第三十一話 異世界配信レストランのオープンと神聖の森に帰還
「ステイ」
翌日はルルたちにめちゃくちゃ怒られて、その上で搾り取られた。
「もう出ません……」
「ユウキ、出せ」
ルルが凄むとあんなに怖いんだな。
俺は二度と怒らせないことを誓った。
翌日は俺は使い物にならず、その次の日からオープンとなった。
異世界配信のコメント欄は今日も大賑わいだ。
早く、ユウキさんの料理が食いたいぜ。
メイドさんたちも見たい!
あ~異世界の酒飲みたいぜえ。
オープン日は長蛇の列が並んでいた。
衛兵長のヤンガスさんが列の整理をしてくれていた。
「これは領主様からの命令だからな。全然良いんだよ」
「ありがとうございます。ご迷惑をかけてすみません」
ヤンガスさんはいつも真面目でいい人だな。
バルクの街の人にも好かれているし、本当に人徳がある。
開店と同時に昨日の夜から並んでいたという老年の夫婦が店に入る。
「ふぉっふぉっふぉ。よく妻と配信を見ているんじゃよ。今日は楽しみにしていた」
「夫がいつも配信を見て年甲斐もなくはしゃいでいるんですよ」
「それはありがとうございます。今日は楽しんで行ってください」
老夫婦は白い食パンのトーストとキャベツのポトフを頼んでいた。
会話が弾んでいるのが見える。
てか泣いてる。泣くほど美味いんかい。料理人冥利に尽きるなあ。
お客さんはどんどん入ってくるので、厨房は大忙しだ。
俺も手伝い、料理を捌いていく。
「十五番さんのから揚げ定食持って行って~」
「オーク出汁のラーメンの注文入りました!」
「はいよ!」
厨房で大きな声を出して、受け答えをしているのが珍しいようで、お客さん達は嬉しそうに笑っていた。
コビーさん達や冒険者のヤンガスさんも来てくれた。
ヤンガスさんは奥さん連れだったがめっちゃ美人で驚いた。
「いやー俺は幸せ者だよ! お前みたいな綺麗な嫁さんもらえてよう」
「もう、この人酒が絡むといつもこれなんだから!」
奥さんはヤンガスさんをあしらいつつ、嬉しそうに俺に話しかける。
「以前旦那が言ってた、神聖の森の開拓に向かう話だけど今だったら行ってもいいなあって思うのよね。てか配信って私たちにもできないのかい?」
「開拓村はちょっと人数を調整しないと難しそうなんですよね。配信は今は俺しかできないんです」
「そうかい、でも冒険者が戦う姿を配信で見せるとかもいいと思うんだよね」
確かになあ。そこら辺は遺跡でどうにかならないか考え中だ。
もしかしたら古の賢者の謎技術でどうにかなるかもしれないなあ。
俺は厨房とホールを回りながらオープンを乗り切った。
結局昼から夜まで稼働しっぱなしだった。
お酒もたくさん出たし、料理も普通より高いのにみんな褒めながら食べてくれる。
こういう瞬間って嬉しいよね。
あ、ちなみに露店では人を雇ってぽっぽこーんとコーラとサイダーを売っているよ。
あっちも売れ行きはいいみたいだ。真似してる人もいるけど、塩味とキャラメル味の美味さや良質な油を使っていることもあって全然太刀打ちできてないらしい。
今日の売り上げは金貨八十枚になった。
すげえな、一日で八百万か。オーク肉と牛乳とバターとチーズしか原価のかかるものはないし、他はママゾンで俺が買っているから、それを引いても金貨七十枚くらいだ。
異世界配信のコメント欄は行けて良かった、という声と仕事で行けなかったという怨嗟の声に別れている。
バルクの街の西のアキルノという街と東のババンカという街から来た人もいるみたいだ。俺の配信のことを話したら、それで見れるようになるからな。
他の街のファンや王都にも店を出して! という声は多い。
