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15話

今回はクレハちゃん、ちょっと黒いです

 








 稲を取ってから3日程ぐうたらに過ごしていい加減に動き出す。朝食を食べてから冒険者ギルドに報告をしに来たのだ。四次元ポーチ無いは時間が緩やかだし、この程度の時間は些事でしかないからだ。なので、ゆっくりと休息とクトゥグアの点検を行っていたのだ。

 ギルドに到着して中に入り、探すとシェアーさんが居たので、そちらに向かう。でも、そこには先約が居るみたいだ。


「せやから、もう少し色を付けてくれへんかな?」


「駄目です」


「せやったら、魔物の討伐依頼受けさしてえや! 宿屋の食料は十分に集まって、依頼完了したから住むところがあらへんねん。薬草採取だけじゃ、その日暮しが限界で冬越えできへんねん。だから、色付けてくれるか、せめて魔物の素材を買い取ってえや!」


 この黒髪関西弁っ子、魔物を倒せるんだ。


「だから、買い取りたいのは山々なんですが、規則で買い取れ無いんですって。だいたい、レティシアちゃんはまだ魔物が居る領域には立ち入り不可のはずですよ。だいたい、貴女の実力なら獣を軽く狩れるでしょ。野犬やラビットを探してくださいよ。結構な数がいるはずですよ」


「それが一日中探しても、1匹か2匹しかおらへんねんって!! まるで何かを恐れて逃げたみたいにっ!! ほんまにこのままやったらヤバイって…………」


「おかしいですね。ラビットや野犬が逃げるなんて、それこそ狼の群れや魔物のビックラビットや他の魔物がくるくらいですが…………」


 あれ?

 もしかして、俺のせいか?


「もしかして、誰かがいらんことでもしたんか?」


「そういえば、ビックラビットの目撃情報が前半部分で増えていますね…………」


 確定だ。逃げようか…………どうしよう。考えろ。どうする、俺!!


「あっ、クレハちゃん」


「ん? あっ、こないだの子やね」


「こんにちは。依頼の達成報告に来たよ」


 取りあえず、ポーカーフェイスで時間を稼ぐ。黒髪の子はどいてくれた。


「3日もかかってたようだけど、大丈夫だった?」


「大丈夫だったよ。はい、これ」


 エベル草とリベル草を渡す。


「確かに10束を3セット、受け取りました。クレハちゃん、ビックラビットをみな…………そういえば、クレハちゃんは魔導技師だったよね。それも結構強い魔導銃を持ってるってフリオとライサから聞いたけど…………」


「そうだよ。そして、犯人はアタシだ!!」


 堂々と宣言して四次元ポーチからビックラビットや野犬達の死体を取り出す。

 何故堂々と宣言したかというと、だって3日前。稲の場所を聞いた後直ぐにこの件が起きている事はシェアーさんなら既に理解しているだろう。そして、ビックラビットの目撃情報から俺が行った場所が怪しいと判断するはずだ。依頼を放棄してしらばっくれるのも良いかも知れないが、稲を引っこ抜いたらまたこんな事になるなら注意しておいた方が良いだろう。それに、冒険者としては悪い事はしていないし、素直に言った方が好感が得られるはずだ。こっちの黒髪ちゃんには餌があるし、強いなら味方に引き込んだ方が良いだろう。


「ほほう、ちょっと詳しくお話を聞かせてな?」


「そっ、そうね」


 シェアーさんが混乱気味に女の子の提案に乗ってくる。


「了解。えっとね、ビックラビットが前半部に来た理由だけど、それはこれが理由なのよ」


「そっ、それは稲やん!」


 俺が四次元ポーチから稲を取り出すと、女の子が凄い反応をした。こやつ、米だと知っておるな。俺と同じ転生者か。その証拠に涎を垂らして俺の手にある稲を見ている。その瞳はぐるぐるして獣のようだ。


