43話
フリオ
俺達が周辺の巡回を行って居た時に聞いたのはコールドウルフの遠吠えだった。
コールドウルフの遠吠えは仲間を呼び寄せ、大量の配下を呼びつける。前に聞いた事が有ったからこそ、俺はいち早くギルドに戻り、緊急会議を行っている。会議の参加者は3人だ。
「おい、それじゃあ100体以上で襲いかかって来るのか!」
「そうだ。前回に遭遇した時は秋で100体だった。冬を超えたとはいえ、まだ奴の活性化する時期だ。最高の500体とはいかないだろうが、300は見ていた方が良い」
「どうするのじゃ、この村にはそんな数と戦える戦力も防衛施設も無いんじゃぞ!!」
俺の報告を聞いて、アデール村冒険者ギルドの管理者である爺さんは大慌てだ。確かにこのアデール村に居る冒険者は17人だ。
「どうにかするしかありません」
「シェアー、この村に滞在する冒険者のレベルはどうなっている?」
「レベル1から20までが10人、レベル21から40までが7人です」
明らかに戦力が足りない。ウルフ系は集団統率を持っているし、野犬程度でも、群れとなればとんでもない脅威だ。
「前回の討伐時は何人だったのですか?」
「20が12人、40が32人だ」
「絶望的ではないか!!」
「あの時は森での遭遇戦だったが、今度のはまだマシと言える。まともな防衛施設が有ればだが…………」
「そんな物有る訳なかろうが! ここは漁村じゃぞっ! そんな本格的な襲撃を行われても耐えれる場所など村の財力的に作れんわっ!!」
確かにそんな物を作れるなら、もっと港を整備しているよな。滅多な事じゃ集団で襲いかかって来ないんだから。
「あの…………大変言いにくいんですが、この村に馬鹿みたいに不釣り合いな防衛施設は有りますよ?」
「「なんじゃと(なんだと)っ!!」」
「個人所有で有りますが…………」
シェアーが言うには村人が充分に入れるスペースも有り、防壁もしっかりとしているようだ。そこは趣味で危険かもしれない物を栽培しているので、防衛施設をしっかりとしているそうだ。
「接収じゃっ!! 接収してそこを拠点にするのじゃっ!!」
「いや、それは流石に無理だろ。本人の許可がいるぞ」
「緊急時じゃ!」
「完全に買ってもらってますし、接収は不可能ですね。ただ、緊急依頼として出す事は可能です」
「それじゃあ、村人に食料を集めさせるのじゃ。冒険者達を至急呼び戻し、緊急依頼を発令する」
「はい」
「わかった」
会議がまとまり、急いで扉の外に待っていた係員に連絡をするシェアー。
「シェアーさん、シェアーさん、大変やっ!!」
「野犬とかいっぱい来るぞ!」
「レティシアちゃんにクレハちゃん…………丁度良かった。ちょっと話しが有るからこっちに来なさい」
「「はい」」
外でシェアーと知り合いの声が聞こえ、直ぐにこの部屋に入って来た。入って来たのはクレハともう1人の少女。クレハはしんどいらしく、少女に抱きかかえられているが、大丈夫か?
「その情報も知っていますので、ギルドは緊急依頼を発令します。それと、お二人に…………正確にはクレハちゃんには別の緊急依頼を発令させて頂きます」
「何? 嫌な感じしかしないんだけど…………」
「せやな…………」
「防衛施設の有る、クレハちゃんの家を申し訳ないんだけど、避難所として使わせてくれないかな?」
「今の戦力ではどこかに立て籠って対応するしか手が残されていない。シェアーの判断だと、お前の所が村の中で一番対応できるそうだ」
シェアーから聞いた話しでは、防衛施設は鉄製で出来ており、野犬程度は問題無いらしいしな。
「悪いが、アデール村の存亡の危機じゃ。最悪、儂は村長件ギルドの管理者として主らの権利を剥奪…………いや、身柄を捕らえてでも制圧させて貰うぞ。儂にはこの村の住民を守る責任が有るからの」
「ちぇ。まあ、良いけどさ…………色々と条件は付けるよ」
「なんじゃ? 金はあんまり出せんし、条件しだいじゃ」
「先ず無料で貸し出すのは嫌だ。工房と離れに有る倉庫には絶対に近づかない事を徹底させて。危険な物が色々と置いてあるから」
「危険な物だと?」
「魔導器の失敗作とか爆発する装置とかだね。そんなのを保管する為に離れが有るんだから」
「わかったわい。それは徹底させるとするかの。して、報酬じゃが…………」
「お金や資材なんて出せないだろうし、ギルドのランクアップで良いよ」
「ランクアップか…………シェアーよ、可能かの?」
「可能です」
「Aランクになりたいなーー」
「無理だろ。FからいきなりAって」
絶対に無理な事を言ってやがるな。
「FならDでどうじゃ?」
「Cで」
「パーティー全員をD」
「パーティー全員をC」
睨み合うクレハと爺さん。シェアーは無駄な時間を避ける為にさっさと部屋を出て準備している。レティシアも部屋から出て行った。
「こっちは無報酬だぞ、Cまで上げてよ、お爺ちゃん」
「しかし、実力が無い者をCランクにするのは危険じゃしな…………」
「なら、殿も努めるからそれで実力を証明すれば良いだろ?」
「フリオ、此奴の紹介はお主だったな?」
「いや、俺が連れて来たが紹介は訓練所のだぞ」
「ふむ…………実力は有るのか?」
「魔導銃の扱いはかなりなものだ」
空を飛んでるブリスを的確に撃ち落とすか、一般の冒険者連中より腕は数段立つ。
「良かろう。その条件を飲もう。だが、くれぐれも無茶をするんじゃないぞ。老い先短い老人は構わんのじゃが、若い者が亡くなるのは村の為にならんしの」
「問題ないぜ。アタシはこんな所で死ぬ気無いし、死ぬのは寿命って決めてるんだ。それと、お爺ちゃん。ニウスの所からマジックポーションをいっぱい貰って来ても良いかな?」
「構わんぞ。ほれ、これが有れば渡して貰えるはずじゃが…………フリオ、お主はニウスの小僧から消耗品の在庫をありったけ奪ってこい。代金は使った分、ギルドから支払うといっての」
「了解だ」
この爺さん、相変わらず勝てる見込みが出るとかなり優秀になるな。
「んじゃ、アタシは遅延戦闘を仕掛けて来る」
「おう」
「よろしくの」
俺達の戦いはこれからだ。敵の数は多いが、何とかしなければならない。愛するライサと子供の為にも。




