第三十話 プレオープン、大成功!
から揚げ食べたくなるw
「それではお召し上がりください」
「では私から頂こう」
グラリア伯爵がフォークとスプーンでから揚げにフォークを刺す。
カリッ。
「何だこの、弾力は⁉ こうしてはおれん! 頂くぞ!」
グラリア伯爵がから揚げにかぶりつく。
カリッ。ジュワ~。
揚げたから揚げの肉汁が口の中に溢れ出しているだろう。
「美味い! 何だこの歯ごたえと濃い味は⁉ これがマヨネーズとやらの力か⁉」
「そうですね、冷えたビールもいかがですか?」
「そうだな、うん? すっきりとしたのど越しと苦みが心地よい! ここは天国か?」
ああ、また天界を見てる人が出ちゃったよ。
「お米と一緒に食べると美味しいですよ?」
「ふむ、何? から揚げのジューシーさと白い粒粒としたお米が合わさって最強に見える」
この人たち、サラッとネットミーム入れてくるよね。
「こちらは汁物なのだな。ああ、心地よい。から揚げの油を口の中で洗い流してくれる」
最後には漬物をポリポリ食べて、無言で頷くグラリア伯爵。
完全に墜ちたな。
「わ、私も頂くんだな。私は箸を練習してきたんだな」
俺が配信で箸を使っているのを見て、箸ブームがバルクの街で起きているらしい。
雑貨屋でもユウキの配信で使われている箸という売り文句で売られていた。
俺の配信がここまで影響を与えるとは思わなかったなあ。
まずオーガス子爵はレンゲでスープを味わう。
「美味いんだな! こんなコクと旨味を感じるスープは初めてなんだな!」
「麺とスープを絡ませて食べると美味しいですよ」
本当は音を立ててすすってほしいのだが、貴族マナー的にはアウトらしい。
「細くてかたい麵とオーク出汁のスープが絡んで、とっても美味いんだな。これは毎日食べてもいいんだな」
「いや、毎日食べると、太るので……」
「それは残念だな」
オーク肉の角煮やメンマも食べて、食感を楽しむオーガス子爵。
「誇張なく、今まで食べた料理で一番美味いんだな! ユウキ殿は天才なんだな」
「いえ、元の世界であった料理ですので」
「謙虚なところもいいんだな」
最後に味玉を味わっているオーガス子爵。
え、もう食べちゃったの?
グングニル男爵は我慢しきれなかったのか、もう食べていた。
「なんじゃあ、このオーク肉は! 話には聞いておったが本当に臭みがない。肉質も柔らかくて口の中で溶ける。それでいて肉の味はすごいのう」
「お褒めいただき光栄です。下処理をした、オーク肉は本当に美味しいんです」
オークって万能食材じゃないかって思う。
これからオークは更に消費されていくだろう。
「このオーク肉のホワイトグラタンも別格じゃ! ああ、戦場で固くて臭いオーク肉を食べていたころを思い出す。時代は変わるものじゃのう……」
終いには泣き出すグングニル男爵。赤ワインも勧めると更に泣き始める。
「美味いのじゃ。オーク肉やグラタンとやらに本当に合う。ユウキ殿、わしの孫を娶らんか? 気は強いが、美人で剣も強い」
「すみませんが、それはちょっと……」
なんで食レポから孫を娶る話になるんだよ。
グングニル男爵は、騎士から戦乱の世だった時代を剣一つで成り上がったらしい。
「ユウキ殿も剣を振らんか?」
「い、いえ、私は荒事はからっきしでして」
魔法も剣一振りで斬ってたらしい。すごいな、グングニル男爵。
「最後は私ですね。まずはかつ丼から……むう! とろっとろの卵とオーク肉のカツが口の中でマリアージュされる! こんなに美味いとは!」
異世界配信のコメント欄は食べられないことを嘆く声が多かった。
もう嫌じゃ、わしは王をやめるぞ!
陛下が乱心だ! 執務室に向かえ!
わし、王じゃよ⁉ どんな扱いなんじゃ!
検索、ユウキさんを堕とす方法。
現代地球の配信はそれを見てゲラゲラ笑っている。
最後のコメントしたの、マーマリア侯爵⁉ なんで検索とか知ってんの!