「何だかんだ、バルクの街に長く滞在してるから、一旦神聖の森に帰りたいな」
「それは良い」
「わらわも森が恋しいのう」
「私もついていきますからね」
「ユウキの行くところは私の行くところ」
「ユウキ様の護衛のためにわたくしも向かいますわ!」
俺の言葉にルル、カゲ、クリス、カレイナ、エメリアが答えてくれる。
感謝の代わりにみんなの頭を撫でるとうっとりとした顔をして俺にしなだれかかってくる。
そこからまた夜の大運動会が始まった。
嫉妬したメイド長のフランシスさんがメイドたちを引き連れてきたときは顔が引きつったけどね。
「私たちも神聖の森に行きたいです!」
『行きたい!』
メイドたちが駄々をこねるのには困った。仕方ないので数人だけ一緒に行くことになった。メンバーはローテーションだ。
「フフフ、メイド長は最強なのです」
「メイド長ばっかりずるい!」
フランシスさんは態度こそあれだが一番仕事ができるのは間違いない。
抜けられるのは困るよ、と言ったのだが、仕事は皆出来る様にならないといけませんと押し切られた。
「まあ、転移魔法ですぐに行ったり来たりできるからいいか」
「そうですよ」
『ぐぬぬ』
勝ち誇ったフランシスさんと他のメイドの顔が面白かった。
「じゃあ、神聖の森に転移するか。あ、その前にコビーさん達にも聞かないとな」
俺はコビーさん達がどこにいるか冒険者たちに聞いてみたが、依頼に行っているとのこと。まあ今回は仕方ない。
俺は転移魔法で、ルル、クリス、カレイナ、カゲ、エメリアとフランシスさんと他のメイドさん合計十人で転移する。
少しの浮遊感で俺たちは神聖の森の拠点に転移する。
『ワ、ワン! ご主人様達が帰ってきたワン!』
「お~コボルト達元気にしてたか?」
「元気だったワン! でも食料がほとんどないワン」
「それは危なかったな。スラとライムも元気そうだな」
スラとライムはプルプル震えながら俺に体当たりしてきた。
寂しかったのかな?
『ユウキ、野菜いっぱいある』
『私たち。いっぱい草取った』
「おーありがとな」
キッチンに行くと、山積みの野菜が置かれていた。
急いでアイテム冷蔵庫を作り、野菜を保存する。
そうだな。水で冷やしたスイカでも食べるか。
「みんな、スイカ食べるぞ!」
「スイカ? 野菜を生で食べるのですか?」
クリスが困り眉で首を傾げる。可愛い。
現代地球の配信でもその仕草にやられた人は多い。
ヤバイ、ルルちゃんファンなのにクリスファンになる~。
知っているか? 推しは何人いてもいいんだぜ?
ユウキさんの周りは美人と美少女が多すぎるんだよね。
そういえばグングニル男爵の孫と会う話はどうなったんだ?
俺は目を背けていた事実を突きつけられる。
異世界配信のコメント欄を見ると、グングニル男爵がいるではないか。
ユウキ殿? わしの孫といつ会ってくれるんじゃ?
ユウキさん、私はずっと待っていますのに!
ユウキさん、絶対忘れてたよね。
わしの城に来るのはいつなのじゃ?
くう、これ以上女性が増えたら物理的に死ぬ。
王様はちょっとステイ。
私、良いことを思いつきましたわ!
何じゃ?
神聖の森に行けばいいのですわ!
それは良い案じゃ!
リア凸じゃん! 現代地球の配信もそれに盛り上がる。
やっちゃえ!
またカオスになるし、ルルちゃん達が怒るんじゃないか?
ルルたちは笑顔だ。え、なんで?
「ユウキは甲斐性あるから大丈夫」
い、いや甲斐性ないから! やめてね!
俺は必死で抵抗するがダメだった。
もう諦めて、スイカを切る。
次話、スイカと神聖の森でのんびり過ごす。
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