第二十四話 聖女エメリアはユウキの料理を食べたい
お前はもうすでに……
「やっと会えましたわね。ユウキ様」
「い、いや~俺も会いたかったぜ」
俺は棒読みでエメリアに返事を返す。
「途中、ワイバーンやオーガ達に襲われましたが、ワンパンで沈めました」
「この聖女、できる」
エメリアのツッコミどころが多すぎる発言にルルは警戒する。
あれだよね? 異世界ジョークだよね?
「おお! セクシーなお姉ちゃん、とっても美人だな。今晩、一緒にどうだい?」
何かガラの悪い冒険者がエメリアに下心丸出しで話しかける。
眉をひそめて、冒険者を睨みつけるエメリア。
「なんだあ? 気が強そうじゃねえか。そこのひょろっとしたやつなんて放っておいて、俺と遊ぼうぜ」
どうやら俺の事を知らないらしい。ルルとクリスとカゲとカレイナが物騒なオーラを出している。
「……なさい」
「ああ?」
「黙れ、クズ」
エメリアはガラの悪い冒険者に悪態をつく。
そ、そんなに怒らなくても。
「お前はハイシンシャ、ユウキ様を愚弄した。それにこの広場の空気も読めないやつが話しかけないでほしい」
広場の人たちも、その冒険者を睨みつけている。
「ああ? こんな所で料理つくってる奴のどこが偉いんだ。ハイシンシャ? 知らねえよ!」
「二回、愚弄しましたわね」
冒険者はギルドの酒場から出てきて酔っているようだ。
俺はここの空気を収めようとしたが、ガラの悪い冒険者が俺に向かってメンチを切ってくる。
「三回目」
「もういい! おい、姉ちゃん行くぞ!」
ガラの悪い冒険者がエメリアに手を伸ばした瞬間、エメリアがシャドーボクシングをする。
「げふっ!」
「一回目」
「ぐおっ!」
「二回目」
「うええええええ!」
「三回目」
何とエメリアが空気を殴った瞬間、ガラの悪い冒険者が顔を凹ませて、殴られる。
瞬時に三回、男に衝撃が走り、最後はエアアッパーで上に飛ばされて倒れた。
「お前はもうすでに死んでいる」
いや、世紀末漫画の主人公みたいなことを言わないで欲しい。
でもすごかった。距離を取っているのに、打撃が当たるのはチート能力だ。
空気を殴りつけて、衝撃を飛ばすって本当に聖女?
「三回、ユウキ様の事を愚弄したので、三回殴りましたわ。ああ、体の骨が砕けているかもしれませんが、私は知りません」
聖女エメリアのすごさを見た、街の人たちから歓声が上がる。
「聖女様、かっこいい!」
「ひゅ~! ユウキさんとお似合いだぜ!」
い、いや、こんな武闘派聖女様怖すぎるんですけど……。
俺は異を唱えようとするが、何かの圧力を感じる。
「ユウキ様はマリア様より遣わされた、ハイシンシャという名の神子ですわ。ユウキ様を害するものは私が全て沈めます」
すっごい笑顔で俺の方を見てる。何かヤンデレ属性入ってそう。
「ちょっと待った。ユウキはルルたちの物」
ルルが俺を守るように前に出て、エメリアの視線を遮る。
おいおい、ヤンデレとヤンデレが戦ったらどんなことになるんだよ!
