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5話

 





 体調の回復を確認されて、元の大部屋に戻される事になった。ベット事は悲しいけど、これもまた仕方無い事だ。


「はい、では書き取りを始めてください」


 現在、庭で開かれているエメリナ先生の青空教室で、字を習っている。もちろん、日本語とは違う。統合前のクレハは喋れるが、漢字までは習っていなかった。だから、こちらは頑張らないといけない。

 練習方法は簡単だ。見本の字が書かれた大きな砂版を見ながら、手元に有る砂版に何度も書いて、何度も消して行くだけだ。



 書き取りが終わったら算数の授業だ。こちらは実際に林檎のような果物を持ってきて、計算させる。


「アップル1つと、こっちのアップル3つを足すといくつになりますか?」


「「「4つ!」」」


 この授業は使った果物が後で子供達のおやつとして渡される。そして、成績の優秀な子には沢山貰えるので、子供達はみんな頑張っている。

 俺は机の下でグー、パー、グー、パーと手を開いては閉じて握力上げをしたり、魔力回路に魔力を流してゆっくりと拡張させながら参加している。この程度の授業で間違えるはずは無いのだから問題は無い。


「さて、それでは問題を解いていきましょう。問題が解けた人からアップルを選んでくださいね」


「「「はいっ!!」」」


 出される問題をさっさと解いて、エメリナ先生の元へと向かう。


「もう解けたの?」


「うん…………答えはこれ」


 エメリナ先生の砂版に問1~10の回答をスラスラと書いていく。


「正解です。凄いわね…………それじゃあ、剥き終わるまで待っててね。それから好きなのを選んで良いから」


 先生は椅子に座って果物を剥いていく。


「手伝う」


「それじゃあ、お皿に分けてくれるかしら?」


「うん」


 木のお皿を並べて、順番に置いていく。そして、先生が一口サイズに切った物を並べて行く。だいたい、2~3個くらいになる。一番多いので10個だ。


「ありがとう。好きなのを選んでね」


 この数の差に他の子供達は俺を恨めしそうに見詰めて来る。俺は一番少ない2個を選んで口の中に放り込んでさっさと食べてこの場から離れて行く。この後は自由時間なので身体を鍛えるつもりだ。

 悩んでいる皆から離れて、裏手に有る大きな木が植えられている所に向かう。その木陰で柔軟体操をして、腕立て伏せなどをしていく。かといって、マッチョも嫌なので持久力と瞬発力に優れた桃色筋肉がいい。でも、どちらかというと速度が欲しいので適度にこなしつつ、走る事を重点に置く。孤児院の中を走るだけでも結構広くて重労働になる。

 疲れたら木陰で座って精神統一しながら魔力を放出する。その後、眠る。

 夕方に起きたら、晩御飯のお手伝いをする。そして、食事をして皆はお風呂に行く。俺は糞爺に襲撃されるのも嫌なので井戸から水を組んで頭から浴びて、吸水タオルで拭き取る。それだけでかなり綺麗になる。

 そして、大部屋の隅っこで毛布にくるまって就寝。


 朝早くに起きたら抜け出して顔を洗ったら、ジョギングとダンス○ンスレボリューションみたいな感じでステップを踏んでいく。ただ単に反復横とびしても面白く無いしね。

 そして、朝食前に井戸から汲んだ水を水瓶に入れて調理場に運んで行く。その後、朝食を食べて皆でお昼ご飯まで孤児院の畑のお世話をする。

 お昼ご飯を食べた後、エメリナ先生の授業を受ける。その後は繰り返しだ。

 同じ孤児院出身の子達は基本的に無視だ。喧嘩売ってくる奴は叩き潰す。俺の容姿のせいか、マセタ餓鬼共がちょっかいをかけて来るからな。好きな子程虐めたいという奴だろう。こっちは自分の事で精一杯。貴族の玩具になるのも、奴隷になるのもごめんだからな。実際、この孤児院の中に入った子にスラム街の出身者が居て、聞いてみると強姦や強盗なんか当たり前らしい。今は大丈夫だけど、成長するとやばいかも知れない。少なくとも戦える力は欲しいので、修行を頑張る。




 基礎修行を始めて3年。8歳になって身長が117cmまで伸びて来た。だんだんと糞爺の目が怪しくなって来たので、本格的な蹴りや殴りを覚え出す。正拳突きや蹴りなどだが、蹴りを重点的に鍛えて行く。それでも、やはり独学に限界が有る。


