7話
護衛の仕事をしつつ、アデールへと馬車で向かって数日が立っている。魔物の襲撃は無く、特に問題は無い。左が森、右が崖で、その下には海になっている街道を通って進んでいるのだが、最初こそ物珍しくウキウキとしていたが、それもじばらく同じ景色で変わら無ければ飽きが来る。ましてや、娯楽が無い世界なのだから仕方無い。ライサは編み物してるし、フリオは馬車の中で腕立て伏せや剣などの整備をしている。マルクは御者だ。
そして、俺はフリオに付き合って訓練してもノルマをこなしたら暇になる。召喚器であるステンノを無駄に何度も整備するぐらいだ。本来なら整備すらいらないのにだ。
「ひ~ま~だ~」
「もうちょっとだ」
「でもさ~暇なんだよ~~~魔物でも出てこないかな?」
「物騒な事言ってんじゃねえよ」
御者台に居るマルクに注意されてしまった。まあ、確かに物騒だけどね。
「実際、出たらお前に譲ってるじゃないか。我慢しろよ」
「単体とか、楽勝なんだもん」
魔物に襲われても、野犬だったり、蛇だったりするので楽勝なのだ。ステンノの一撃で終わってしまう。着弾ポイントを注意しないと粉々に吹き飛ぶ程の威力が有るし。
「あ~ちょっと屋根に登って来る。」
「壊すなよ」
「危ないわよ?」
「大丈夫」
俺は暇なので屋根の上に登って、寝転がる。そして、大空を見上げてそこに飛ぶ鳥達を見る。そして、横を向いて海を見る。そして、ふと考えた。
「ね~ね~」
屋根の端から顔だけを出して、中を覗きつつ声をかける。
「今度は何だ」
「晩御飯に鶏肉とかどうよ?」
「それは嬉しいけど…………」
「出来んのかよ?」
「やってみる。音に注意してね」
うつ伏せに寝転んで、射撃体勢を取る。狙うは前方を飛んでいる鳥の群れ。タイミングを図って発砲する。発射された弾丸は鳥には命中せずに明後日の方向へと飛んでいった。しかも、アフォーアフォーとカラスのように鳴いて来る。
「にゃろ…………絶対に晩御飯にしてやる…………タイミングと距離を修正。馬車の移動速度が時速30キロと過程して、鳥との相対速度を計算…………」
角度などを計算してトリガーを引く。そして、放った弾丸は外れる。分割思考で弾道計算や鳥の軌道、回避パターンを解析して、戦術を組んでいく。自分でも無駄な事をしていると思うが、これはこれで暇つぶしには良いし、熟練度アップも狙える。
なので、誤差を修正したら即座にトリガーを引いて、弾丸を放つ。弾丸が切れたらマガジンを交換する。それを何度も繰り返す。
「うるせぇ…………」
「我慢しろ。魔物寄ってこなくなるさ」
「でも、兄さん。弾薬は大丈夫なのか?」
「さあ?」
「平気でしょ。流石に計算していると思うわよ」
「だと良いな~~~」
それから繰り返す事54回。敵を誘い込んで一箇所に集めてそこに銃弾を放って鳥の羽を撃ち抜いた。
「やったっ!! マルク、回収して!」
「へいへい」
馬車をいったん止めて、落ちた鳥を回収して馬車の外に吊るす。血抜きを行うのだ。
「でも、出来たら屋根に落としてくれ」
「面倒な…………まあ良いか」
それから、食料調達がてらの狩猟で射撃訓練を行って行った。後、何匹か落とした。
晩は文字通り焼き鳥だった。この鳥はブリスという鳥で、毛を剥いだあとに岩塩をまぶして焼いただけなのに味は結構美味しかった。
「ねえ、岩塩しか無いの?」
「他に塩が有るのか?」
「塩は岩塩しか無いわよ。結構高いんだから、大切に使ってるのよ」
「そっか~」
この世界はまだ海水から塩を作れるのを知らないのかな?
知らないなら結構儲けられそうだ。
「確か、どこか遠くの国で違う塩を誰かが見つけたって聞いたな」
「そうなのか?」
「俺は兄さんと違って、1人寂しく酒場で飲んでたからな。ついでに情報収集しておいた」
「お前も早く妻を取れよ。クレハは…………」
「お断りだな」
「絶対ヤダね」
フリオの言葉に俺とマルクの声が重なった。
「そっか」
「まあ、その話しは置いておいて、今日は早めに寝ましょう。明日はギグル山を通るんだから」
「それもそうだな」
「何、そのギグル山って、楽しいの?」
「ある意味楽しいかもな。今は魔物の他にも盗賊が出るらしい」
「マジで?」
「ああ」
盗賊か~~~人を殺した事は無いんだよね。大丈夫かな?
って、紅葉を目指すんだから、敵は殺さないと駄目じゃん。
【クエスト:初めての人殺し】
・この世界は弱肉強食です。強ければ生き、弱ければ死にます。今まで殺して来た動物や魔物と同じように殺しましょう。
・達成報酬:武器強化カード
【クエスト:初めての盗賊退治】
・ギグル山に潜む盗賊を10人以上殺しましょう。
・殺した人数0/10
・達成報酬:魔法適性カード(10人毎に報酬追加)
凄く欲しい。でも、人殺しなんだよね。俺に出来るか…………いや、やるしかないんだ。
「大丈夫?」
「だっ、大丈夫…………人を殺した事が無いから緊張しているだけ…………大丈夫」
「そう。でも、割り切らないとクレハやクレハの大切な人が死ぬ事になるわ」
「わかってる…………この世界は弱肉強食だから」
「ええ。それならいいわ。でも…………」
俺はライサに抱きしめられた。
「今日はこのまま寝ましょう」
「うん…………」
そのまま母親のような温もりに包まれて、眠った。
【ステータス】
Name:クレハ
Class1:魔導技師Lv.1
Class2:戦術家Lv.3
Class3:魔導師Lv.1
HP:100/200
MP:400/400
Str:20
Agi:20
Vit:20
Int:10+40
Dex:30+40
Luk:20
【パッシブスキル】
《魔導知識Lv.1》《戦術眼Lv.2》《部隊運用Lv.1》《魔力回復(小)Lv.1》《魔力操作Lv.2》《分割思考Lv.2》《戦闘の才能Lv.MAX》《天賦の才Lv.MAX》《獲得経験値上昇Lv.MAX》《老化遅延Lv.MAX》《寿命増加Lv.1》《第六感Lv.2》《体力回復(中)Lv.1》《魔力回復(中)Lv.2》《体術Lv.2》《剣術Lv.1》《魔術Lv.1》《射撃Lv.2》↑
【アクティブスキル】
《魔導器召喚Lv.MAX》《魔導器生産Lv.1》
【装備】
ティルヴィング(剣、封印)
ステンノ(銃、封印)
エウリュアレ(銃、封印)
七色の断罪者セット