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6話

 





 道すらない森の中を自由気ままに歩いて下って行く。この世界の森には危険がいっぱい、夢いっぱいだ。


「あ、クマノテ草みっけ」


 そう、薬草や茸が生えている。食べられる物や毒まで、沢山有る。もちろん、危険は有る。そう、危険だ。例えば、目の前に出て来た3メートルクラスの頭に薬草が生えた黒い毛皮の熊とか。ちなみにクマノテ草はポーションなどに使ったり、匂いを消す為に結構人気みたいだ。そのせいか、この草が生えている熊の匂いは限り無く無い。


「新米冒険者は出会ったら、死ぬって言わてれてたけど…………アタシなら問題無し!」


 睨みつけて来る熊に向かって、腰を落としてステンノのスライドを引いて、初弾を装填。そして、両手で持って熊に向かって構える。熊はこちらに接近して来て、凶悪な爪の手をこちらに向けてくる。俺は食座にトリガーを引く。マズルフラッシュと共に放たれる弾丸は熊の腕を貫通して吹き飛ばした。

 熊は雄叫びを上げながらバランスを崩す。こちらも、反動で振り上がった腕を無理矢理戻して、痺れる手でもう一度構えて再度トリガーを引く。今度は熊の胴体に命中して、熊の腹に穴が空いて死亡した。


「っ~~」


 反動を下げたとはいえ、かなり強力な反動だ。こっちにもダメージが有る。ただ、一発だけで十分な威力は有るので問題無い。レベルを上げて行けば、そのうち問題無くなるだろうし。


「それより、剥ぎ取り剥ぎ取り」


 喜びながら、熊のそばに行って座り、ナイフで血を浴びながら解体していく。


 少しして、解体が完了した。頬っぺたに着いた血を袖でぬぐい取る。


「あっ…………しまった…………」


 身体を見ると、血まみれの服が一瞬で綺麗になっていく。どうやら、浄化は問題無いようだ。女の子としては駄目だと思うが、着たきり雀が出来そうだ。これは旅をする上ではありがたい。問題は下着とかも全部女物…………女だから仕方無いが。やはり、早く性転換薬を手に入れ無いと。


「まぁ、そんな事より、問題は有るんだけどね…………ここはどこぉぉぉぉぉっ!!」


 そう、適当に森の中を進んでいた為に絶賛迷子中なのだ。そして、当然の如く周りから返事は無い。

 嘆いても仕方ないので、お腹が減ったから料理を作る。先ずは燃えそうな枝を集めて、焚き火を作る。火はファイヤーアローを最小の威力で点火する。後は枝を解体で使ったナイフを水魔術で綺麗に洗った後、枝を削って綺麗な串を作って、熊肉に4本くらい刺して、香草と一緒に火に焼べる。

 この間にロープを周りの木に張り巡らして、鳴子を作っておく。

 そして、木に登って丈夫な枝にハンモックを仕掛ける。これらの準備が終わったら、肉を回収する。周りが焦げているので焦げた部分を切り落として中身を一口サイズに切って食べる。


「…………うん、微妙だ…………」


 少なくとも塩が欲しい。調味料無しだと辛いや。でも、食べれたらそれでいい。

 食事を終えたら、ハンモックで眠りに付く。




 襲撃などは無く、人が通りかかることも無く、次の日となった。仕方無いので今日も歩きだ。でも、ふと思った。木の上から街道を探せばいいじゃないかと。なので、ハンモックを片付けたらもっと高い所まで登って行く。

 この木は大きく、かなり登っていると鳥の巣が有った。


「くぎゅるるるるっ!!」


 威嚇して来る鳥の親。他にも鳥の巣が有り、大変危険だ。でも、それを無視して上に登って行く。鳥達はこちらを警戒だけしている。そして、頂上辺りに着いたら周りを見渡してみる。

 雄大な大自然が見える。人間の目じゃ無理だ。


「ま、ここは文明の利器でしょ」


 アイテムストレージの四次元ポーチから双眼鏡を取り出して、それで見る。すると、目測でここから左に7キロくらい先に街道が見える。取りあえず、そっちに行ってみる事にして、木から身長に降りて行く。


