第十話 「配信」スキルの誤魔化しと勝利の美酒
私もぽっぽこーん食べたいw
「ユウキ! この道具何⁉」
俺はルルの方を向いてごまかす方法を考える。
他の人たちも俺の方を見ている。
まあ事前にコメント欄と相談しておいてよかった。
「俺のスキル『配信』には真実を記録して映し出す能力があるんだ。こっちの白い箱はそれを増幅させる力があるのさ」
さっと高輝度のプロジェクターをアイテムボックスにしまってこともなげに言う。
ルルはジト目で俺の方を見ている。
嘘はついてないが本当のことも言ってないからな。
きっと獣人の鼓動を聞く能力で本当か探っているんだろう。
実は、俺が配信を見ていると言っていない時にウソをついていることをルルは知っていたらしい。鼓動の音を聞き分けていたのだとか。
「ルル? これは本当なの?」
クリスがルルに向かって言う。あれ、俺信用されてない?
「……本当かウソかわからない。でも鼓動は変わらなかった」
街の人と冒険者たちは歓喜の声をあげている。
すげえ! 神様がユウキ様にこの力を授けたに違いない!
真実を映し出す能力なんて聞いたこともないわ!
ホルモンが捕まってせいせいしたぜ!
危ない、嘘の中に本当の事を混ぜておいてよかったぜ。
スキル『配信』は俺にしか使えないことを告げておく。
ホルモンはきっと街の人にも迷惑をかけていたのだろう。
いそいそと行商に戻ろうとすると、商業ギルドの支部長と冒険者ギルドの支部長が来た。
商業ギルドの支部長はバンズさんで冒険者ギルドの支部長はバルガスさんだ。
バルガスさんはヤンガスさんの弟で元冒険者らしい。めっちゃ体格が良くて強そうだ。
バンズさんは少し年を取ったおじいさんだった。
「ユウキさん、ご迷惑をおかけして申し訳ない。ホルモンはこちらでは手が出せずに困っていたんじゃ」
「冒険者ギルドからも礼を言わせてくれ。ホルモンの件はヤンガスが余罪を追及してくれるだろう」
スキル『配信』についても聞かれたので、同じように話す。
「むう。冒険者ギルドで登録したときに「ハイシンシャ」とステータスに出たというのは本当だったようじゃの」
「これがスキルじゃなければ、街での裁判の時に使えそうなのになあ」
二人は少し残念そうに語る。まあ、「配信」ができるスマホを広めてもいいのだが、まだ時期は早い。
「ホルモンが迷惑をかけた件は奴の財産から賠償させるぞい。恐らく金貨三十枚ほどになるじゃろうな」
「奴は余罪が多いだろうから、打ち首は待ったなしだろう。ルルが獣人狩りに襲われた件にも関わっているだろうしな」
とにかく、この件が収まってよかった。
俺は笑顔で行商へと戻る。
「ワンタッチテントって知ってるか? このテントは空中に放り投げるだけで組み立てられるんだぜ!」
冒険者のコビーさん達が笑顔でお客の冒険者たちに勧めている。
何円だ? と真剣に聞いているお客さんも多い。
ワンタッチテントは大銀貨三枚だが、これなら安いと買っていく人が増えた。
もう十組は売れているだろう。寝袋もルルが実演している。
「これは本当に暖かい。春なら丁度良い気持ちよさ」
「ほう、ルルちゃんのおすすめなら買わざるを得ないな」
「これで毎晩ユウキと寝ている」
あ、ルルが余計なことを言った。
ギギギと首がこちらを向く。
何故かクリスさんも冷たい目線を向けてくる。
「お、俺は知らない」
「嘘。いつも一緒に寝てる」
「ルルちゃん、男の人と一緒に寝るのは危ないですよ?」
「平気、ユウキならいいもん」
周りにボキボキと拳を鳴らす冒険者たちが集まる。
暴力反対! 俺はルルの後ろに隠れる。
「ユウキさん、ルルは小さいとは言え、成人してるんですよ?」
「わ、悪かった。もう一緒に寝ない」
「そんなの、い、や!」
何故かルルが駄々をこねだす。
ルルは俺に抱き着いて、泣き出す。
「むう、仕方ないです。私もルルちゃんがユウキさんに食べられないように一緒に寝ます」
「え?」
「こ、これは違うんです! その、ユウキさんがホルモンから私を救ってくれたお礼とかじゃなくて!」
「あれ、商業ギルドにもう戻るんじゃないの?」
「あら、ユウキさんは用が済んだら、女を見捨てるタイプなのね?」
何故か金髪ロングのクリスさんがきっと睨みつけてくる。
でも、商業ギルドにはもう戻れるんじゃ?
