第四話 インスタントラーメンとインスタントコーヒー
スラとライムが何かを欲しそうにしている。
「スラ、ライム? 何が欲しいんだ?」
『プルプル。そこの透明のやつ』
『私もそれ欲しい』
ベーコンを焼いてあげようと思ったのにゴミが欲しいのか?
俺は不思議に思いながら、ベーコンを入れていたパックをそれぞれスラとライムにあげる。
ベーコンは一枚半はルルに食べられてしまった。
俺はまだおなかが空いている。
「⁉ スライム! 魔物!」
ルルは瞬時に短剣を構える。一瞬過ぎて動きが見えなかった。
異世界の住人ッてすげえな。
あ、ののほんとしてる場合じゃないわ。
「ルル待て! あのスライムはルルを救ってくれたんだぞ!」
「魔物、敵」
「落ち着け、俺は魔物と話せるんだ」
スラとライムはルルの行動を気にも留めずに、プルプル震えながらゴミを嬉しそうに食べている。
『これ美味い』
『普通の物じゃない』
確かに異世界には存在しなさそうなプラスチックだけど何が美味いんだろう?
まあいいか。
「そう言えば、私の傷、治ってた」
「そうだろ? そこの白いスライムのライムが治してくれたんだぞ?」
「ライム、ありがと」
『礼は要らない。この透明なやつもっと欲しい』
どうやらスラとライムはゴミ処理をしてくれるようだ。
インスタントラーメンとインスタントコーヒーのために水を汲んでこようとするとスラが水魔法が使えるという。
『水、あげる』
キャンプ用の小鍋に水を入れてくれる。
鑑定してみると……。
魔力水:スライムが水魔法で出した水。微妙な魔力が含まれている。綺麗で安全。
この表示にコメント欄が騒ぎ出す。
スニッカ―:え、何この表記! ゲームみたい!
名無しの芸人:はあ、こりゃ本当に異世界かもな。
マリア:えっへん。ユウキさんは異世界にいるのです!
スニッカ―:もしかしてマリアさん、異世界の女神様とかないよね?
マリア:ギクギク。ノーコメント。
マリア様、それ、普通にばれるやつ。
焚火台でお湯を沸かして、カップにドリップして入れるタイプのインスタントコーヒーを取りだす。
カップ麵はもう買えないので一日一個と決めて食べていく必要がある、と思ったのだがこれは後で改善される。
カップ麺にお湯を入れて待っている間にドリップしたインスタントコーヒーを飲む。
くー。この渋みと奥にあるコクがたまらないんだ。
俺が顔をほころばせて喜んでいると、ルルが興味深そうに見る。
「それ、何?」
「ああ、コーヒーだぜ」
「香りは良さそう。飲みたい」
ん。じゃあルルの分のカップも準備するかと思ったらひょいと俺のカップを持ち上げてコーヒーを飲むルル。
まだおこちゃまそうだから、多分苦いのはダメだろうな、と思っていたら案の定口をゆがめるルル。
「これ、苦い。毒?」
「違うよ、香りは美味しいだろ?」
ていうか、何普通に俺の口付けたカップで飲んでるんだよ。
俺は彼女いたことない=年齢なのでちょっとドキドキする。
マリア:キーッ! ケモミミ美少女との間接キス!
名無しの芸人:有罪
スニッカ―:ギルティ!
マニュアル主義者:お巡りさんこいつです。
何かコメントする人一人増えてる。
同接者数も十五人になっていた。
「ユウキ、ドキドキしてる」
何故かニコッと笑ったルルが俺の方を見て笑う。
大体無表情だったがこんな笑い方もできるんだなと思った。
そんなこんなでインスタントラーメンができた。
俺はカップのふたを取り、ルルに渡してやる。
「すごい! 美味しそうな匂い!」
「カップラーメンのしょうゆ味だぞ」
箸は使えないだろうからフォークを渡してやる。
猫耳だからネコ科だろうな。すごいフーフーしてる。
恐る恐るスープを口にして、ビクンと震えるルル。
「お、おいじい!」
ルルは涙目で笑うという器用なことをしながら少しずつカップ麺を食べ進める。
あー俺の分なくなっちゃうな。
「ルル、俺の分も残しておいてくれよ」
「ん」
ルルはフォークとカップ麺を半分食べると泣きながら俺にくっついてきた。
「わたじ、に優しくしてくれる人間、ユウキだけ」
「そんなことは……いやルルは怪我をしていたしな。何があったか教えてくれないか?」
話を聞くとルルは冒険者という異世界にはつきものの仕事についていて、Bランクというランクの結構強い獣人らしい。
だが、獣人は悪徳な盗賊団に奴隷として狙われることが多いそうだ。
ルルは神聖の森で狩りをしていたのだが、少し前に獣人狩りという違法に獣人を摑まえて奴隷にする奴らに襲われたらしい。
ルルは必死に戦ったが、瀕死の重傷を負ったところに俺が駆けつけたみたいだ。
ルルは瀕死の重傷だったのだが、捕らえられる前に陰からシャドウライガーというBランクの魔物が助けてくれたそうだ。シャドウライガーは盗賊団を全員殺して影に引きずり込んだらしい。何も痕跡がなかったのはそのせいのようだ。
シャドウライガーっていろんな影に化けられらしい。もしかして俺が見た人影はシャドウライガーの物だったのかもな。
てか、この世界めちゃくちゃ世知辛いじゃん。
マリア様どうなってるんだ!
マリア:獣人狩り、エルグランド王国にいるのですよね。私がエルグランド王国のマリア教会に信託を出します。ユウキさんは警戒を。
名無しの芸人:おいおい、ユウキさんピンチじゃないか?
スニッカ―:なんか本当に異世界にいるみたいだな。
マニュアル主義者:うーん。テンプレだけどやるせないな。
「安心しろ。俺はルルを捕まえて売ったりしない」
「ほんと?」
「ああ、だって誰が狩りをして肉を取ってきてくれるんだ? 俺はルルに推し活してもらうんだ」
「推し活?」
俺は自分が配信というものをして、生活をしていることを伝える。
あんまり理解していないようだ。
ポカーンとしていたルルだったが、徐々に笑いはじめる。
「ユウキ、弱い。私、一緒にいる」
「そうか、それは嬉しいな」
コメント欄もさっきまでの雰囲気から盛り上がる。
名無しの芸人:うおおおお! ルルちゃんのためにスパチャするぜ!(千円)
スニッカ―:私もルルちゃんのために‼ 決してユウキさんがヒモ男だからではないです!(千円)
マリア:私も少ないですが。(五百円)
マニュアル主義者:私のマニュアルにこんな事態は載っていない! クソ、まだCGの可能性はある!
コメントしてくれていた人たちがスパチャを投げてくれた。
配信者をやっていてスパチャをもらうのは初めてだぜ。
「みんなありがとう! ここでの生活に使います!」
ルルにもコメント欄が初めて見えたらしい。
すごく驚いていた。
これからの生活が楽しみだな!




