23話
朝、暖かい感触に包まれつつ、苦しさも味わって目が覚めた。ベットから起き上がろうとすると、隣で寝ているレティシアが邪魔をする。そう、冬が本格的に来てしまい、寒くて2人で寝る事が多くなった。正確にはレティシアがベットに潜り込んで来る事がだが。
「ほらレティ、起きろっ!!」
「ん~~~あと、20分~~~」
「そう言って起きた試しが無いだろうが…………」
ここで殴ったりビンタしたりして起こす手段も有るが、レティシアにそれをすると逆に俺の方がダメージを喰らう。なのでやる事は一つだ。
「エウリュアレ」
魔導銃であるエウリュアレを呼び出して、銃弾を抜いてから耳元でトリガーを引く。すると当然の如く空砲が朝の静寂な時間を破壊する。
「うひゃぁっ!?」
「おはよう」
「おっ、おはようや…………いくらなんでもそれは非道いと思うねん」
「知らん。起きないのが悪い。少なくともアタシを外しておけ」
「いや、クレハは暖かいやんか…………」
「なら諦めろ」
俺はそう言って、自身の体温を魔法で温めてベットから出て着替え始める。寝間着の大きいTシャツを脱ぎ、何時もの服装になる。基本的に寝間着はTシャツと下着だけだ。そっちの方が楽に過ごせるからな。
「ちょっ、待ってえなっ!!」
レティシアも急いで着替える。こっちはジャージだった。レティシアとしたら寒いから俺がいる間にさっさと着替えてしまいたいのだろう。ちなみにお互いに装備画面からさっさと着替えてしまう為にチラ見とか有り得ない。
「クレハ、今日の予定は?」
「ん~」
窓から外を見ると、雪が降り積もっていて銀世界が広がっている。外に出るのは大変な目に合いそうだ。フロートボードが有ればどうという事はなさそうだが。
「出かける事は出来ないな。50cmくらい積もってやがる」
「おおっ、凄いなっ! 雪合戦でもする?」
「誰がレティとなんかするか」
「ええ~~~」
レティシアの馬鹿力で投げられた雪玉なんて単なる凶器だ。それを防ぐ手段を使うと周りの雪が溶けて攻撃手段が無くなる。つまり、雪合戦になんてならないのだ。
「それより朝飯だ。どうせなら弁当を用意してダンジョンに行こうじゃないか」
「それもそうやね」
2人で朝御飯とお弁当を作って、干し肉などの非常食も四次元ポーチに仕舞って置く。
そして、朝食後にストレッチをしてから長い渡り廊下を渡って行く。
倉庫に付くと鉄の箱が置いてある。その蓋をスライドさせて中に入り、四つん這いで進んで行くと崖の中に出来たトンネルへと到達する。ここからは広いので立ち上がれる。もちろん、ランタンを持ってだ。
「しかし、良く出来たな~~」
「レティは人間重機だしな」
「非道い…………」
入口をしっかりと閉めてカモフラージュをしてから歩いて行く。ランタンが道を照らしてくれるので助かる。
「うちが前衛でええんやな?」
「うん。アタシは後衛で援護射撃かな。玉が勿体無いと判断したらティルヴィングで叩き斬るけど」
「大丈夫なん? 3回までしか使えへんのやろ?」
「鞘から抜いたらアウトってだけだから、鞘のままぶん殴る。それにこの剣の鞘って斬れるんだよ」
ティルヴィングの鞘は普通の鞘では無く、封印と言った方が有っている。イメージとしてはセイバーが持っていた風の結界か忘れたけど、透明にする奴と同じかな。ただ、こっちは封印なんで色が変わってるくらいで良く斬れる剣という以外は普通だ。そして、もちろん普通の鞘も有る。訂正。今は魔剣として霊体を斬れる程度の普通の剣だ。いや、普通ではないな。
「まあ、ええけどね。うちは前衛しかできへんし、後衛にいてくれる方が助かるわ」
「わかってる。前衛と後衛の方がバランス良いしね。それに黒猫みたいに銃で近接戦闘が出来ないなんて誰が決めたって事も言えるし」
「何練習しとんねん…………まあ、ええけど」
防壁を潜って前方へと向かっていると、前方に鉄製の大きな扉が見えてきた。その扉の厳重な鍵を開けて中に入る。
「うわぁ、寒いな~~~」
右側の海の方から冷たい風が吹き抜けて来ていた。ここから見える海は荒れていて、雪が降っている。
「あそこ、塞がへん?」
「いや、いくらなんでも無理だから…………いや、出来る?」
水の魔術で海水をはじき出して、その間に防波堤を作る。後は上まで裂け目を完全に埋めてしまえば…………コストがかかりすぎるな。
「やっぱ無理」
「そっか。残念や」
改めてダンジョンの入口である扉。周りには遺跡のような物。その扉の後ろには壁が有るだけで何もない。どうやら、このダンジョンは自然発生した物ではなく、誰かが作為的に作った物のようだ。
「レティはリィウィザードって知ってる?」
「聞いた事はあるけど、詳しくは知らんで」
リィウィザードはかなり難しくて死ぬ人が多いって聞いた。
「ユグドラシルラピリンスは?」
「そっちは知ってるで。1から3くらいまでやったし」
ユグドラシルラピリンスは比較的に新しくてやった事はある。
「じゃあ、そんな感じで進もうか」
「そうやね。慎重に行こか」
「うん」
俺達はフロートボードを取り出して、慎重に門を潜る準備をした。
「あっ、どうせやったら鉄杭が直ってるか見てくるわ」
「いっ、行ってらっしゃい」
レティシアはわざと罠を発動させて落ちて行った。もちろん、空中でフロートボードに乗ったけど。
「お~~復活しとるな~~うまうまや」
それからしばらく、破砕音が響いた。そして、レティシアが戻って来た。
「ほな行こか」
「…………そうだね」
俺はこれを作った人を可哀想に思いながら、ステンノ&エウリュアレをホルスターにセットして、ステンノだけを引き抜いて片手を手首に添えて移動して行く。
「サーチ」
探査魔術を発動して早速、違和感を見つけた。そこから誰かに見られている感じがする。なので、そちらに銃を向けて発砲した。発射された銃弾は虚空で何かに命中した。そして、出て来たのは大きなカメラみたいな目玉をしたコウモリだった。
「監視者か…………これは侵入はバレていると思って行動するか」
「せやな。前と配置が変わっているかも知れへん」
「取りあえず、魔物はこっちで調べるから罠をよろしく」
「了解や」
こうして、俺とレティシアはダンジョンアタックを開始した。
「おい、また鉄杭を直さないといけないのか?」
「もう、放置で良いんじゃないですか?」
「そうだな…………」
「あっ、カメラアイが壊されましたね」
「格闘に銃かよ…………これは不味いかも知れねえな。チートクラスが2人と考えた方が良いな。ちょっと本気出すか。2人共かなりの美少女だし、たっぷり楽しませて貰おうか。コール・スケルトンウォーリア、コール・スケルトンアーチャー、コール・グール」
「さて、本当に楽しみです」




