12話
遠隔操作浮遊式小型魔導砲第一試作機クトゥグアを作った次の日。俺は朝食を食べた後、昨日入っていなかったので風呂に入ろうと思い、浴室にやって来た。浴槽は広く、檜のような木で作られている。
「えっと、まずは魔術で水を入れて…………ウォーターボール」
広めの湯船に水球を作り出して、大量の水を入れて行く。それが終わったら掌に火の玉を作り出し、水の中につき入れて行く。ジュゥゥゥゥという音と共に水の温度が急激に上がっていく。
大体、いい感じになったら服を脱いで湯船に浸かる。
「しかし、女になるとはな…………」
湯に濡れた自分のサラサラの髪の毛を指でくるくると弄りながら思う。転生してもう直ぐ10年。実年齢は自分が理解しているだけで28年+9年で37年。記憶が戻らなかった5年も合わされば42歳で、もう直ぐ43歳だ。
「こんな美少女が43歳のおっさんか…………嫌だな。うし、考えないようにしよう。世界には永遠の18歳とか、18歳未満なのに18歳以上なんて奴もいるんだし、気にしたら負けだね」
身体を浴室の底に沈めて、完全に潜ってしまう。仰向けで寝転がって湯の中で身体を伸ばす。
肺活量もかなり増えているし、この身体のスペックはかなり高く仕上がっている。それを考えると、今の人生を楽しむのは有りかも知れない。いや、有りだろう。女というのは有るって言われている性転換薬でどうにかすればいい。何より、この世界には魔法が有るしね。
「ぷふぁっ! まあ、死ぬ確率やBADENDフラグは多そうだけど、本当にどうしようも無くなればティルヴィングで概念ごとぶった斬ってやればいいや。2発までは安全だしね」
3発目はその場を凌いでもBADENDだしね。それに俺にはクトゥグアも有るし大丈夫だろう。それに魔導技師は飯の種には困らないみたいだし、いざとなれば行商して世界を回るのも面白いかも知れない。
「でも、どうせなら性転換薬以外の夢も欲しいね~~~でも、先ずはお金集めが先かな。先立つ物が無いとね」
金貨は家の家具とかで結構使ってしまっているし、調味料を集めようと思ったらお金がいっぱいいる。それに船も欲しいしね。
やる事を決めたら、お風呂を上がって何時もの服に着替える。そして、腰にステンノとエウリュアレを取り付けて外へと出て行く。
塩の作成は夜でいいし、今日はギルドに顔を出そう。という訳で、挨拶をしながらギルドに入る。
ギルド内は騒がしくもなく、イベントは起こらない。俺は掲示板の方へ行って、Fランクの仕事を探す。やっぱり、常時依頼の薬草採取のような簡単な仕事しかない。といっても、チェリム森林なので魔物か凶暴な動物は出るのだけど。
【依頼:薬草採取】
・フラム草1束5000R
・エルベ草10束100R
・リルベ草10束200R
この依頼を受ける事にする。何個でも良いしね。でも、フラム草って無茶苦茶高いな。
「シェアーさん、薬草採取の常時依頼だけど…………」
「はいはい。これね。これは薬草を持ってきてくれるだけでいいわよ」
「どんな薬草?」
「フラム草はチェリム森林の奥の方にあるわ。赤い草なんだけど、葉っぱの先端に赤い蕾が有るの。それが割られると爆発するから採取には気を付けて…………というか、そんな奥まで入っちゃダメよ? 手足が吹き飛ぶくらいの威力は有るから。群生地だと連鎖爆発してとっても大変な事になるから」
何その危険な薬草…………下手に踏み込んだら大爆発ですか。天然の地雷だね~物騒極まりないな。おい。
「エルベ草はヒットポイントポーションや傷薬の材料になるわ。特徴は…………ああ、クレハちゃんは字が読めたわね。図鑑を売ってあげるから見た方がいいわ」
