28話
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今回、人を殺しますのでお気を付けください。
アイスグリズリーを屠った後、しばらくレティシアの案内で進むと敵の洞窟が見えてきた。その洞窟の前に木の板が斜めに掛けられていて、雪を落とす仕組みになっている。その前の地面も斜面になっているので、雪はどんどん落ちているようだ。
「マジックソーナ、サーモグラフィに外部反応無し。内部には結構いるね」
「当たりやね。それで、作戦は?」
「閉鎖空間を利用した暗殺かな。という訳で、これを4方に設置してこよう」
俺はレティシアに簡易結界を展開する魔導機械を3つ渡す。これは四角い箱に緑色の魔石が嵌った奴だ。4個有り、それぞれがコードで繋がっている。その一箇所のコードを外して3つ渡したのだ。
「取りあえず、この洞窟の大きさがこんな感じだから…………」
俺は羊皮紙に洞窟内部とこの辺りの地図を書いて、設置場所を記す。
「ここに設置して来て。置くだけでいいから。ただし、コードだけは持ってきてね」
「了解や」
レティシアがフロートボードに乗って、所定の位置へと向かって行く。こっちも気を付けながら斜面を上がって、洞窟に近づく。洞窟の入口に着いたら、香炉を洞窟に少し入った所にある隠しやすい場所に設置する。香炉の中にスプリ草を全部入れて、香炉に魔力を込めて行く。魔力は120だ。
そして、入口の木の板の下に扇風機モドキを内側に向けてセットする。その扇風機モドキからコードを引いて、離れて行く。
少し離れた所で結界装置を配置。
後はレティシアが戻って来るのを待つだけだ。
少しすると、フロートボード特有の機械音と滑るような音が聞こえて来る。
「ただいまや。言われた通りに配置してきたで。でも、誤差は有ると思うけど、大丈夫やんな?」
「平気だよ」
受け取ったコードをこちらの機械に繋ぎ直す。この魔導機械で一番苦労したのはこのコードの長さだったりする。1キロメートルも有るコードを4本だ。畑で使ったので予備部品としてかなり作っていなかったらこの作戦の成功率はかなり低かった。
「んじゃ、時間的にもいい感じだし、やりますか…………スイッチオン」
扇風機モドキのスイッチを入れて、起動させる。起動した扇風機モドキは洞窟の内部へと風を送っていく。そして、俺は魔導機械のスイッチも入れて風の結界を発動させる。それと同時にせっかく回復した500もの魔力が魔導機械に吸われていった。
「さて、結界から出るよ。巻き込まれるから」
「了解や」
俺とレティシアは結界の外に出て、マジックソーナとサーモグラフィで監視しながら、待つ。
「どれくらい時間かかるん?」
「2時間は入れないし、安全を取って2時間30分後かな~」
「それまでこの寒い中で暇なんか…………」
「かまくらでも作る~?」
「そうやね。作ろっか。暇やし」
「よ~し、作るじぇ~~」
「お~~~」
2人でスコップを取り出して、俺がファイヤーボールを雪の塊の中に叩き込む。雪は瞬時に溶けて、半径1メートルちょっとの穴が出来た。水は完全に解け、周りの雪についた水滴は一瞬で氷った。俺とレティシアはその中に降りて掘っていく。
結局、押し固めたりして完成したのは52分後だった。
中に入った俺達は椅子をアイテムストレージから取り出して座り、テーブルを設置。加熱板も置いてお茶を入れる。
「さて、暇になってもうたんやけど…………」
「暇つぶしか…………チェスでもする~?」
「嫌、勝たれへんから嫌やよ」
「じゃあ、近くに川があるから釣り?」
「そっちの方がまだええかな…………って、かまくら無駄やん」
「駄目か…………ああ、ならご飯をつく…………やめた方がいいか」
吐いちゃうかも知れないし、胃に入れたくない。
「トレカでも作るべきやな」
「どれだけお金がかかるやら…………」
「いっそ、モンスターハンティングとかせえへん?」
「それもそうだね~あの封術結界は音も内部に通さないし、問題無いか」
「良し、狩りや狩り」
「それじゃあ、行ってみるか~」
それから、マジックソーナとサーモグラフィで獲物を探して狩りをして行った。
1時間と少し経つ頃にはかなりの量が集まった。やはり、冬眠中に襲った事で楽に狩れたのが大きい。
そして、結界を解除して魔導機械を回収後、改めてマスクをしてから洞窟の内部へと侵入した。
ランタンを灯しながら洞窟の中を歩く。洞窟の内部は至って普通。ただ、入口から少し奥に行くと人工物で有る木の扉が有った。といっても、しっかりとした奴では無く、手作り感満載で、隙間が空いている場所が有る。扉には鍵や罠などは無いし、油断しているみたいだ。ここに来るまでに微かに有った罠も単純で、授業で習ったやつだったので簡単に無力化出来た。
そして、扉を開けて中に入る。すると目に入ったのは鳴子の罠だ。取りあえず、それを解除しておく。その後、少し進むとまた扉が有った。ただ、こちらは罠が無かったが、扉の近くに人の反応を確認したので、扉に耳を当てて聞き耳をする。そして、問題が無いので入る。