「さて、どうするか…………といっても、あそこしか無いよな」


 俺は10歳の子供達が通っている門をみる。そして、その日一日見続けて出入りを学ぶ。そして情報収集がてらに門の見張りの人の会話を盗み聞きした。


「明日、新しい子が入るみたいだ」


「数は?」


「知らねえ。ぶっちゃけ、契約を結んでるから数はこっちでは関係無いしな。教官の方で孤児組は調べるだろう」


「そうか。なら、明日は明日で五月蝿そうだな」


「まあ、何時もの事だ」


 良い事を聞いた。つまり、明日に潜り込めば良いんだ。エメリナ先生から習う事ももう無い。字も覚えたし、地理も有る程度は問題無い。本格的な戦闘訓練を積ませて貰おう。



 次の日、朝ご飯をさっさと食べたら例の門の所に行く。すると何人かが先生に連れられて集まって移動している。俺はこっそりその最後列に何くわぬ顔で並ぶ。


「今回はこの子達です」


「分かりました。それではこちらで引き継ぎします」


「お願いします」


 知らない先生と兵士の受け渡しが終わり、先生は去っていった。


「それじゃあ、中に入れ」


 俺は言われた通りに中に入る。そして、大きな建物へと案内される。他の子供は怖がっているが、俺は楽しみだ。


 そして、連れられて来た建物の前にある広場で並ばされた。その前に騎士と魔術師がいる。


「お前達は我がグレスベルグ帝国アテリス戦闘訓練所に入る事になった。ここはギルドと国の共同で運営されているので、安心して学ぶといい」


 今、俺が居る場所がグレスベルグ帝国にあるアテリスという都市だ。


「お前達には選択肢が無い。教官の命令通りに従え。優秀な者には有る程度の自由が与えられるが、屑共には隷属の首輪をさせて強制的に習わせる。覚悟しろ」


 その言葉で、皆は恐怖に震え、青ざめて行く。


「この措置は特例で許されているわ。だから、犯罪にはならないからね。それと、男女でちゃんと別れて訓練するからね。男性は男の教官がつくし、女性は女の教官がつくから其の辺は安心していいわよ」


 魔術師の女性の言葉にほっとする。犯される心配はなさそうだ。別の意味で大変だけど。


「では、男は俺の方へ来い。今から身分証を作る」


「女性はこっちよ」


 俺は魔術師の方へ行く。他にも何人かの女の子が居る。俺含めて4人だ。


「4人ね。このメンバーでチームを組んで行動して貰うわ。基本的に連帯責任だから、頑張ってね」


「「「「はい」」」」


 一部に不安そうに俺を見てくる子もいるが、気にしない。素知らぬ顔で参加する。


「それじゃあ、場所を移しましょう。こっちよ」


 建物の中に入って、2階に上がる。そして、一つの部屋に入る。そこには魔導機械が置かれていた。


「それじゃあ、一人ずつ、この水晶に手を置いて、名前を言ってくれるかしら? 貴女からね」


 くすんだ金髪の女の子が指名された。


「はい。イライダです」


「次」


「ルーラです」


 緑の髪の毛の女の子。大人しそうだ。


「次」


「ナタリーです」


 こちらも緑の髪の毛だ。そっくりなので双子かな?


「最後」


「クレハです」


「はい。登録完了。これが身分証になるからなくさないように」


 そして、一人ずつカードを貰う。そのカードには簡単な個人情報が乗っている。名前と年齢、性別だ。


「じゃあ、次に行きます」


 魔術師の人に案内されたのはグラウンドだった。


「基礎能力を測るわ。先ずは走って貰います。荷物を持って」


 そして、荷物持たされて5キロくらい走らされる。俺は今までの訓練で持久力は付いていたので、比較的簡単に走破出来た。


「始めてで完走するなんて凄いわね」


 他の子達はリタイアだ。そんなこんなで基礎訓練を受けていく。そして、ボロボロになったぐらいで椅子のある部屋に連れて行かれた。


「さて、私は得意としているのは見ての通り魔術なのだけれど、貴女達に選択肢は沢山有ります。基礎訓練が終了したら、好きな武器を選んで貰います。その後はそれの訓練ね。先ずは体力を付ける事。クレハは大丈夫みたいだから、貴女は武器を選びなさい。希望の物は有るかしら?」