「おいくら?」
「10,000円。半銀貨1枚ね。紙を使っているし、絵師が書いてくれているから、この値段は仕方無いわ」
「仕方無い。それを買うから稲…………こんなのが群生している所、知ってる?」
「ちょっと待ってね…………有った。これがチェリム森林の前半部の地図なんだけど、この辺りね。近場とはいえ、奥の方だからできたら行って欲しく無いわね」
「は~い。地図は貰えるの?」
「地図は図鑑にセットになってるわ」
「お~~~ありがと~~じゃあ、行ってくるね」
「くれぐれも気を付けてね」
シェアーさんに見送られながらギルドを後にする。もちろん、狙うは米だ。弾薬も魔力も十分にある。問題はない。
自宅から、木の柵を超えて森の中へと入る。入ってすぐに自分のステータスを確認する。昨日の作業でレベルが上がっているはずだからだ。
【ステータス】
Name:クレハ
Class1:魔導技師Lv.5
Class2:戦術家Lv.3
Class3:魔導師Lv.1
HP: 400/ 400↑
MP:1100/1100↑
Str:50↑
Agi:20
Vit:40↑
Int:30+80↑
Dex:50+80↑
Luk:50↑
【パッシブスキル】
《魔導知識Lv.3》↑《戦術眼Lv.2》《部隊運用Lv.1》《魔力回復(小)Lv.1》《魔力操作Lv.2》《分割思考Lv.2》《戦闘の才能Lv.MAX》《天賦の才Lv.MAX》《獲得経験値上昇Lv.MAX》《老化遅延Lv.MAX》《寿命増加Lv.1》《第六感Lv.2》《体力回復(中)Lv.1》《魔力回復(中)Lv.2》《体術Lv.2》《剣術Lv.1》《魔術Lv.1》《射撃Lv.2》《火属性魔法適性Lv.MAX》
【アクティブスキル】
《魔導器召喚Lv.MAX》《魔導器生産Lv.3》↑《火属性魔法Lv.1》
【装備】
ティルヴィング(剣、封印)
ステンノ(銃、封印)
エウリュアレ(銃、封印)
クトゥグア(浮遊魔導砲、封印)
七色の断罪者セット
ステータスがかなり上がっている。魔力なんて3倍くらいに上がっている。クトゥグアの生産はそれだけ経験値が入って来たって事だね。
「よし、行くか」
軽く柔軟をしてから奥へと進んで行く。目的は薬草採取と稲の採取だ。でも、気分はFPSゲーム。何故なら、何時でも撃てるようにしたステンノを両手で持って、木から木へと進んでいるからだ。クトゥグアも出現させての本気モード。定期的に1キロまで調べられるソナーまで使っている。
そんな安心モードで進んで行く。
隠密行動を基本がけた御蔭で大したトラブルも無く、目的地である群生地へとやって来た。だいたい、家から2時間くらいの位置に有る。
ここは流石にフラム草は無いけど、エルベ草とリベル草は有った。図鑑には葉っぱの部分が材料になるので、根っこなどには傷つけ無いように書かれている。
「鎌が欲しくなるね」
葉っぱの部分を採取用のナイフで斬り取っては束ねて四次元ポーチに放り込む。しばらく採取作業に勤しんで行く。
「しかし、森の中をこんな格好で走破するとは…………流石異世界」
本来なら、森の中を歩けば露出している肌や服に多少は傷つくのだが、そんな事も無い。服は魔力で編まれているのかかなり頑丈だし、自動で修復される。肌は傷ついても直ぐに回復するので大丈夫だ。チクッとしたら次の瞬間には薄くなって、だんだんと消えて行く。まあ、露出している肌は肩と手、絶対領域なんだけどね。しかし、この服は考えれば考えるほどバリアジャ…………魔導服だね。
「よし、採取完了。次は稲を取りに行こう」
採取地を後にして、さらに奥へと進んで行く。