 焚き火をしっかりと消したら朝食に干し肉を食べながら移動する。移動する事6時間。街道にもう直ぐとい所でトラブルが発生した。


「ちっ、しつこいっ!!」


「「「ぎぎっ!!」」」


 小さな緑の肌をした子鬼が大量にこっちへ襲いかかって来たのだ。ソナーは魔力節約の為に使っていなかった。どうせ大した魔物も出ないと思っていたのだが、数が多い。40体以上も居るのだ。

 流石は繁殖力が異常に高いゴブリン。こんなのに捕まって苗床ENDなんて死んでもゴメンだ。だから、必死に逃げる。

 有る程度距離が離れたら、身体ごと振り返ってステンノを構えて発砲する。ステンノの弾丸はゴブリンを数体巻き込んで、蹂躙する。その光景と音にゴブリン達の動きは一旦だが止まる。その間に反転して逃げる。もちろん、ゴブリン達も俺を逃がすまいと直ぐに追ってくる。


「はっ、はっ、はっ」


 だんだんと呼吸が荒くなって来る。手の痺れが収まったらまた反転してステンノを撃つ。そして、また直ぐに逃げる。逃げる途中でマガジンを捨てて、四次元ポーチから新しいマガジンを入れて、スライドさせて銃弾を装填する。早く固有砲台が欲しい。

 なんとか街道に転げるように出ると、そこには馬車が迫ってくる。


「うぉっ!? 危ねぇえぇぇぇっ!!!」


 馬車はどうにか私の前で止まってくれた。俺はこれ幸いと馬車に飛び乗る。


「おいっ!!」


「良いから死にたくなかったら早く出して!!」


「ちっ、ゴブリンだ!! それも数が多いぞ」


「あっ、ああっ、わかったっ!!」


 御者の男は他の馬車に乗っていた者の声を聞いて馬に鞭を打ち、馬車を走らせる。俺は馬車の中に入って、後ろから外を覗く。後ろからゴブリンが追ってくる。


「嬢ちゃん、見たところどこかのお嬢様だが…………その銃で戦えるか?」


 俺の服装を見て、お嬢様と判断したのか、冒険者の格好をした男が聞いてきた。魔術師の格好をした女も居るが、そちらは馬車の後ろから魔術を放ってゴブリン達を攻撃していく。


