見えない恋人/Wait
夢を持ちましょう 僕らはどんな職業にもなれる自由な世界に生きている
夢を叶えましょう 豊かな世の中 人生は楽しい事ばかり 明るい未来
錆びついた鉄くずのような幽霊列車に揺られ オレは何処かへ運ばれていく
凍える手に熱い息を吹きかけて 生きていることを実感しながら
座席は汚れ 空気は淀み 周りの屍が馴れ馴れしく話しかけてくる
誰もいない孤独の積もった部屋へと急ぎ 誰もいない部屋で見えない彼女に話しかける
気が狂うまであと何日かかる 悪夢が覚めて新しい朝が来るまであと何時間残っている
夢と希望を胸に抱えて 笑顔を武器に今日を生き抜く
今月の目標を達成するため 笑顔を武器にこの瞬間を切り抜ける
流れる汗も 何処かで擦りむいた傷から迸る血も気にならない
孤独死の噂を恐れることなく 強がりを見せて笑う声に力はない
オレは真面目に生きてきたと胸を張って言える 夢を信じてここまで来たんだと
暗闇に一人 自分の息遣いだけが喧しく夜を賑わせる
握りしめる拳に意味がないこと 希望がないことも知っている
見上げた空には星も太陽も何も見えない 隣の建物の屋上がオレを誘惑するだけ
夢を見るのも終わらせるのも自分次第 百万回と過った人生の最終回
うわぁぁぁぁぁあああああ うわぁぁぁぁぁあああああ うわぁぁぁぁぁあああああ
うわぁぁぁぁぁあああああ うわぁぁぁぁぁあああああ うわぁぁぁぁぁあああああ
力の限り叫んでも何も変わらない 何かが間違っている でも何かは分からない
誰も傷つけたくないし 虫すら殺したくはない この優しさは誰のものですか 何のためですか
心の闇を探したって 終わりは来ない じゃあ 今度は愛の話を始めましょう
心を切り替えて 新しい春が来るから 冬のあとには春が来るから
見えない恋人は言う
生きている以上 死ぬことは出来ないから
見えない恋人は言う
底を見た人は 浮き上がってくるものだから
見えない恋人は いつだって オレが聞きたがっている言葉をくれる
死ぬ覚悟が出来ている人は 死ぬ必要はないから
見えない恋人は いつだって オレが聞きたがっている言葉をくれる
始まりのあとには 必ず終わりがやって来るから
暗闇に包まれた冬のあとには 必ず輝かしい春がやって来るから
狂気の春でも 凶器の春でも 狂喜の春でも 春はやって来るから
いつか目に見える彼女に出逢ったら オレはきっとこう言うだろう
「一緒にいてくれて ありがとう」
その一言のためだけに その時が来る日まで オレは笑顔で今を生き続ける