃうスーパー騎士様達ですか、すげぇ人らじゃん。
でもどこの王国かはわからない、と。変なところで使えねぇな。
よし、逃げよう。
魔法も踊りもできちゃうスーパー騎士にスーパースケルトン(予定)の俺が勝てるわけがない。
鼻で笑われながら殺されちゃうよ、瞬殺だよ、スーパースケルトン? そんなのいたっけ? くらいの感覚でヤられちゃうよ。
しかし逃げるにしてもどこに逃げよう?
完全に騎士団が通路を塞いでるよ、……お嬢さん、じゃなかったお姫様の後ろにも一箇所通路があるけど……
あれ? あそこ騎士団いないじゃん、ラッキー、あそこに逃げよう。
「貴様ら、これ以上逃げられると思うなよ!」
あの騎士さん人間基準だとカッコイイな、気のせいかキラキラしてる。
金髪碧眼イケメン騎士とか、モテる要素しか無いじゃないか、まあスケルトン基準だとカスもいいとこの不細工だが。
あー、やっぱ持ってる剣も格が違うわー、なんかもうさっきの誘拐犯のナイフが暗殺剣(笑)になりそうなくらい格が違うわー、大人と子供くらい違うわー。
「へ、バカが、何も考えずにダンジョンに来たとでも思ってんのか?」
「どういう意味だ」
いつかあーゆー剣が使えるようになりたいなー、どうやったら手に入るんやろ?
いっそダンジョンさんにご協力いただいて自分の剣を強化してったほうがいいんかも、食ったその場で吐き出してもらって……あ、この剣俺の手から離れないんだった。
とりあえず誘拐犯と騎士団が話してるうちにこっそり移動しよう。
【アクティブスキル:気配遮断を獲得しました】
「ふん、ここがどこだかわからんのかということだ」
どこってダンジョンやんけ〜♪
なんて言ったら怒られるかな、なんかシリアスなふいんき(←なぜか変換できない)だし、余計な口出ししないほうがいいよね、どうせ言葉出ないし。
しかしみんな空気に呑まれてるのかねぇ? だーれも僕チンに気づいてくれない、そんなに存在感無いかなー、まあ所詮スケルトンだしなー、スーパースケルトンにならないと誰も注目してくれないかー。
「なんだと……?」
「つまり、ここはフロアガーディアンの扉の前だということさ!」
しっかし思ってたよりスーパースケルトンへの道は長いなー、冒険者でもない誘拐犯二人相手でもう負けそうになってるもんなー、いや正直一人相手でも勝ててたかって聞かれると自信無いんですけどね。
スピードのほうは暗殺剣(笑)が無ければいけるかも、無理かなー?
「フロアガーディアンの部屋は一度入ったらもう外から開ける手段はねえ、ガーディアンを倒すか、逆に殺されねえ限りはな」
「そしてこの低層階にいるフロアガーディアンはブラッドスライム、溶解液を飛ばしてくるだけの雑魚だ。
まあ、俺たちにとっては、だがな」
へー、そんなんいるんや、ダンジョン生活も結構長くなってきた……わけでもないけど、そんなヤツ見たことないなー。
スライムのくせに生意気なヤツだ、溶けるとかマジで怖いんだけど、絶対に戦いたくない、絶対に戦いたくないでござる。
「姫様を部屋に連れ込むつもりか……っ!」
「はーはっはぁっ!
その通りだよお坊ちゃん。
俺たちゃ突っ立ってるだけでもブラッドスライムごときに負けやしねぇ、だが魔力もない一般人じゃひとたまりもねぇだろうなぁ!」
なるほどなるほど、つまり部屋に引きこもって姫様を殺されたくなければ要求を飲めと言うわけですね。
居場所がわかってるのに手が出せないとか、エゲツない手を使うなー、汚い、さすが誘拐犯汚い。
あ、気がついたらスピード君がめっちゃ近い位置にいる。
「おおっと動くなよ?
俺が持っているのは暗殺剣ブラックリッパーだ、見た目の刃と実際の刃が違うことくらいは知っているよな?」
あー、やっぱそういう効果だったんや。
逆にそれ以外の効果は無いんだろうな、あのイケメン騎士の剣を見た後だとそんな感じがするわ。
でもちょっと欲しいよなー、暗殺剣(笑)でもあると便利そうだよなー、盾の内側に仕込むとかして二刀流! キラーン! みたいなことしたいなー。
「ふん、それで姫様を殺してしまえば、逃げ場が無くなるのは貴様らの方だろう!」
なんか騎士さんとの話し合いに夢中になってるなぁ、こっち気づいてないよな多分。
いや騎士さんはなんかチラチラこっち見てくるんだけど、こっちの誘拐犯二人は完全に気づいてない、さっきまであんなに激しく体と体をぶつけ合っていたのに……弄ばれたのねっ!? ヒドイっ! ヒドイわ!