「あぁ~~お米~~白米~~」


 右にやれば右にフラフラ、左にやれば左にフラフラと彷徨っている。ちょっと可愛い。


「えっと、その子は置いておいて、それがなんなの?」


「これを取った時に甘い匂いがしたんだよ。どうやらそれに釣られてビックラビットの群れがやって来たんだ。アタシはそれに気づいて全力で逃走した。群れの半分はその場に残って、これを食べてたみたいだけど、残りはアタシを追っ手来た。だから、銃で反撃しつつ逃げてたんだけど、このままじゃ逃げれそうになかったから、罠に嵌めてやったんだ」


「そっ、それで…………?」


「途中で血の匂いに釣られて狼が指揮する野犬が乱入して来たんで、これ幸いと狼をぶち殺して混乱させて乱戦に持ち込んだのよ。後は安全な所から美味しく撃ち殺しただけだよ」


 簡単な作業だった。上手い事間引いて、戦力が拮抗するようにしたからな。


「成程…………つまり、ビックラビットが匂いに誘われて前半部分に乗り込んで来た事で、ラビットや野犬達が逃げていったと…………クレハちゃん、危ない事しないでよね」


「ごめんなさい」


「つまり、うちはアンタのせいで凍死するかもしれへんのやな…………」


「そうね、獲物そのものが戻って来るまでは結構時間がかかるのよね。この時期だともう帰って来ても冬を越えた後ね」


「そんな~~~」


 崩れ落ちる女の子。計画通りにかなり落ち込んでいる。俺はそんな女の子の近くでしゃがんで肩に優しく手を置いてこっちに向かせる。


「アンタさえよければアタシの家に来る? ビックラビットの肉とかも有るから食費は気にしなくて良いよ。他に人もいないし、女の子1人で住んでると色々と大変だから、家事を手伝ってくれればそれでいいし」


「せやけど、それは…………」


 悩んでいる。でも、逃がさない。こないだの戦いで理解した。稲を育てるには護衛がいると!!

 そう、この子は単身で魔物を狩る事が出来るくらい強いのだから、護衛としては持って来いだ。女同士だから襲われる心配も無いし、逆に襲われても強いのだから協力して撃退出来るだろう。


「大丈夫。迷惑じゃないわ。それに不可抗力とはいえ、迷惑をかけたみたいだし、このまま凍死される方が目覚め悪いしね」


 印象操作。


「うっ…………」


「どうしても気になるなら色々と手伝ってくれれば言いから」


 思考誘導。


「けれど…………」


「このままじゃ凍死しちゃうけど、良いの? アタシの所にこれば暖かい広い家に美味しい御飯まであるわよ。それとも死にたいの?」


 脅迫的誘導。


「シェアーさん、タチアナさんの所意外にこの村に女の子が安心して泊まれて、安くて冬越え出来る場所なんて無いですよね?」


「無いわね」


「シェアーさんはアタシの提案、どう思いますか?」


「受けた方がいいわね。女の子同士だし、クレハちゃんにとっても1人で冬越えするより、そっちの方が断然良いわ」


 仲間を増やし、逃げ道を塞ぐ。


「ほらね。一緒に住みましょ。お腹空いてるでしょ、これでも食べる?」


 四次元ポーチからアツアツの唐揚げ棒を取り出して、1本を口元に運んでやる。

 賄賂。


「あっ、ああ…………」


 女の子は唐揚げ棒をひっつかんで食べだす。


「美味しい? まだ有るから全部食べて良いわよ」


「こくこく!!」


 胃袋掌握。


「ねっ、一緒に住も?」


「んっ…………わかった。一緒に住むで」


 勝った。裏でニヤつきながらも笑顔を向けている。


「あっ、シェアーさんもどうぞ」


「あっ、ありがとう…………」


 シェアーさんにも賄賂を渡しておく。


「これ、報酬ね。獲物は解体して買い取ってあげる」


「ありがとうございます」


 全部渡して、処理してもらう。お肉だけは大量に、100キロ程貰って置いた。他は売却して56,400Rの儲けになった。


「それじゃ、案内するね」


「うん。うちはレティシアや。レティって呼んでな。これからよろしくや」


「こっちこそよろしく。アタシはクレハ。クレハって呼んで」


 握手を交わしてから、俺達はギルドを出て家に向かって行く。同居人となったレティシアには色々と働いて貰おう。






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