「剣と魔導銃、魔法ですね」


 これが基礎戦術になりそうだしね。


「剣と魔導銃はどうにかなりそうだけど、魔法は無理ね」


「え?」


「魔法は魔術の上なのよ。召喚器と呼ばれる特殊魔導器や道具と契約して始めて使えるわ。私達は基本的に魔法より弱い魔術を使用しています。契約出来る魔導器も出回ってるのが有るには有るけど高価な品よ。だから、魔法使いは貴重なの。まあ、長い事愛用していた装備が召喚器になる事も有るから、小さい内から身につけて魔術を使っていると良いかも」


「何年ぐらいですか?」


 興味を持ったルーラが質問しだした。


「10以上だから、100年ってのもあるわね。魔力の量に比例するから、詳しい事はわかっていないわ。でも、希望は持てるわよ。比較的魔導師のクラスに着いた人が多いかな」


「そうですか…………」


「じゃあ、魔術を教えてください」


「ええ」


 その日は孤児院に帰って眠った。他の子達は疲れていたが。次の日は身分証を見せたら門を通してくれたので、そのまま訓練を受けて行った。





 それから数年。途中でエメリナ先生にバレたが問題無く過ごし、14歳になって身長も148cmくらいになった。この頃は糞爺が何度も襲おうとして来る。そして、アテリスから離れた場所で行われる魔物を討伐する野外訓練が終わると卒業証書が貰えるので、終了と同時に脱走するつもりだ。


「それでは最終試験を開始する。魔物を狩ってこい」


「良い、これは訓練じゃなく実戦だからね。気を付けてよ。ここに逃げ込めれば助かるから」


「「「「「はい!」」」」」


 挨拶が終わり、各人がパーティー毎に分かれていく。


「クレハ、貴女なら大丈夫だと思うけど、油断しちゃ駄目よ。貴女は1人なんだから」


 他の3人はもう卒業している。この試験を受けられるのが14歳以上なのだ。他の3人は既に16歳。今さら他の連中と一緒に行くのも嫌なので1人で受けると言ったのだ。幸い、俺は問題無い。


「アタシは大丈夫です。それじゃ行ってきま~す」


 心配する先生を置いて、野営地から抜け出して深い森の中へと入って行く。




 木々に覆われた深い森の中で装備を確認する。装備はレンタルされているショートソードと魔導銃。共に腰に下げている。服装は相変わらず麻の服で、ブレストアーマーをつけているぐらいだ。


「さてさて、どうなるかな~?」


 魔力操作の容量で、自身から魔力を円状に広げて行く。俺は修行に漫画に有った念の修行を応用した。この魔法はマジックソナーとでも名付けようか。敵の発見には便利だ。

 発動すると、先行しているパーティーも確認出来る。メニューのMAP機能とリンクさせて敵を赤、中立を黄色、味方を青として表示させる。


「って、クエストが出てるじゃん」


【チュートリアルクエスト:卒業試験】

 ・戦闘の基礎を全て習い終わった貴女の力を見せましょう。

 ・目標:リスガの森に生息する魔物を討伐

 ・達成報酬:魔法属性習得orスキル強化カード

 ・プレゼントアイテム:お好みの服装


 魔法が手に入る。ぶっちゃけ、魔術は火と水しか習っていない。それも初期魔術だけだ。先生に聞くと、禁止されていて教えられないらしい。魔術は基本的に貴族などの特権階級のみ使用出来る事になっているそうだ。ギルドは特例で許可されている。貴族共の言い訳としては、過去に貴族の血が入っているから、使えるというらしい。くだらない事だと先生と2人で話していた。まあ、それでも火と水の簡単な魔術を教えて貰った。盗まれるのは構わないらしいのだ。お好みの服装はアレだろうな。


「というか、魔法適性をとっていないから宝の持ち腐れだよな…………」


 魔法が使えない現状で砲台を作っても無駄なのだ。仕方無いので、しばらくは魔法適性を得る事と、男に戻る為に性転換薬を探す事だ。

 とは言っても、現在は卒業試験。魔物を求めて奥へと進む。



 しばらく経つと、1体だけの敵が見つかった。そいつは狼だった。魔物で間違い無いので、狩る。先ずは木の上に登って魔導銃で狙撃する。だが、弾丸は支給品なのでたいした威力は出ない。でも、魔力を大量に込めたファイヤーアローも放てば良い。