「あんなところ、戻りません! 私はルルちゃんがユウキさんに食べられないように、一緒に行商をします!」
「それはありがたいけど……俺、神聖の森にそろそろ戻るよ?」
「良いんです!」
どうやらクリスさんがこれからも手伝ってくれるみたいだ。
計算もできるし助かる。
俺はクリスさんに礼を言うと、クリスさんが頬を膨らませたまま、俺に一言いう。
「さん付けじゃなくて、クリスって呼んでください」
「えっと……クリス……?」
「そう、それでいいんです!」
周りの冒険者たちはクリスまで奪うのかと、怒り心頭だったがため息をついたコビーさん達に収めてもらえた。
「ユウキは、神聖の森に住んでんのか? 俺たちも一緒に行こうか? 流石に戦える人間がルルちゃんだけだと危ないぜ?」
「それは嬉しいですけど、お金は払えませんよ?」
「まあそうだよな。だがユウキさんとこの商売手伝うのが楽しくてよ!」
コビーさん達は神聖の森に住むことに乗り気なようだ。
神聖の森は勝手に住んでもいいのかと聞いてみると……。
「ああ? 神聖の森は名前は大層だが結局は森。誰の物でもねえ。もし開拓に成功したら領主様から村として認めてもらえるぜ?」
「それはいいですね!」
俺たちはそんなことを話しながら、ぽっぽこーんとコーラとサイダーを売りさばく。
もう二百組近い所は来ているだろう。金貨をチャージするのが楽しみだ。
最終的にぽっぽこーんは五百組くらいのお客さんに売れた。
これからしばらくは森に戻ると告げるとお客さんに悲しまれたよ。
剣とフォークの宿に戻ってから、手伝ってくれた冒険者たちとクリスさんとルルと俺で祝杯をあげる。
「エールが美味い!」
「ポルコ! この肉なんだ⁉」
「これはユウキさんが教えてくれたハンバーグという料理だぞ」
「すげえ、ユウキは料理もできるんだな!」
ハンバーグはポルコさんに余った黒パンで何か料理が作れないかと聞かれて話したものだ。
黒パンからの粉で作れるとは知らなかったが、若干パサついているものの美味しく焼けている。
冷やしながら肉をこねるとか両面を強火で焼いて後は蒸すとか、基本的なところを教えただけだぞ。
「ポルコさん、ミックスソルト味も行けますが、これに合うソースは無限にあるんですよ!」
「そりゃあいいな。またこの宿に来な!」
ルルも美味しそうに食べている。あ、スラとライムは段ボールとかプラスチックばかり食べてるぞ。ハンバーグもあげたんだが、そっちの方がいいらしい。
「コビー達はユウキについていくのか。いいなあ」
ガンドさんが愚痴をこぼしている。
「ガンドも来いよ! 毎日ぽっぽこーんが食べ放題だぜ!」
「コーラやサイダーもあるしな!」
ガンドさんは嫁がいるらしく、すぐには決めれないと言っていた。
いつでも来てくださいと言っておいた。
またバルクの街には来るからね。
クリスさんはまだ職員用の宿があるのでそこに泊まっている。
ルルちゃんに手を出したら……とすごんでいたのは怖かった。
部屋に戻り、銀貨や大銀貨をすべて俺のママゾンにチャージする。
「? お金消えた!」
「俺のスキルにチャージしたんだよ」
残金の内訳はぽっぽこーんのミックスソルト味が三百組で占めて銀貨九百枚。キャラメル味が二百組で銀貨千枚。合わせて金貨十九枚。
ワンタッチテントは大銀貨三枚で三十組売れたから金貨九枚。寝袋は大銀貨一枚で五十組売れて 金貨五枚。すべて合わせると金貨三十三枚だ。
日本円に直すと三十三万円だな!
ものすごい大金だ! スパチャは三百万円を突破している。
ざまあをしたタイミングでめちゃくちゃ増えたみたいだ。
プロジェクターとポータブル電源で十五万円は消えているが誤差みたいなものだ。
いや、スキルを買うのに六十万円飛んでいるから二百二十五万円だ!
元々持っていた金貨一枚と大銀貨九枚の内、大銀貨五枚は依頼達成料として渡している。
占めて金貨三十四枚と大銀貨四枚だな。
ルルに話すと目が点になる。
「ぽっぽこーん何円分?」
それはわからないけど、いくらでもあげるぞ、と言うと嬉しそうな顔をする。
お互いを生活魔法のクリーンで綺麗にすると、ルルは寝袋を出してきてポンポンと叩く。
「ユウキ?」
「い、いや、今回はお互い離れて寝よう」
「なんでそんなこと言うの⁉ わ、わかった。ルルもお金払う」
アイテムボックスから金貨を取り出そうとするルルを止める。
まるでママ活じゃないか。
コメント欄ではヒモ男の極みとか言われてる。
おかしい、俺は自分で稼いだはずだ。
「わかった、わかった。一緒に寝るから……」
ルルは安心した顔で寝袋に入るよう促す。
明日クリスに怒られるぞ……。
俺はルルに抱き着かれて、悶々としながら眠る。
深夜、ルルがあそこを触りだすと、富士山が出来上がったが何とか我慢したという事だけ伝えておく。