はあ、異世界配信のコメント欄見ながら酒飲むの好き。
ユウキさんが用意したお酒は大体手頃に買えるからいいよね。
わかる。仕事の合間とかずっと見てるもん。
エルグランド王国の王様もマーマリア侯爵も親しみやすいから本当に良い。
俺の配信はもはや日本だけじゃなくて、海外の人も見てるらしい。
英語のコメントも流れてるし、同接数は五十万人越えてるよ。
たまにユウキさん、うちの事務所に所属してくださいってコメント来るんだけどもう異世界だからそういうの無理なんだよね。
俺がコメント欄に唖然としているとカンカール様はオークのモツ煮を食べて、ほっこりとしている。
「これは! ぷりっぷりの弾力と煮込まれた味が相まって、とても美味い! 何ですかこの料理、めちゃくちゃお酒に合うじゃないですか!」
「そうですね。日本酒をお出ししてあげて」
「かしこまりました。オーダー日本酒!」
日本酒がテーブルに運ばれてくると、三人の注目が集まる。
「私もいいか?」
「わ、私も欲しいんだな」
「わしも欲しい!」
「ええ、構いませんよ」
俺は酒は飲まないんだが、配信で聞いた時に一番評判が良かった日本酒だ。
「これは獺祭、純米大吟醸です」
「だっさい?」
「すみません。私も名前の由来は知りません」
透明なグラスに注がれた日本酒をじっと見る四人。
恐る恐る口に入れた瞬間、皆びくっとする。
「何じゃ、この香り高くて飲みやすい酒は!」
「一番なんだな! この日本酒が今まで飲んだ酒で一番おいしいんだな!
「先ほどの赤ワインも美味かったがそれを越えてくるとは……」
「これは国宝ですか? ユウキさんの居た世界の国宝級のお酒では?」
「いえ、値段は高いですが庶民でも買える酒でしたよ?」
「これを庶民が……」
ああ、四人ともお酒が好きらしく、これをどうにかしてこちらで作れないか話し合ってる。
「これは原料は何なのだ?」
「グラリア伯爵、それは米からできています」
「何だと⁉ 先程食べた米からできた酒か。むう、米を作っている国は……東の方で栽培されていると聞くが」
「カンカール宰相、どうにか米を輸入できませんか?」
「確かに米は新たな主食になりますね! ふう、仕事がまた増えてしまった」
その後は貴族の愚痴大会になる。
「私の妻がユウキ殿の配信のファンでな。まあ私もそうなんだが、早く会わせてくれとせがむのだ」
「わ、私はユウキ殿のぽっぽこーんを食べてからのファンなんだな」
「ユウキ殿、ワシの孫は美人で可愛くて、自慢の孫じゃぞ?」
「はあ、最近王様のサボり癖が凄くて……あれで仕事ができるのがむかつくんですよね」
もう無礼講ってレベルじゃないよ。終いにはカンカール宰相はコメント欄の王様と喧嘩を始める始末。
もう俺いなくていいよね?
そっとテーブルから遠ざかろうとすると、カンカール宰相が目ざとく見つける。
「あれ、ユウキさん、ほとんど酒を飲んでないじゃないですか。メイド達、ユウキさんにも日本酒を!」
い、いや俺は酒は強くないんだが……。
絡み酒は終わらず、べろんべろんになるまで飲まされる。
四人の貴族たちは、満足そうに礼を言って、帰って行った。
「素晴らしいレストランだ。これなら繁盛するだろう」
「美味しかったんだな。次は違うメニューにするんだな」
「ユウキ殿、後日わしの屋敷に来なさい。孫を紹介するからのう」
「ユウキさん、王都にも来てくださいね。一度来ていただければ何度でも来れますからね」
カンカール宰相は転移魔法の事をばっちり知っていた。
まあ配信見てれば分かるよな。
俺はふらふらであいさつした後、住居スペースで横になろうとしたのだが……。
「ユウキ様、お疲れさまでした。ここからはメイドたちの慰労会ですよ♡」
ああ、逃げられない……。
翌日カンカンに怒るルルたちの顔が見える。
俺は疲れているだろうからと配信を切らされていた。
これは孔明の罠⁉
地獄は続くよ、どこまでも。
本当に天国が見えました。
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