第五話 ユウキ、バズる
結局二千五百円のスパチャをもらえたぞ。
「早速スパチャで何か買おう!」
「どこで買う?」
それはだなあ、配信スキルのお金やポイント変換サイトが用意されてるらしい。
マリアさん曰く、ママゾンというお母さんのように広い心と様々な商品が用意されてるサイトだ。
このサイトは家なんかも売ってるらしい。
いつかこの森に建ててみたいな。俺たちの拠点。
俺の視界に映っているママゾンのサイトをルルに見せられるように念じる。
「! なにこれ」
ルルは突如現れた画面にびっくりしてる。
ルルが俺の近くに来て、画面をのぞき込むので、視聴者も興奮してる。
「さっきも言っただろ? 俺たちの様子を配信してるんだ」
「え? これユウキとルル?」
「そうだぞ」
名無しの芸人:ルルちゃんの黒い猫耳とつぶらな瞳が近い!
スニッカ―:結構胸もあるんですね! ロり巨乳!
マリア:これちょっと危ないので、視界と俯瞰したカメラを切り替えできるようにしました。
マニュアル主義者:ギギギ、CGのはずなのに。血涙が……。
マリアさんのナイス機転により、ルルのドアップの視界を回避できた。
コメント欄はブーイングの嵐だったが、マリアさんは俺の視界と俯瞰した三人称視点を同時に見せることでそれを回避したようだ。
俺はママゾンでキャンプ用の寝袋をもう一つ買うことにした。
購入を決定すると段ボール箱が虚空から落ちてくる。
またコメント欄がざわつくが、俺は知ったこっちゃない。
段ボール箱からルル用の寝袋を出す。
段ボールと包装用のビニール袋はスラとライムに渡して消化してもらう。
うむ、美味しそうに食べるな。
ルルを隣に呼んでやり、寝袋の使い方を説明する。
「この寝袋、温かすぎる」
「そうだろ~。って言っても千円くらいの寝袋だけどな~」
現代日本のキャンプ用品はすごいのだ。まあキャンプ用品じゃなくてもすごいんだけどな。
「ユウキ、寒い。くっついていい?」
「お、おう。良いけど見張りしないと駄目じゃないか?」
「じゃあ、隣で寝る。三時間経ったら起こして」
ルルは俺の横に寝袋を持ってきて、横になる。
すぐに寝息が聞こえてきた。
暗闇の中に火花を立てて燃える焚火をじっと見る。
今日は異世界に来て一日目だが色々あったな。
騒がしいコメント欄を見ながら雑談しているとだんだん眠くなってきた。
『ユウキ、スラとライムが見張ってる』
『ユウキは寝て』
スラとライムがありがたいことを言ってくれる。
俺は元々あった寝袋をもう一つ持ってきて、ルルの傍で横になる。
「えへへ、ユウキ、良い匂い」
「どんな夢を見てるんだか」
ふわあ~。俺も眠くなってきた。目をつぶるとすぐに睡魔に襲われて視界が暗くなる。
だが、俺は忘れていた。配信を切り忘れていることを。
おいおい! こんなかわいいケモ耳美少女と添い寝かよ!
リア充爆発しろ!
俯瞰した三人称視点のカメラは残っているので焚火台と寝ている二人の配信はどんどん盛り上がっていく。
ユウキの知らないところで配信はバズっていくのであった。
チュンチュン。
朝日が昇り鳥が鳴く。
ユウキは目が覚めると胸元に暖かい感触を感じる。
むう。なんだこれは?
黒いケモ耳と柔らかくて大きなメロン。
あれ? 寝ぼけて揉み揉みすると、悩ましい声が聞こえる。
「にゃあ、にゃん」
あれ? 俺って異世界に来たんだっけ?
目を開けると何故か俺の寝袋に入っている小柄な黒い猫耳少女。
ってええ!
柔らかい感触はルルのメロンか!
「むう。ユウキ、エッチ」
「い、いや、これは。ってなんで俺の寝袋に入ってるんだよ!」
「二人で寝れば暖かい」
目を開けると配信を切り忘れていることに気づいた。
「あ、配信きり忘れてた」
同接者数は……? あれ、一万人超えてるぞ!
コメント欄はもはや洪水のように流れているが、どうやらユウキへの恨み節とCGで作られた配信だという声と異世界派に分かれているらしい。
スパチャも一万円や五万円のスパチャが数件来ている。
内容は、どうやって異世界に行ったのか? という質問ばかりだ。
「みんなおはよう。こんなに見てくれて嬉しいよ」
「すごい、文字の量」
ルルの声が響くとルルちゃん可愛い! というコメントであふれかえる。
またスパチャ貰っちゃったよ。
これがバズるってことかな?
俺は近くの水場に来て、ルルの前に水浴びをする。
いやー体がかゆいな。お風呂は絶対作らなきゃな。
ルルは俺の体をじっと見ていた。まあ筋トレは趣味だったから腹筋は割れてる。
あ、下着はつけてるぞ? ヤンチューブをバンにされちゃうからな。
胸は隠してるけどな。
コメント欄は俺の腹筋を見てか、またコメントが加速してる。
ちょっと恥ずかしいんだが。
前の常連さんのコメントはもうわからない。ちょっと寂しい。
ルルも水浴びをした後、二人で焚き火台の前で体を乾かす。
ルルは普通に裸になってるが、それはまずいとバスタオルをママゾンで買って渡した。
「? なんで?」
「配信に映っちゃうからな」
「?」
まあ、現代日本の視聴者はこっちに来れないからな。
その点はいいのかも。ルルはあんまりわかってないようだ。
スラとライムにも礼を言って朝飯を作る。
ルルが慣れてる食パンを鉄板の上で焼く。バターを塗るのは忘れない。
更に乗せた後、生卵を割って目玉焼きを作る。
ついでにベーコンも焼いたら完成だ!
「パンの上に焼いた卵? 美味しいの?」
「そりゃあ美味いぞ。昨日のベーコンもある」
スラとライムにはベーコンを入れていた発泡スチロールをあげる。
何か、昨日よりスラとライムが大きくなってる気がするな。
後で鑑定するか。
ルルは焼いたパンにがぶりとかぶりつく。
さくっとした音とルルの驚きの声が森に響く。
「! 柔らかくて白くて美味しいパン初めて食べた!」
「そうなのか?」
話を聞いてみると黒くて固焼きのパンが異世界では主流らしい。
そりゃそうだよな。現代日本の技術で作られた柔らかくて美味しい食パンはレベルが違うよな。
二人で仲良く、パンとカリカリベーコンを食べた。
ルルは機嫌良さそうに俺の腕に尻尾を触れてくる。
「そういえば、ルルはどこに住んでるんだ?」
「バルクって街の宿」
「そこは近いのか?」
「歩いて一日くらい」
話を聞いてみると神聖の森に魔物を狩りに来たようだ。
そこを後を付けられて、獣人狩りに襲われたらしい。
バルクって街に行ってみたいな。
ルルと一緒にそこの街に行ってみることにした。
あ、スパチャの額を計算したら一晩で五十万円になってた。どう使えばいいんだよ。