あ、なんか本気でイライラしてきた、逃げる前になんか嫌がらせしたろ。
「はっ、お前らが見捨てるなんてことをするならその通りだけどな!
そんなこたしねぇってことくれえわかってやってんだよ!」
「クッ……」
よーし、あとちょっとで通路だ。
ちょうどスピード君の真後ろ辺り、どんな嫌がらせがいーかなー、殺すっていう選択肢が浮かばないあたりまだまだヘタレだねぇ、全然殺せるイメージがわかないからしょうがない。
しかしこんだけ近づいても誘拐犯どころかお姫様にも気づかれないとは、俺はどんだけ空気やねん。
まあ完全に蚊帳の外って感じなのはそうなんだけどさ、ここまで無視されるとちょっと悲しいわ。
ここで暗殺剣(笑)があればこう必殺! って感じで後ろからサクッとヤれたんだろうけどね……あ、それにしよう。
ヤツの暗殺剣(笑)をいただくという嫌がらせをしよう、そんで奪ったらさっさと通路の奥に逃げる、幸いなことに扉も付いてるし、閉めれば後は騎士団の皆さんが上手くやってくれる筈。
よし、さっそく実行だ〜、コソコソ〜っとね。
「さあ、状況がわかったらとっとと帰んな!
そんで要求した通りの金を持ってくるんだ、そうすりゃ姫さんは見逃してやる!」
うわーぉ、騎士さんの顔がこわーい、せっかくイケメンなんだから笑ってたほうがいいよ? まあスケルトン基準だと笑顔もキレ顏もどっこいどっこいだがな! 骨になってからまた来なさい。
さて、スピード君の真後ろにいるわけだが、微妙に腕が狙い辛いなぁ、体が邪魔。
かといって体ごと切り裂けるほどの訓練もしてなければそんな武器も持ってません。
ここは振り返らせてこっち向いた瞬間に腕を切り飛ばす感じでいこう、腕だけならなんとかいけるはず。
肩をトントンと叩いてやればさすがに気づくだろう。
トントンっと。
「え?」
ついでに声まで出しちゃおうかな。
「カカカッ」
「う、うおぁっ!?」
振り向いた、瞬間を、狙う!
えいっ。
「ぎっ」
ぎっ? ぎってなんぞ? もしかして大賢者様だけが使えるという単詠唱魔法か!?
顔に見合わずやっぱり魔法使いだったのか!? まずい! この距離で魔法はさすがに避けられーーーー
「ぎゃぁぁぁあ!?」
ってなんだよ、ただの叫び声かよ、焦ったわー。
あ、パワーのほうがやっと気づいた……って暗殺剣(笑)が騎士さんのほうに! イケメン騎士のほうにーーー! アカン、あれはもう回収不可能や、騎士さんが拾わなくても周りの大勢の騎士さんの誰かが拾ってまう。
くそう、諦めるしかーーーー
「てめえっ!」
おおっと危なっ!
こらアカン、もう逃げよう。
お姫様ちょっとどいてねー、ワタクシの逃走最短ルート上にいるのよアナタ。
ぬおぉパワー君が真横にぃっ!? これはマズイっ! 逃げ道がそのまま剣の流れに……ってこれ避けたら姫様を切っちゃうよ! 周り見えてないよこの人!
別に助ける義理は無いけどっ! 命のやり取りする覚悟も決めてない一般人がっ! 巻き込まれて死ぬのはなんか嫌だっ!
やるしかない、なんとかするしかない、なんとかできるはず、じゃないとスーパースケルトンなんて目指せない!
受ける、無理、パワー負けする、身体能力的に絶対無理、逸らす、どっちに、下、勢いがありすぎる、逸らしても地面に当たる、陥没する、態勢が崩れる、次で終わる、上、しか、ない、どうやって、当てる、どこに、腕、届かない、剣、腹、できる? 無理、腕の力だけじゃ無理、諦める、嫌だ、体全部使う、やり方を知らない、諦める、嫌だ、回す、腰から、諦める、嫌だ、諦める、嫌だ、足を軸に、諦める、嫌だ、上半身を独楽のように諦める嫌だ、円を描くように、諦める嫌だ、半円を描く諦める嫌だ、ぶつけるんじゃない、諦める嫌だ、諦める嫌だ諦める嫌だ、受け流すんだ諦める嫌だ諦める嫌だ諦める諦める諦める諦める、見捨てる。
……嫌だ。
俺は、嫌だっ!