 先ずは狼に向かって銃弾を放ち、そして魔術も放つ。狼は素早い動きでジャンプして、弾丸を避けた。だが、空中にいるのだから、遠隔操作出来るファイヤーアローからは逃れられない。


「キャインっ!!」


 燃えている狼に上から飛び降りつつ体重をかけたショートソードを突き刺すと、狼は動かなくなった。


「さて、剥ぎ取りか」


 魔術の炎は軽く手を振るって、魔力供給を止めると消滅した。残されたのは死体のみだ。その死体に剣を突き刺して、解体していく。

 解体が終わったらもう一度ソナーを使う。すると、地面の下に何か有る。


「掘ってみるか」


 適当に掘っていくと、小さな箱が出て来た。それには、金貨と家紋が入った宝石の指輪があった。危険な気もするが、貰っておく。



 野営地に戻って、先生に渡してみると、無茶苦茶驚かれた。直ぐに他の人達もやって来た。


「おい、これって3年前に貴族の館に押し入った連中が盗んでいった奴だぞ。確か、行方不明になってるらしく、懸賞金がかかってたな。盗賊にも宝にも」


「いくらくらいでしょ?」


「150万だったな」


「先生、金貨は貰ってもいいの?」


「ええ、構わないわ。この指輪だけは返してあげないといけないけどね」


「じゃあ、お願い。それで得たお金を孤児院のエメリナ先生に渡しておいて。アタシはこのままバックレルから」


「それは…………大丈夫?」


「大丈夫だろう。こっちの契約はここまでだ。その後は基本的に本人の自由だ。孤児院出身とはいえ、奴隷でも何でも無い訳だし、この金額だと彼女が使った分は問題無く相殺されるはずだしな」


 騎士の教官が大丈夫だと言ってくれた。


「なら、よろしくお願い。卒業証書を頂戴」


「ああ。グレルの討伐が出来たなら大丈夫だ。ほら、これが証書だ。武器の返却を頼む。悪いが魔導銃は貸し出しだからな。ショートソードは記念品として贈呈してやる。売るなり使うなり好きにするといい」


「了解」


「クレハ、気を付けてね。まだまだ弱いんだから、一歩一歩確実に進んで行くのよ?」


「うん。お世話になりました」


 挨拶した後、さっさと山を降りて行く。



 そして、誰にも見られなくなった場所で装備を変更する。先ずは先程貰った報酬の服だ。これは紅葉と同じ物にする。やっぱりそれがいい。しかも、この服は魔導服で、丈夫、汚れ自動除去、自動修復とかなり素晴らしい。スカートなのでスースーするが、我慢だ。慣れれば良い。後はステンノだけを召喚して、腰のベルトにホルスターを付けて置く。本体は片手でもって置く。エウリュアレまで召喚出来ない。できたとしても使えない。現状の筋力だと両手撃ちでどうにかなのだから。


「んじゃ、冒険を始めようか!」


 ステータスが下がっているステンノを片手に山を下っていく。



【ステータス】

 Name:クレハ

 Class1:魔導技師Lv.1

 Class2:戦術家Lv.3

 Class3:魔導師Lv.1

 HP:200/200

 MP:400/400

 Str:20

 Agi:20

 Vit:20

 Int:10+40

 Dex:30+40

 Luk:20

【パッシブスキル】

 《魔導知識Lv.1》《戦術眼Lv.2》《部隊運用Lv.1》《魔力回復(小)Lv.1》《魔力操作Lv.2》《分割思考Lv.2》《戦闘の才能Lv.MAX》《天賦の才Lv.MAX》《獲得経験値上昇Lv.MAX》《老化遅延Lv.MAX》《寿命増加Lv.1》《第六感Lv.2》《体力回復(中)Lv.1》《魔力回復(中)Lv.2》《体術Lv.2》《剣術Lv.1》《魔術Lv.1》《射撃Lv.1》

【アクティブスキル】

 《魔導器召喚Lv.MAX》《魔導器生産Lv.1》

【装備】

 ティルヴィング(剣、封印)

 ステンノ(銃、封印)

 エウリュアレ(銃、封印)

 七色の断罪者セット



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