コメント欄が正妻戦争だ! と盛り上がる中、俺は間に入る。
二人とも素手での取っ組み合いを始めそうな雰囲気出してるからな。
「そこまでだ。エメリア、俺はそんな大した人じゃない。ルルもやめなさい。二人とも、喧嘩したらもう料理つくらないぞ」
「うう、それは困る」
「ユウキ様、それは困りますわ!」
ルルとエメリアの表情が一変し、絶望に変わる。
「分かった。エメリア、友達!」
「ルル様、仲良くしましょう!」
二人ともいい笑顔で握手する。でも、めっちゃ力を入れて、握り潰そうとするの見えてますけど……。
「おい、カゲとカレイナ。どうにかしてくれよ」
「あれは乙女の戦いじゃ。どうにもできん」
「私もあそこに混ざりたい。でも料理食べるから、やっぱりしない」
クリスはため息をついている。
まあ折角来てくれたんだし、エメリアにも料理を振舞うか。
「すごい! これが包み焼きピザとオーク肉のホワイトグラタン!」
配信で見ていて、とってもおなかが空いているそうだ。
まあ、旅先では固いパンと干し肉くらいしか食べれないみたいだからな。
エメリアは涙を流しながら、包み焼きピザとホワイトグラタンを食べる。
お上品に食べているところは、聖女っぽいんだけどな。
そうこうしているうちに、衛兵が来て先ほどの冒険者を捕らえてくれた。
後、すごいシックなデザインの馬車が広場にやってきた。
商業ギルドの支部長、バンズさんが顔色を変える。
「あ、あの方は⁉」
え、そんな偉い人? もしかして……。
馬車から出てきたのは黒い生地に金色の紋様が入った貴族服を着たイケオジだった。
背が高く、ちょび髭が良く似合ってる。
「ユウキ殿! いや、森の賢者でありハイシンシャのユウキ様! 会いたかったぞ!」
「え? どなたでしょうか……?」
「これは失礼した。バルクの街を治めるグラリア・フォン・バルクと申す。エルグランド王国より伯爵の爵位をさずかっている」
あ、さっきコメント欄にいたもんね。きちゃったんだ……。
「これは無礼を申しました! グラリア・フォン・バルク様を知らずに申し訳ありません」
広場の人たちは一斉に膝をつき、頭を下げるので、俺も倣って下げる。
「良いのだ。普段は気軽にバルクの街に出てこられないが、今日ばかりは我慢ができなかった。グラリア伯爵と呼んでくれ」
「そ、そうでしたか。わかりました、グラリア伯爵」
「ユウキ様」
「ちょ、ちょっと待ってください。私の事を様付けするのはやめてください。どうかユウキと呼んでください」
俺は慌てて、グラリア伯爵の言い方を訂正する。俺は平民なのに貴族より偉いってことになっちゃうからな。
「むう、仕方ないか。ではユウキ殿と呼ぶ」
「はい」
「私にも包み焼きピザとオーク肉のホワイトグラタンを作ってもらえないか?」
「勿論です!」
俺は出来立ての料理をグラリア伯爵にお持ちする。
座り心地の良い背もたれ付きのアウトドアチェアと、木目調のアルミテーブルを出した。
あ、ついでにぽっぽこーんの塩味とキャラメル味も出しておこう。
ワインとかも出そうかな。
酒を出した瞬間、影が薄かったドワーフのドワッフさんが声を出す!
「ぬ! ワインじゃな! どんな奴だ」
「これは私が来た世界のワインですよ」
確かこれは……コンビニでも売られているスパークリングワインだ。
サンタ・ヘレナ・アルパカ・スパークリング・ブリュット。
グレープフルーツと柑橘の香りとふくよかな口当たりが特徴で、食前酒にいいらしい。
「ふむ。わしも飲みたいのだが」
「ダメです。今は我慢してください」
「仕方ないのう」
ドワッフさんに出すのは後だ。今はグラリア伯爵をおもてなしせねば。
「食前酒に最適みたいです」
「ふむ、飲ませてもらうか! むっ! 何だこのすっきりとした香りは! しかも、口の中で何かが弾ける。めちゃくちゃ美味いぞ!」
よかった。もっと高いワインを出すべきか迷ったけど、評価の高い奴にしたんだ。
俺はそんなに酒は飲まないからサイトのおすすめに従ってよかったよ。
コビーさん達やドワッフさんや意外にもカレイナが飲みたそうにしてるが、我慢してもらう。
「こちらが包み焼きピザとオーク肉のホワイトグラタンです。熱いので気を付けてお召し上がりください」
「頂こう。おお、中のトロっとしたチーズと赤いソースが合う! 何だこのソーセージは! 味もさることながら、食感もいい!」
包み焼きピザの食レポが美味すぎる。
俺もおなかすいてるんだよね。試食はしたけど作るばかりで食べてないんだ。
「オーク肉のホワイトグラタンは、ホワイトと言いながら茶色だが……これはクズ粉から作ったせいかね?」
「はい。ですが茶色い小麦粉は俺の居た世界では全粒粉と呼ばれ、栄養と香りが高いことで有名でした」
「なるほどな。おお! 香りがいいソースととろけるオーク肉。そしてこれはなんだ! もちもちしてとても美味しい物が入っている」
「それはマカロニパスタですね。後、チーズをご存じでしたか?」
俺はチーズには驚いていないことに疑問を抱いた。
街の人はチーズを知らなかったからな。
「貴族だからな。だがチーズの作り方はこれまで秘匿とされていたため、食べたことはそれほどなかった。レシピ登録もしたのだろう? これからバルクの街は更に栄えるだろう。礼を言う」
「いえ、私ができることをしたまでです」
次話、グラリア伯爵と対談。
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