第十九話 野菜の収穫とハンネスの企み
ミートソースうまうま!
あっという間に三日が過ぎた。
そろそろバルクの街に行こうとしていたので、ぽっぽこーんの補充や新商品を考えていた。
屋台の味と言えば、やっぱりたこ焼きとお好み焼きだ。
それを俺が建てた家の台所で異世界配信には映さずに、みんなに振舞っていたのだが、これがものすごく好評だった。
やっぱり現代日本の味覚は美味い。
これが受けなかったら、何が受けるというのだ。
その間にコビーさん達の家も建てた。
本人たちは恐縮していたが、俺からしたら建材を集めればなんていう事はない。
立派な一軒家ができたので、コビーさん達に使い方を教えた。
だが料理が得意な人がいないので、引き続き俺が飯を作ることになった。
「ユウキの飯が食べられないのなら、こっちに来た意味ねえからよ!」
コビーさん談である。
カゲは俺たちの夜の運動会に混ざるようになった。
あの高身長の褐色狼耳のモデル体型のカゲが潤んだ瞳でこっちを見るんだ。
「ユウキはわらわを捨てるのか?」
断れるわけがない。
「さあそろそろ野菜の収穫をするぞ!」
『おー!』
皆も嬉しそうにしている。
スラとライムは雑草だけを溶かして、野菜の世話をしてくれた。
野菜は好きなのかもしれない。
「じゃあまずはトマトからだな」
「赤い宝石みたい」
ルルの言葉にみんなが確かに頷く。
「結構実ったから、一個ずつ生で食べてみてよ」
「え? 野菜って生で食べてもまずいだけだぞ?」
コビーさんの一言に俺以外の全員が頷く。
俺は先に、トマトをもぎ取り、皆の前でかぶりつく。
「甘ッ! 何だこれ、後から少しの酸味が来て丁度良いうまさだ!」
「ユウキが食べるなら私も食べる」
「ルルも」
カレイナとルルが恐る恐る、トマトにかぶりつく。
どうやら異世界にはトマトがないらしい。
そりゃあ、警戒するよな。
コメント欄は収穫祭という事もあって、現代地球と異世界の民のコメントが混ざり合って大盛り上がりだ。
なんたって、異世界配信の方に、王族やバルクの街の領主が見ているとのうわささえある。
大商人が、領主様に俺の配信の事を話したところ、知っていたというのだ。
しかも、結構な熱量で俺のことを話した後、王族の方たちも知っているらしい、と教えてくれたというのだ。
俺は気づかないうちにこの世界に大きな影響を与えているのかもしれない。
「ん~! ユウキ、この果物、甘くて美味しい!」
「すごい、ユウキの果物、本当に美味しい」
「それは果物じゃなくて野菜だよ。まあこんなに甘いと確かに果物だと思うよな」
カレイナとルルが頬を緩ませて幸せそうにトマトを食べる。
すごいよな。俺は種まいて、液体肥料を撒いただけなんだけどね。
他にもキュウリやナスやネギ、玉ねぎ、スイカなんかも収穫した。
きゅうりはともかく、ナスやネギ、玉ねぎにまでかぶりつこうとするのには驚いた。
「皆、そっちの野菜は、料理で美味しくなる野菜なんだ。今は我慢してくれ」
コメント欄は楽しそうに現代地球の視聴者が異世界の視聴者に知識を教えている。
スパチャも結構溜まってきたぞ。一時期は百六十万円くらいまで落ち込んだが、今は五百万円くらいまで溜まってる。
ただ、夜の配信がないことに皆怒ってるんだよな。
俺は丁寧に説明して、BANが怖いからヤンチューブではできないと言ったのだが、成人向けサイトで映してやればいいというではないか。
異世界の視聴者は首を傾げていたが、一種のAVだな。
だが、そっちの方に配信を持っていくつもりはないのでしていない。
俺は収穫した野菜を洗って、何を作るか考える。
決めた。メインは今日取れたトマトを使ったミートソーススパゲティにしよう。
トマトをソースにするのはちょっとめんどいけど……まあ美味しい料理を作ればみんな喜ぶからな。
まず玉ねぎと神聖の森で取れた食用可のシメジの様なキノコとにんにくをみじん切りにする。トマトはざく切りで置いておく。
オリーブオイルを熱して、にんにくを炒める。
「何だ、この匂い! ニンニンか⁉」
「あれって薬に使う物じゃないの?」
コビーさんとフレイさんが驚いている。
どうやら異世界ではにんにくをニンニンと呼ぶらしい。
俺の頭の中で忍者の卵が活躍するアニメが浮かんだ。
香りが立ってきたら、玉ねぎとあいびきミンチとナスを一口大にしたものを入れて炒める。ナスもこの料理に合うだろうと考えてだな。
玉ねぎが透明になってきたら他の野菜を入れて炒める。
なじんだらトマトも入れる。
「血みたいに赤い料理!」
「でも美味しそうじゃの」
カレイナとカゲがうっとりした目で料理を見る。
トマトから水気が出るまで炒めて、コンソメキューブ、ミックスソルトを入れてコンソメキューブがしっかり溶けるまで煮る。ナツメグを入れるのもいいぞ。
別の鍋で沸騰させていたお湯にパスタをだばあと入れる。
いい感じの硬さになったらスキレットで作っていたミートソースに絡めていく。
うん、良い感じ。
俺は味見をすると、現代地球のトマトより甘みとコクが強く感じた。
異世界配信の方ではバルクの街の料理人が固唾をのんで見守ってるらしいな。
どうやら、俺が料理を作るたびに街の料理人がそれに挑んで日夜研鑽しているらしい。
ただトマトがないとミートソースは作れないよな。
バルクの街に行くときにトマトを持ってきてくれと懇願されたが、まだ畑が狭いのでそこまで量はない。
ちなみに異世界配信の方は画面が見える人がこれはユウキの配信だ、というと他の人にも見えるようになるらしい。
何かねずみ講みたいじゃない、それ?
皆は固唾を飲んでミートソーススパゲティを見ているので盛り付ける。
「お代わりはないよ!」
『え~!』
不満を言いながらも、皆はフォークにスパゲティを巻き付けて、美味しそうに食べている。
「ユウキはこの世界一の料理人!」
「ルル、俺はみんなが知らない料理を知ってるだけだよ」
ルルは口に赤いソースをべったりとつけて食べている。
ティッシュで拭いてやると嬉しそうに微笑む。
「これは本当に美味しいです! あと、ぽっぽこーんも含めて商業ギルドにレシピを登録して売った方がいいですよ?」
確かにそうだよね。異世界配信の方でバルクの街で粗悪なぽっぽこーんが売られていると聞く。
今度、レシピ登録をしに行くか。
食後にまったりとしていると、異世界配信のコメントで悲痛なコメントが出た。
ユウキさん! 商業ギルドのバンズだ! ハンネスブルグ商会のハンネスはレシピをユウキさんの物ではなく、自分たちのレシピだと主張している。
何だって⁉ それはまずい。でも俺はどうしたらいいんだ?
至急、バルクの街に来てくれ!
次話、バルクの街に急行!
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