第五十九話 ビルク伯爵の頼み事
「私からの頼み事の前に改めて、盗賊を狩ってくれたことを礼を言う。ダック侯爵の息子と娘のランド殿とクラリア殿を救い、アナリザ様も救ってくれた」
「いえいえ、とんでもないです」
「ダック侯爵も配信を見ておるだろうな」
異世界配信のコメント欄を見るとダック侯爵のコメントがあった。
「娘と息子を救ってくれたことは礼を言うが、配信は嫌いじゃ!」
「わしからも礼を言う。ダック侯爵はわしに借りを返すと言ってくれた」
「そういう事を配信で言ってはいけません。ドナルド公爵も見ているのですよ?」
ダック侯爵と王様と宰相様がコメントしてる。
ビルク伯爵は話を続ける。
「私は王様派じゃが、ダック侯爵も今回の件でこちら側に協力する形になった」
「なるほど」
俺はあんまり政治の事はわかんないけど、俺たちがランドさんとクラリアさんを救ったことで、政治派閥にも変化があったわけだな。
でも、俺は特別贔屓しているわけじゃないけど王様派閥に組み込まれてるんだな。
「それで私の頼み事なのだが、ビルクの領地にある不思議なにおいのするお湯を使った名産品を作ってほしい」
「なるほど?」
「それにダンジョンもある。あそこのダンジョンは、二、三日あれば最奥まで行ける作りだ。そこでレベル上げも兼ねてみてはどうかな?」
不思議なにおいのするお湯というのは、おそらく温泉だろう。
お湯の質は硫黄かアルカリ性かはわからないけど……。
ダンジョンのレベル上げはしていきたいけど、王都での式典を置いておいてもいいのだろうか?
「ビルク伯爵、名産品は目星はつくのですが、ダンジョンのレベル上げに時間を使っていては式典まで間に合わないのでは?」
「何を言っておる。王都まで一か月はかかる道のりをユウキ殿のキャンピングカーは五日もかからずに行けるのだろう?」
「まあ、確かに」
「だからそれを利用して、ビルクの街でレベル上げと頼み事を受けてくれると助かるのじゃ」
俺が頭を悩ませているとクリスがこちらに視線を向けた後、ビルク伯爵に話をしだす。
「ビルク伯爵、依頼には報酬がつきものですわ。レベル上げはいいとしても街の名産品を作るという依頼は報酬を頂かなくては」
「おお、君がユウキ殿の暴走を止めた、涙のクリス殿か。しっかりしておる。良き妻になるぞ」
「そ、そんなことはいいのです!」
クリスがちょっと顔を赤くしてこちらを見ている。ルルとカゲは不満そうに俺の脇腹をつねってくる。ルルーシュは他のメイドたちと共に給仕を手伝っていた。
「クリス、お主、話を誤魔化されておるぞ」
「ルルもそう思う」
餓狼の熊獣人のグラウルさんが頭をぼりぼり掻きながら、話し始める。
「ユウキさん、人がいいのはわかるがちゃんと報酬について聞かないと」
「確かにそうかも。ありがとう。グラウルさん」
「良いってことよ」
「報酬じゃが、ビルク伯爵家に伝わる秘宝を渡そう」
「え? それはちょっともらいすぎじゃないかと」
「いや、古の賢者に関わるものだ。本来はユウキ殿が管理すべきだ」
「ええ、でも」
秘宝についてはまだ詳細は教えられないと言われた。
「すまんのう。じゃが、お主らの助けになるものだぞ」
そこまで言われると気になるのだが、その場では教えてもらえなかった。
「それでは晩餐にしよう」
テーブルに運ばれてきたのは、皆が頼んだ食事だ。
俺のテーブルに来たのは丸鶏の肉の中に木の実と野菜が詰め込まれたものだ。
かぼちゃのポタージュも香りが素晴らしい。
一口飲んでみる。
「うわ、かぼちゃの甘みと塩加減がめちゃくちゃ美味い」
「そうだろう、うちのシェフは腕がいいんだぞ」
丸鶏の肉詰めも味わってみる。外の皮はパリパリでメイドが切り分けてくれた中の木の実と野菜の食感がとてもいい。特製のソースはコクがあって丸鶏の肉詰めとの相性もいい。
ルルはビルク伯爵のお抱えシェフのグラタンを食べてびっくりした顔をしていた。
「すごい、ユウキの作ったグラタンではない。でも普通に美味しい」
うーん、あの時は全粒粉で作ったホワイトソースだったから味わいは全然変わってくる。だから変わるのは仕方ないけどな。
クリスはパッザを食べようとして、切り分けられたパン生地から伸びるチーズに驚いていた。パッザとは異世界風のピザだ。
シチランオークのステーキは傍から見ても美味しそうなステーキだった。
ランドさんとクラリアさんはハンバーグの肉汁にびっくりしてる。
サラダにも選び抜かれたドレッシングが使われている。
オリーブオイル的なドレッシングだな。
美味しそうだ。
餓狼の五人は楽しそうに食事をしている。
「グラウル、シチランオークのステーキ最高だな!」
「ガルド、俺はパッザが気に入ったぜ」
「ザン、グラタン取りすぎ!」
「お前こそ、ハンバーグ食べすぎだろ! ミレア」
「シズナ、お前は何くってるんだ?」
「鶏肉の肉詰め」
アナリザ様はもきゅもきゅとパッザとシチランオークのステーキにかぶりついている。
無言だが笑っている所を見ると美味しそうだ。
「ユウキ殿に皆も楽しんでくれたかな?」
「とっても美味しかったですよ!」
『美味しかった‼』
その後はビルク伯爵も交えて、トランプで遊んだりした。
そういえば盗賊から見つけた宝飾品はどうしたらいいんだろう。
明日の朝に聞いてみよう。
だが……夜一人横になって寝るときに、人を殺したことを思い出して体が震える。
これは眠れるかな……。
小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を★★★★★にしてくださると作者が大変喜んで更新頻度が増えるかもしれません。よろしくお願いします。




