第五十四話 王都への旅路。盗賊編
……
「おい、お前たちのアジトを吐け」
「……」
盗賊の生き残りは二人いたが、そいつらは無言で拒否している。
「喋らねえんだったら、爪を剥いでいくしかねえよなあ?」
「私の魔法の的にしてもいい」
熊獣人のグラウルさんと猫獣人のミレアさんが圧をかけている。
「ユウキさんは見る必要ないんだぜ?」
「ガルドさん、良いんです」
俺はこの世界に来て良い思いをしている。
だが、異世界では命の値段は安いと聞く。
こういう手合いもいるって知っておかないといけない。
何故なら、仲間を守るときに躊躇してはいけないからだ。
「俺に任せてくれ」
「ユウキさん?」
俺はキングヒドラの魔力を使い、指に金色の魔力を纏わせ、近くの木に雷魔法を撃つ。
「それが、キングヒドラの魔力か! しかもこの威力を無詠唱で⁉」
ガルドさんが驚愕しているが、今は関係ない。
「おい、お前らにこの電流を死なない程度に流してやろうか?」
盗賊の生き残りはブルブルと震えて、脂汗を流している。
「わ、わかった。話す」
盗賊の生き残りは観念して、アジトの場所を話し出す。
林を抜けて、近くの山の洞窟に大きなアジトがあるらしい。
まだ二十人ほど残っている仲間がいるそうだ。
「中に奴隷はいるのか?」
「い、いる。一人はエルフの女で、もう二人は人間の貴族だ」
何だって? エルフの奴隷に人間の貴族だと?
俺は怒りが湧いてきて、雷を体に纏わせる。
「お前ら! 酷いことをしてないだろうな!」
「し、してない。本当だ!」
「ユウキさん、落ち着け!」
ガルドさんの声でハッとする。ルル達やガルドさん達もギョッとした顔をしていた。
「盗賊は基本的に奴隷に手を付けない。何故なら、商品価値を落としたくないからだ」
俺のあまりの剣幕に、配信のコメント欄も静まり返っていた。
現代地球のコメント欄は……。
「俺、ユウキの怒る所初めて見たかも」
「ヤバイ、すっごくかっこよく見えてきた。金色の魔力を纏っているのもすっごくいい」
「ただのヒモ男だと思ってたけど、今の姿は推せるわ」
一方先ほどの戦いを見て、首を傾げている人もいる。
「なんか、盗賊たちが普通に死んでるのに、全然グロいとか感じないな」
「アニメや漫画の戦闘シーンかと思ったくらいだわ。何でだろ?」
うーん、俺の予想だが、マリア様が多分何かしてるな。
『ユウキさんの配信は途中からアニメ調の絵に切り替えました。それはだいぶ前の事ですが、そうすることで、耐性のない人にも見てもらえるようにしています』
『マリア様、グッジョブ』
マリア様のテレパシーに心の中でほめておく。
一方、異世界配信のコメント欄はエルフと貴族という話に大慌てだった。
「宰相、行方不明の貴族となるとダック侯爵の息子達が当てはまるな?」
「王様、そうですね。至急ダック侯爵に連絡します」
「ダック侯爵ってユウキさんの配信を認めんって騒いでた頭の固い人じゃなかったか?」
「てかエルフがいるのがやばい。国同士の問題に発展するぞ」
穏便な旅だと思っていたが、ちょっとヤバくなってきたな。
俺はむすっとした顔で盗賊に言う。
「お前らアジトまでの道を案内しろ。逃げだしたら、わかるよな?」
手にバチバチとした雷を纏わせながら脅すと、二人は必死で首を縦に振った。
「ユウキ、怒るのはわかる。でも荒事は私たちの役目」
「ユウキ、辛くなったら言ってください」
「わらわはユウキの男らしいところを見て惚れ直したのう」
「ご主人様、かっこいい……」
ルル、クリスが俺を心配し、カゲとルルーシュはちょっとうっとりしてる。
俺は黙って四人の頭を撫でて、ガルドさん達と盗賊のアジトに向かうことにした。
マイルズさんはキャンピングカーで待機してもらった。
鬱蒼とした木々を歩き、根っこに足を取られそうになりながらも進んで行く。
盗賊たちにはロープを繋いでいて、俺が掴んでいるので何かあれば電流が走る。
「ユウキ、魔物!」
木々の先に、フォレストウルフの群れがいた。
群れの長が、俺たちを包囲しようとする。
だが俺は苛立っていた。
「おい」
俺は金色の魔力を纏わせて威圧する。何でこんなに苛立つんだろう。
「これはいけないのじゃ。キングヒドラの魔力に飲まれておる」
近くで呟くカゲの言葉も聞こえなかった。
フォレストウルフは金色の魔力を見て即座に逃げていった。
「まるで英雄みたいです……」
クリスの呟きは褒めているのに少し距離を感じた。
俺たちは黙ってアジトに進む。
「こちらです……」
俺たちは息をひそめて遠くから洞窟を見守る。
「見張りが二人いるな」
「だが油断しています。おい、シズナ」
「一人は俺にやらせてくれ」
俺はガルドに声をかける。義憤に駆られているのか、自分のぐつぐつとした魔力に飲まれているのか、わからなかった。
「ユウキさんに殺しは……」
「よい、ユウキ、やれるのじゃな?」
「ああ」
ルルとクリスは不安そうに俺を見ている。
「じゃあ、タイミングを合わせてください。3,2,1」
『ッ!』
俺は雷魔法で一人を完全に焼け焦がす。シズナは速度の関係で一瞬遅れたが見事なヘッドショットを決めた。
「良し、俺たちは突入! ルルとカゲも一緒に」
俺は……人を初めて殺した。
なのに、何の痛みも感じなかった。
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