第三十六話 古の賢者の日記帳
俺は疑問と期待を胸に日記帳をめくった。
タイトルはこうだった。
「配信者ユウキ君へ」
僕は古の賢者と呼ばれた日本人のコウダイ。
何故、次の賢者と呼ばれるユウキ君が配信者とわかるかって?
実は、僕は未来予知と呼ばれるチート能力を与えられたからなんだよね。
後はソロキャンプを楽しむ君の配信をここに来る前に見ていたこともある。
だから未来を予知して驚いたんだ。僕にとっては憧れの配信者がこの世界に来るなんてね。
僕は異世界ラノベをよく読んでいたから、異世界スローライフをしてみたかったんだけど、当時の異世界、ガーディアン・ワンダーランドは魔物との戦いに人々が苦しんでいたんだ。
まだ魔法や戦闘の基本ができていない時でね。僕は魔法や戦闘もできるように当時の女神様に送り出されたから、僕は冒険者ギルドを作り、巨大な魔物とも戦ったんだ。
本当は魔物とも仲良くしたかったんだけどね。当時の魔物に理性がなかったんだ。
巨大な街一つを飲みこもうとするスライムや、ブレスで国を滅ぼそうとするドラゴンとも戦ったなあ。
本当に強かったんだよ? 街を守りつつ魔力を練り上げて、大魔法を使うのには苦労したよ。
それからは、人間の国を作ったんだ。
エルグランド王国という当時いた勇者の血筋が国を作り上げたんだ。僕は日本から転移するまでは普通の高校生だったから、大変だったよ。貨幣とか、様々な仕組みを考えるのは苦労した。
それからは人並みに恋愛したし、もうハーレムとか大変だったね。
ユウキ君も経験あるだろう? 皆と平等にしないと拗ねるからね。
当時は聖女様とかも居たし、王女様も僕の嫁だったね。
あ、ユウキ君も同じじゃん。頑張れ~。
それからは魔物が狂暴化している原因を探ったんだけど、魔王とかは見当たらなかったんだ。それが良くわからなくてね。
神聖の森って呼ばれてる、僕が転移してきた場所を探ったら理由が見つかったんだ。
何と、神聖の森って、この星の魔力が噴き出す場所でね。
昔は神々に管理されていたんだけど、魔物がこの世界を荒らし始めるようになってから人々の信仰が薄れて、魔力が溢れちゃって、魔物が更に強くなるって悪循環が起きてたんだ。
だから僕はこの地に遺跡を作り上げて、魔力を使いすぎず、でも調整できるように調整弁の様な施設を作ったんだ。
中身は見たでしょ? スマホの作り方は知らなくてね。一番苦労したよ。
でも同じ機能ができればいいかなって考えてそれなりに形にできたと思う。
古の賢者っぽい事ができたなあって出来た当初はニヤニヤしてたよ。
あ、この世界の魔力が噴き出すところは他にもあって、そこにも遺跡を作ったよ。
日本人じゃないと開かないようにしてあるから、管理してくれると助かる。
ちなみに僕はこれを書いているときはもう百歳を超えているね。
年をとっても見た目は変わらなかったんだよね。だから口調も僕なわけ。
多分、そろそろ天に召される頃かな? って思ってる。
自分の未来が予知できなくなってきたからね。
でも配信者ユウキ君の活躍を未来予知できなくなるのは寂しいよ。
それでは、ユウキ君の活躍に幸あれ。
ここで日記帳は途絶えていた。
あまり自分の活躍については書かれていなかったけど、きっと英雄譚のような戦いがあったんだろう。
静かに黙祷する。古の賢者コウダイは立派に自分の生を果たした。
俺は……そんなに立派なことはできないけど、頑張って自分の周りの人を幸せにできたらいいなと思う。
もうすでにハーレムが築かれているしな。
それにしても、陸稲やスマホ、スーパー銭湯にアニメや漫画が見られる設備があるってことはこの地に街を作った方がいいのかな?
あ、ちなみにこの日記帳を見る時だけは配信を閉じてるぞ。
俺が静かに日記帳を持って部屋を出てくると皆が少し息を呑んだ。
「ユウキ、泣いてる?」
「い、いや……」
ルル達が無言でハグをしてくれる。そうだ、俺は楽しい日々を送っていたけれど、思い出したんだ。古の賢者コウダイ君と同じく、もう元の世界に戻れないことを。
ルル、クリス、カゲ、カレイナ、エメリアが俺の頭を撫でてくれる。
その後はアリアーシュ男爵令嬢やイリス第一王女にもよしよしされた。
「ユウキ、無理をしなくていいんだぞ」
「そうですわ。ここにいる人達は皆ユウキの味方ですわ」
俺は皆にハグされながら、嗚咽を流した。
今の俺には皆がいる。それがたまらなく嬉しかった。
しばらくして、皆にも古の賢者コウダイの書き記した内容を語る。
「凄いですわ。未来予知ができるなんて」
「古の賢者コウダイは没後、千年は経っていると聞いたことがあります」
「神聖の森の遺跡が魔力の調整弁になっているなんて知りませんでしたわ」
それを考えると、神聖の森で育つ野菜や果物がめちゃくちゃ美味しくて、三日で育つのも納得だよな。もちろん神様の魔力で作られた液体肥料のおかげもあるんだろうけど。
俺たちは配信を開き、現代地球の配信や異世界配信の方にも説明をした。
すごいな。古の賢者コウダイはそこまで考えてこの施設を作ったんだ。
未来予知までして配信に必要なスマホを作るなんてとんでもないな。
まさか魔王じゃなくて、神聖の森から魔力が噴き出ているなんて……。
異世界配信の方のコメントも驚いていた。
古の賢者コウダイ様は死して尚、この世界を守ってくれていた!
本当にすごいわ。私、ものすごく感動してる。
次の賢者のユウキさんもコウダイ様みたいにすごいことを為されるに違いない!
皆にもスマホを持たせるべきなのかな。
でもスマホは便利さと犯罪を両方もたらす。
出来たら犯罪はなくしていきたいんだが。
現代地球の配信にそれを言うと皆も考え込む。
うーん。個人所有にして、犯罪歴とかも見えるとかできたらいいけど。
特殊詐欺も増えそうだよな。どうせなら配信と通信以外は出来ない様にしたらどうだ?
それだ! 配信と通信以外は出来ないようにして、この世界のギルドカードみたいに犯罪に使われていないか監視する仕組みにしよう。
最初は冒険者ギルドや商業ギルドに売ってもらって、そこからスマホを広げていこう。
まあ最悪これは広めなくてもいいしな。
スマホの販売はユウキ商会からもしていこう。
今は神聖の森に街を作っていかなくてはいけないしな。
色々とやることが多いな。
頑張っていこう。
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