第四十五話 露店の様子を見に行こう
キングヒドラとグレートモス……?
じゃあ露店の様子を見てからオレンさんの冒険者配信に付き合おうかな。
オレンさんは歓声を挙げていた。
パーティーメンバーを連れてくると言うのでその間に露店の様子を見に行く。
「ぽっぽこーんはいかがですか!」
「配信者のユウキさんが作った美味しいお菓子ですよ! 塩味とキャラメル味があります!」
「冷えたコーラとサイダーもあるぜ!」
バルクの街の広場に行くと相変わらず行列が俺の露店に出ていた。
メイドさんと料理好きの冒険者たちが俺に気づいて手を振ってくる。
でも前よりは人が減った気がするな。
「そうなんですよ。バルクの街ではぽっぽこーんがすごい人気になって美味しい店も増えてきたんです」
「なんかテコ入れできるメニューはないか?」
うーん。それだったらシチランオークの串焼きなんてどうだろう。
醤油は遺跡で作られているしシチランオークも分裂するから尽きる心配はない。
俺は持ってきたシチランオークの美味い部位を使った串焼きをその場で準備する。
「オーク肉の串焼きか? 普通じゃないか」
「何言ってんのあんた! あれってユウキさんの配信で出てきたシチランオークじゃないの!」
「え! それなら食べたい。気になってたんだ」
タレは醤油や料理酒、みりんを使った濃い目のタレにした。
七輪を用意し、炭火でじっくりと焼き上げる。
ジュワ~!
七輪の上でシチランオークの肉が美味そうに焼けていく。
タレを塗りながらひっくり返すと香ばしい香りが周囲に広がる。
「何だい、この美味そうな香りは!」
「いつもの串焼きの匂いよりめちゃくちゃ美味しそう!」
あっという間に露店に人が集まってくる。
「く、悔しいが、俺のやってるオーク肉の串焼きよりいい香りがする」
近くに屋台を出していたオーク肉の串焼きを売ってるおっちゃんが呟くのが聞こえた。
さあ、できたぞ。値段はシチランオークを使ってるから結構高めにした。
それでもシチランオークを食べられるチャンスとあって冒険者がぞろぞろと並んでいる。
「はいよ! シチランオークの串焼き、お待ち!」
「ありがとよ!」
一人目の冒険者が串焼きに豪快にかぶりつく。
「……」
あれ、無言だ。だが肩を震わせている。
「す、すげえ! 肉のうま味と自然な甘みとこのタレがマッチしてる! これならいくらでも食べられる!」
「お、俺にも早くくれ!」
広場は瞬く間に人が増えていく。行列がオークの串焼きの方に流れ始めたので、料理好きの冒険者にも手伝ってもらい、美味しいシチランオークの串焼きを仕上げていく。
「このタレの香りがたまらん!」
「この香りだけでパンを食べれちゃうわ!」
皆がシチランオークの串焼きを笑顔で食べている。
隣で売っているぽっぽこーんとコーラとサイダーも飛ぶように売れていく。
うん、シチランオークの串焼きを売ってよかったな。
しばらくしてから屋台をメイドと冒険者に任せようと思ったのだが。
いい案ができた。
俺は焼けたシチランオークの串焼きを串焼き屋のおっちゃんの所に持っていく。
「なあ、おっちゃんも食べないか?」
「良いのか?」
串焼き屋のおっちゃんは複雑そうな顔でシチランオークの串焼きを手に持つ。
しばらく香りや見た目を確認していたが、一口かぶりつく。
「……! 何だこのオーク肉は! 血抜きで臭みや固さがないのは勿論だが、肉の自然な甘みとあふれ出る幸福感! 濃い目のタレも肉と合っている!」
「そうだろ? おっちゃん、俺とフランチャイズ契約をする気はないか?」
「フランチャイズ契約?」
「おっちゃんが店主になって、俺の露店で働くんだ。肉とタレはこちらが用意する。三割の金額を売り上げから下ろして、俺に納めるんだ」
おっちゃんはしばらく考えていたが笑顔になる。
「それはいいな! 正直このレベルの串焼きを売られたらうちの店はやっていけない。だが自分の店ではないにしろ、串焼きを作ってたくさんの人に食べてもらえるなら嬉しい!」
正直、おっちゃんにとってもメリットしかない。
今、シチランオークの串焼きを売れるのはこの屋台だけ。
肉とタレはこちらが下ろすので、原価はかからない。
良いこと尽くめなのだ。
俺とおっちゃんは握手を交わした。
商業ギルドのバンズさんの立会いの下、フランチャイズ契約をして書面で契約書を作った。これで大丈夫だ。
露店は一旦終わりにした。
シチランオークの串焼きもぽっぽこーんもコーラとサイダーも品切れになったからだ。
ぐふふ。これで露店のテコ入れもできた。
「ユウキさん! あ、露店をやってたんだね。配信で見たけどシチランオークの串焼きは食べたかったなあ」
オレンさんとそのパーティーが広場に現れた。
女性五人のパーティーだった。
エルフの弓術士と筋肉が凄い大盾を持った女性と魔法使いのようなローブを纏った少女と獣人族のシミターを装備した小柄な女性たちとオレンさんの五人パーティーだった。
「私たちは暁の火というパーティー名で活動しているんだ。これでもAランクパーティーなんだぞ」
「オレンさんもお仲間もとっても強そうだもんな」
俺がほめると大盾を持った筋骨隆々の女性が俺の方をバンバン叩いてくる。
「ハッハッハ。配信者のユウキさんほどじゃないがうちらもやるんだぞ。それにしてもユウキさんは体が細いな。もっと肉を食え、肉を!」
い、痛い。力が強いよ、この人。
それから他の三人とも話し、冒険者ギルドで依頼を探しに行くことにした。
あ、アンナさんだ。赤毛のショートで泣きほくろがチャーミングな切れ長の目の美人さんだ。なんか久しぶりに会った気がするな。
「ユウキさん、お久しぶりです。配信者でお噂はかねがね、というか配信見てます!」
「ありがとう。アンナさん。今日は暁の火と臨時パーティーを組んで依頼を受けたいんだが何かいい依頼はあるか?」
「うーん。そうですね……」
アンナさんが依頼の紙を眺めていると、一人の冒険者がギルドに息を切らせて入ってきた。
「大変だ! キングヒドラがアルーシャ山からバルクの街に向かってきてる!」
「何ですって!」
「空にキングヒドラが飛んできてるのが確認されてる! 何故だか知らないがグレートモスがキングヒドラを足止めしてくれてるんだ!」
確かグレートモスは知能が高く、人間に害のない魔物とオレンさんから聞いた。
キングヒドラの足止めをしてくれてるのは協力的なんだろうか?
いや、今はそれどころじゃない。キングヒドラを倒さねば。
「冒険者の皆さん、バルクの街を護る緊急依頼です!」
これは大変なことになったな。俺も手伝うぞ!
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