入った瞬間、飛び込んできたのは見張りだろう男2人が椅子に座りながらいびきをかいて寝ている姿だった。
「どうや?」
「予定通り順調だよ」
「じゃあ、ちゃっちゃと処理しちゃおっか」
「うん…………」
「がんばや。何、うちが付いとるし大丈夫や。それにこいつ等は他人に迷惑をかける生きてる価値も無い連中や。気にせんでええで。ただ、人殺しに慣れる事だけは注意しいや」
「わかった…………」
俺はアイテムストレージから銅と亜鉛との合金である真鍮から作り出した歪曲するブレード状の刃が4本。2本ずつセットになって微かな間で取り付けられた物を取り出す。それをステンノ&エウリュアレのグリップ部分を外して代わりに取り付ける。もちろん、握り部分はグリップになるようにしてある。これで、ステンノ&エウリュアレのマガジン投入口を塞がないように設置された刃が下へと向かっている。そう、ちゃんとマガジンの挿入口も2本セットと2本セットの間にスペースが有って、そこからちゃんと入れられる。
「…………ふぅ…………すぅ…………っ!!」
眠っている男の胸元に肋骨を避けるようにして、もう片方を首にセットする。そして、一気に胸を突き刺して、心臓に刃を入れる。それと同時に首も斬り裂く。そして、首から吹き出る血は真正面に有った俺の顔へとかかる。
「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
「おっと」
叫びそうになるけど、レティシアが俺の口を塞いでくれた御蔭で悲鳴はあげなかった。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ」
「大丈夫なん?」
しばらく呼吸を繰り返して、むせ返るような血の臭いに慣れていく。次第に心も落ち着いてきた。そして、余裕が生まれてくるとステンノ&エウリュアレが血を受けて、真鍮の爪もろとも怪しく光っている。若干、俺自身の身体も光っている。わざわざ血を浴びただけは有る。
「大丈夫だよ」
「そっか。それより…………凄いんやな」
「何が…………うわぁ~~~」
俺が殺した男はさっきまで生きて寝ていたというのに、ミイラとなってから砂になった。残ったのは男が身につけていた所持品だけだった。
「これが生贄って事なんかな?」
「さぁ~~でも、やるしかない。良しっ!」
気合を入れ直して、隣の男も殺す。すると、今度も同じようになった。取りあえず、クエストを確認してみる。
『クエスト:初めての盗賊退治の完了を確認しました。報酬の武器強化カードはアイテム欄に保存されています』
クエストを確認する為にクエスト欄を開いたら、最初に完了メッセージが流れて来た。そして、次のページを開くと残りのクエストが表示される。
【クエスト:初めての盗賊退治】
・ギグル山に潜む盗賊を10人以上殺しましょう。
・殺した人数2/10
・達成報酬:魔法適性カード(10人毎に報酬追加)
【クエスト:特別クエスト】
・召喚器ステンノ&エウリュアレの第1封印を解く為に同族の生贄を捧げよう。
・生贄を捧げた人数2/100
・出現条件:STR100以上、DEX100以上、INT100以上、ステンノ&エウリュアレ使用回数10000回以上、ステンノ&エウリュアレで撃破回数100回以上、射撃レベル3以上。
・達成報酬:第1封印解除による限定的な特殊能力が使用可能
・特別報酬:不明
しっかりと2人分、追加されていた。
「大丈夫ならじゃんじゃん殺してこうか。この初めての盗賊退治クエストは殺せば殺すだけ美味しいねん。これ以降のクエストは報酬こんな良くないし、ぶっちゃけ、ボーナスクエストやから」
「そっかー良し、頑張ってみる」
次第に冷静さを取り戻してきた。いや、2人目を殺した時点でかなり冷静になった。だから、奥へと進んで、部屋を見つけたら聞き耳をして寝ているのを確認したら殺して行く。レティシアは殺した奴らや部屋から装備やアイテムを回収してくれている。なので、こちらは殺して行く。
何個もの部屋で寝ている人間を殺し続けていると、だんだんと冷静に効率良く殺して生贄に捧げるようになってくる。
全ては順調だ。これも事前準備をしっかりとした御蔭だ。俺が用意したのは畑でも使った風術結界を改造した物。これは臭いや煙などを外に出さないのは前と同じだが、こちらは音も伝わらないようにした。そして、香炉は眠り薬として使われているスプリ草を内部で溶かして効力を上げつつ、お香として周りに充満させる効果が有る。これを扇風機モドキによって、洞窟内部へと送り込んだ。香炉は発動時間と効力が入れた魔力に比例するので120も投入してやった。その価値は有ったようで、今の所は全員が眠っている。そう、深い眠りに入ったまま死んで行く。これが今回の作戦だ。準備コストと時間はかかるが、安心確実に盗賊を殲滅し、被害を出さない手段だ。
そして、残りは遂に洞窟の最奥にある部屋だけとなった。