「もちろんよ」


 ステンノを構えてトリガーを引く。轟音と共にゴブリン達の一部が吹き飛ばされる。その威力は魔術を使って迎撃している人より高い。


「とんでも無い品ね。それより、これは報告した方がいいわね」


「だな。ゴブリンの巣がこの近くに有るみたいだな。しかし、森の中に居たみたいだが、よく無事だったな」


「無事じゃないよ。こっちは逃げながら撃ってなんとか逃れたんだから…………もう走れないわよ」


 俺はその場で座り込んで、足を投げ出す。


「そうか」


「おい、お嬢ちゃん。乗ったんだから金払えよ。これはアデールの漁村まで直通で行くから、前の街からだとして、値段は半銀貨3枚だ」


 この世界の貨幣の値段はこうなっている。

 半銅貨:100円

 銅貨 :1,000円

 半銀貨:10,000円

 銀貨 :100,000円

 半金貨:1,000,000円

 金貨 :10,000,000円

 つまり、半銀貨3枚は3万円となり、かなりの値段になる。


「あ~~手持ちが金貨しかないんだけど…………いける?」


「無理に決まってんだろ!!! 釣りなんかねえよ」


 孤児院じゃお金使わないしね。


「それじゃあ、この子は護衛として乗せたら良いんじゃない?」


「実力は知らんが、さっきの銃の威力はかなりの物だ。役に立つと思うぞ」


「乗せてくれるなら、只働きでも良いよ?」


「ん~~~」


 悩んでいる御者さん。


「水と食料は有るよな? こっちに余裕は無いぞ。それと銃を使うなら弾丸はどれだけ有る?」


「100発と5発入りマガジンが9個満タンで有るよ」


 弾丸はここ数年で溜め込んである。実際はもっと有るけどね。


「十分そうか?」


「十分だ。それだけあれば余裕だ。このお嬢ちゃんは戦力になるぞ」


「良し。なら、アデールの漁村まで雇ってやる」


 護衛の人達と相談して、雇ってくれる事になった。助かった。これで迷わなくて済む。


「ありがとうね。じゃあ、早速で悪いんだけど…………寝させて」


「ああ、何か有ったら起こす」


「お願い」


 アイテムストレージから毛布を出してそれにくるまって眠りについた。何時でも戦えるようにステンノを握ったままだ。





 馬車の揺れで起きると、既に太陽は下がって夜になっていた。俺は起きだして、馬車から出る。


「起きたか。身体は大丈夫か?」


 そこには護衛の男性が居た。


「ん~~~まだ身体は怠いけど、何とか大丈夫」


 伸びをしながら答え、ついでに身体を解していく。


「今、ライサが飯を作ってるから手伝ってやってくれ」


「ライサ?」


「ああ、自己紹介がまだだったな。俺はフリオ。アデール村出身の冒険者だ。で、ライサは俺の妻でさっきの魔術師だ」


 フリオは金波碧眼で、逆毛の人だ。顔は厳つくて怖い。


「…………リア充爆死しろ…………」


「ん? 何か言ったか?」


「いや、何でも無い」


「そうか。それで、御者をしているのが俺の弟で、マルクだ」


 マルクも金髪碧眼だが、こっちは小物っとぽい。


「アタシはクレハ、よろしくね。それじゃあ、手伝って来るよ」


「ああ」


 料理をしている女性の方へ行く。


「手伝うよ」


「ええ、お願いね」


 振り返ったライサさんは一言で言うなら美人だ。昼間はフードでわからなかったが、綺麗な腰まであるサラサラそうな金髪に赤い瞳。100人入れば99人は綺麗だと答える人だ。


「うん。爆死して粉々になれば良いのに…………」


「どうしたの?」


「何でも無い。それより、熊のお肉なら有るよ」


 アイテムストレージから四次元ポーチを出してライサさんの背後で取り付け、熊のお肉を出す。


「そのポーチ、魔法のポーチなのね。高価な物を持ってるわね」


「あげないよ。これはアタシのだしね。それより、はい」


「ええ、ありがとう。フラワーベアのお肉ね。これはスープに入れた方が美味しいわね」


 クマノテ草が生えているからフラワーベアなのかな?

 どうでもいいか。


「切って入れればいい?」


「ええ」


 ライサさんがかき回している鍋に熊肉を切って入れていく。


「私はライサでいいわ」


「アタシもクレハで良いよ」


 お互いに自己紹介して、料理していく。といっても、あんまりする事は無いのだけれど。


「クレハは冒険者なの?」


「まだなってないよ。訓練所は卒業したから、これからなろうと思ってる」


「そうなのね。でも、どうしてあんな所に1人でいたの?」


「卒業試験が終わったからその場で別れたんだ」


「無茶苦茶ね」


「今ではそう思う。でも、さっさと逃げないと住んでた所でどんな目に遭わされるかわからないしね。だから、さっさと逃げてきた。これからは自由に生きるの! あっ、ライサは性転換薬とか知らない?」


「そっ、そんなの聞いた事ないわよ…………」


「そっか、残念」


 引かれているけど気にしない。それから、出来たスープと硬いパンを食べる。


「夜の見張りだが、クレハは可能か?」


「大丈夫。むしろ、アタシがするから寝てて。明け方に交代して、寝るから」


「大丈夫なのか?」


 マルクが不安そうに聞いて来る。


「大丈夫。こう見えても索敵魔術が使えるし」


「じゃあ、なんでゴブリンに追われてたんだよ…………」


「ふっ、そんなもの…………魔力節約の為に使って無かったに決まってるじゃない」


「ダメじゃん!!」


 思いっきり突っ込まれたけど、これは仕方無い。


「うん、後悔している。もうちょっとで大変な目に遭ってたと思うし…………」


「まあ、女性がゴブリンに捕まるとそうなるだろうな」


「こっちは大丈夫だし、任せてよ」


「わかった」


 ご飯を食べた後、俺は見張りに付く。しかし、早く性転換薬を手に入れないとまずいかも知れない。表は基本的に前のクレハにしているが、この頃は特に違和感も感じなくなって来た。しかし、そっちはゆっくりやってくしかない。それより、今は漁村が楽しみだ。塩の香りがしだしているし、海なのかな?

 そうだとしたら、期待が持てる。










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