第五十六話 マイルズのような何か。ユウゴ視点
「ピピ。マイルズ様、キャンピングカーでお休みください」
「ああ、そうさせてもらうよ」
ピピ。マイルズの口調が変わった。この商人に怪しいところはないが……。
念のため、どこの生まれか聞いておくか。
「マイルズ殿は、どこの生まれですか?」
「ああ、私はね……」
マイルズは突然、キャンピングカーの中を物色し始める。
むっ。こいつは盗人だ。
「ひっひっひ。甘い坊ちゃんを騙して、配信者とやらの神器ももらっていこうかね」
マイルズにキャンピングカーの中の物を取られる前に急いでキャンピングカーから降りて、キャンピングカーごと収納しようとするが……。
「おっと。お前も有機物ごと収納できる、アイテムボックスの機能が使えるんだね」
マイルズはその動きを察知し、瞬時にキャンピングカーから降りた。
配信を見ているからか、こちらの手札を知っているようだ。
「そこの目障りなガーディアンごと、奪っていこうかな」
「マスターユウキの情報管理能力をすり抜けるとは……」
「ふん。実際このマイルズという商人は白だぜ?」
「何だと?」
言っていることがわからない。まさかこいつは……?
マイルズではないのか?
「どうせ俺の管理下に置かれるんだから教えてやろう。俺のスキルは『憑依』だよ」
「何ですって⁉」
「何も知らない甘ちゃんの意識を乗っ取り、そいつの体を乗っ取るのさ」
こいつは、古の賢者コウダイ様が昔言っていた、スキル持ちだ。
例えるなら、マスターユウキの「配信」という特別なスキルと同じ。
「貴様はどこのスパイだ?」
「そんなこと言うと思うか?」
マイルズはアイテムボックスから取り出したククリナイフを取り出して、私の体に投げてくる。
キン!
私の体はミスリル鉱石でできているから弾くが……。
「おめえの体に触れて、アイテムボックスに収納してやるよ!」
マイルズは太った体に似合わない運動神経で、ククリナイフを振るい、こちらに斬りつけてくる。
私は格闘戦を仕掛けて、マイルズのククリナイフを弾きながら、顔面を殴ろうとする。
「意外に俊敏だな!」
しまった! マイルズに誘われていた。
顔面を殴るために伸ばした手をしゃがんで避けられて、腕を触られる。
「収納!」
ビリッ!
「何だと⁉」
私のミスリル鉱石の腕から金色の魔力があふれて、雷が迸る。
これは……マスターユウキの魔力?
そうか、マスターユウキと能力を同期したときにキングヒドラの魔力も同期していたんだな。
「これがあれば!」
「ちぃ! 急に動きが速くなりやがった」
マイルズの顔に汗がにじむ。
ジャブからの左アッパー!
金色の魔力を纏っているので電撃付きだ。
「グハァ!」
マイルズはアッパーで宙に舞い、ククリナイフを取り落とす。
顎にいい一撃が入ったから、暫く動けないだろう。
この魔力は私にはない、何か危険な感情を催すような感じがする。
マスターユウキはこんな魔力を使っていて大丈夫なのだろうか?
私はマスターユウキが心配になった。
私が考え事をしている隙に、ぼふんと煙が立つ。
「ひっひっひ。今は逃げさせてもらうぜ!」
なっ! あの一撃をもらっておいてあんなに動けるのか?
私はすぐに追おうとするが、煙でどこに逃げたかわからない。
遺跡の中であれば探知できるのだが、ここは遺跡ではない。
「ピピ。私の失態……」
森の中に逃げたマイルズを追うことを諦めた私は、倒木をアイテムボックスに収納する。
マスターユウキは大丈夫だろうか?
それが心配だった。
** ユウキ視点
死んだ盗賊たちは林の土に埋めてきた。放置するとアンデッドになるらしい。
だが自分が殺した盗賊たちを埋めるのは結構感情が動かされる。
俺たちは盗賊の頭をロープで縛り、ランドさんとクラリアさんとアナリザさんとルル達を連れて帰ってきた。
街に行って、三人の奴隷契約を解消し、盗賊は衛兵に渡す予定だ。
林を抜けて、ユウゴの所に急いでいくと所在なさげに立っているユウゴがいた。
「ユウゴ、大丈夫か⁉」
「ピピ。マスターユウキ、マイルズを取り逃がした」
マイルズの話を聞くと、「憑依」というスキルを使ったどこかのスパイだという事がわかった。
「アイテムボックスに取り込まれそうになった」
「マジか。何で避けれたんだ?」
「マスターユウキのキングヒドラの魔力のお陰」
収納されそうになったところで、金色の魔力が発動し、雷が守ってくれたらしい。
「だけど、この魔力は危険。マスターは魔力に飲まれなかったか?」
「飲まれたよ。人殺しを……俺は楽しんでいた……」
「マスター……」
「でも、クリスのお陰で立ち直れた」
俺はクリスの顔を見る。クリスは俺を見て頷く。
「ユウキが迷ったら、また引き戻すわ」
「ルルもいる」
「わらわもいるのじゃ」
「ご主人様のキャラ違いは、私が突っ込んで直します」
皆の声が勇ましい。あんな狂った俺を見ても俺の傍にいると言ってくれている。
皆のためにも頑張るか。
「それにしてもユウキ殿は配信で見るよりも凛々しいですわ」
「ユウキ殿の戦闘シーンも配信で流れていたが、すごい迫力だったな」
「ユウキ殿は古の賢者だけではないのだな」
そんなことはないさ。
皆は褒めてくれるけど、俺は……やっぱりご飯を作ってる時が楽しいな。
そう思っていると、俺は体に痛みが走る。
「ぐっ!」
「ユウキ、どうしたの⁉」
俺が苦しそうにしているのをルル達が心配してくれる。
「ふむ、キングヒドラの魔力の使い過ぎで反動が来たのじゃろう」
「ピピ。マスターユウキ。キャンピングカーの中で一旦休む」
そうだな。俺たちはキャンピングカーの中で休むことにした。
縛った盗賊は車の傍で餓狼の五人が見守ってくれているらしい。
マイルズの事について話そう。
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