第五十七話 『亡霊』のアングラ
「マイルズが『憑依』スキル持ちという事は、どんな所属かわからないという事か?」
「いえ、マイルズのような特殊スキル持ちの事はエルグランド王国でも聞いたことがありますわ」
「ああ、『亡霊』のアングラという闇ギルドの凄腕スパイがいるといううわさは聞いたことがある」
クラリアさんとランドさんが話してくれる。
「じゃあ、今回の誘拐事件は、闇ギルドの仕業だっていうのか?」
「いえ、恐らくその後ろにはエルグランド王国の貴族がいます」
ルルーシュが返事をする。
「闇ギルドは誰かの依頼を受けて動くものです。ダック侯爵の息子と娘を攫い、エルフの王女も狙った犯行を単独でするはずがありません」
「それを狙ったやつの目星はついているのか?」
「恐らく……ドナルド公爵の一派かと」
ドナルド公爵はエルグランド王国の南東の鉱山を有した領地を保有している。
鉱山から取れる鉱石の主要なものは鉄鉱石と銅鉱石と少量のミスリル鉱石。
莫大な権益を得ている裕福な貴族らしい。
「うちの父、ダック侯爵とは仲が悪くてね、ダック侯爵派とドナルド公爵派とエルグランド王国の王様、マルコ様派に王国の派閥は分かれているんだ」
ダック侯爵は広大な穀物を育てていて、王国の麦所と呼ばれているらしい。
ちなみにダック侯爵とドナルド公爵は配信文化についてもよく思っていないらしく、マルコ王が配信にはまっていることに苦い顔をしているらしい。
「ユウキ、貴方も他人事じゃない」
「え、何でだ?」
ルルに突然言われて俺は考えるが全然わからない。
「神聖の森でたくさんの穀物が取れることやミスリル鉱石を取れるのは配信で分かっている。だからダック侯爵とドナルド公爵から悪い意味で目をつけられてる」
「つまりどういうことだ?」
「今回の誘拐をユウキに押し付けようとマイルズが画策した可能性があるのです」
クリスが真剣な顔をして俺に言ってくる。
「でも証拠がなくないか?」
「その証拠を得ようとして、ガーディアンのユウゴとキャンピングカーを狙ったのです」
なるほど。ダック侯爵の息子と娘を狙い、ついでにエルフの王女も攫って、俺が来るまで待ち、ガーディアンのユウゴとキャンピングカーを狙った。それを別の場所に置いておいて、ダック侯爵の息子と娘とエルフの王女をそのままにすれば俺が怪しくなる。
マイルズ、じゃない。闇ギルドのアングラやドナルド公爵が画を描いた展開はこんな感じか。
「思いっきり俺に喧嘩を売られているな」
「その通りじゃ。ユウキ、お主はどうする?」
俺は、この世界の貴族たちはいい人ばかりだと思っていたけど、そうじゃない人もいるらしい。俺にできることは「配信」だけ。だったら……。
「配信スキルで証拠をそろえて叩き潰す。俺の大事な人達には手を出させない」
「ユウキ殿!」
「真剣なユウキ殿は凛々しいですわ……!」
ランドさんはともかく、クラリアさんの視線がむずかゆいな。
俺のファンって言ってたけど本当らしい。
「ちなみにダック侯爵の領地はどこにあるんだ?」
「王都の南西に領地があります」
「二人をダック侯爵の元に返さないとな」
「今王都では、爵位の授賞式の用意がされていて、父やドナルド公爵もいるはずです。だからその時に会えるかと」
なるほどな。後はこのエルフの第二王女のアナリザ様の事なんだが。
「アナリザ様はどうされますか?」
「むう。こういう場では敬語は要らない」
「ふう。わかったよ。どうする?」
「そうですわ。私もエルグランド王国の王都、アナハイムに行きましょう」
そもそもエルフの第二王女がなんでこんなところにいるんだ?
「それはですね。私が冒険者をしたいと言って……」
「え? 家出ですか⁉」
困ったよ。とんだじゃじゃ馬王女様じゃないか。
「いや、家出ではないのです。エルフの国では、百歳を過ぎたら、国の外に出て見聞を深めるという儀礼があって。私は魔法や剣を修めて、ちょうどこないだ、エルフの国をでて、エルグランド王国の王都アナハイムに行く予定だったのです」
「なるほど」
闇ギルドのスパイ、『亡霊』のアングラは、マイルズとして情報を得ながらアナリザ諸共奴隷にすることを狙ったのか?
「うーん。なんかきな臭いな」
「何がじゃ?」
「いや、ちょっとだけな」
俺は皆には言わなかったが、ダック侯爵の息子と娘であるランドさんとクラリアさんとエルフの国の第二王女のアナリザ様の立場を天秤にかけた。
その時に、アナリザの方が奴隷にする価値は高いんじゃないかと思ったんだ。
だからダック侯爵の息子と娘を奴隷にするのではなく、アナリザを狙っていたんじゃないかと思ったんだけど、皆には言わなかった。
そこからは俺たちの話になる。アナリザは俺が「配信」というスキルを持っていることを知らなかったので説明してあげる。
「凄いですわ! 目の中に動く絵が広がっています!」
最近は見逃し配信として、切り抜き配信という機能が付いたみたいだ。
俺が異世界に来てからルルと出会う所や、他の名シーンをマリア様が切り抜いた動画の見直しができるようになったらしい。
マリア様、もう神様じゃなくて、動画配信の編集者みたいになってるよ。
『こういうことをやってみたかったからいいんです!』
いつも通りマリア様が返事をしてくれる。
キングヒドラの魔力の反動も少し落ち着いたので、キャンピングカーで林を抜けて、次の街を目指す。
ランドは目を輝かせながら外の流れる景色を楽しみ、クラリアさんとアナリザ様はルル達とルルーシュさんの淹れる紅茶を楽しみながら、会話に花を咲かせている。
外には餓狼の五人が四十キロの速度に余裕で付いてきている。
獣人族はすごいな。ルルも走りたそうにしている。
そんなこんなで次の街についた。
この街の名前はビルクという街だ。
治めているのはビルク伯爵というらしい。
餓狼の五人に盗賊の頭と一人の生き残りを衛兵に引き渡してもらう。
ちなみに盗賊たちは縛って、後ろのトランクに入れていたぞ。
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