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第一話

「今だっ、ラセラ!」

「おう! 喰らえっ、二段斬り(ダブル・スラッシュ)!!」


 オレの剣はうなりを上げ、モンスターのロングテール・ウルフを切り裂いた。

 この技は通常の0.75倍の威力で2回の攻撃を瞬時に叩き込み、およそ1.5倍のダメージを期待できる必殺技。オレの得意技だ。


 オレの名はラセラ。

 モンスターが跋扈するこの世界で冒険者をしている、17歳の剣士だ。


「やったな、ラセラ! 今の奴が最後の一匹だ。今回の討伐依頼も、無事に達成だな!」


 そしてこの前髪を綺麗に切り揃えた金髪の男はイーヤサーサ。槍を使った戦法を得意とする槍戦士で、オレと共に故郷を飛び出してきた同い年の幼馴染だ。


「サンキュー、イーヤサーサ。おまえのサポートのおかげだよ」

「フッ、任せてくれ。長い付き合いだ……ボクはきみの呼吸を知り尽くしている。どんな時だってきみの動きに合わせてみせるさ」


 そう、こいつとは昔からずっと一緒に行動している。一流の冒険者になるというのも、オレたちの共通の夢だった。そのため幼い頃から共に戦闘の特訓を続け……今のようなコンビネーション攻撃を繰り出すことが出来るようになったのだ。

 まったく、頼れる相棒だぜ!


 そして、オレたちには仲間がもう一人。


「お見事でしたよ、ふたりとも。息の合った連携に、思わず見惚れてしまいました」


 彼女の名はセイエアさん。オレたちのパーティで回復術師(ヒーラー)をしてくれている紅一点で、年齢は18歳と言っていた。オレたちよりも1コだけ歳上ということだ。


 彼女とはまだパーティを組んで日も浅く、それほど深く知っているわけでもないのだが……


「フッ、これもボクのサポート力があって成せること。モンスターにとどめを刺したのはラセラですが、今回のMVPはこのイーヤサーサといって差し支えないでしょうね」

「まあ。うふふ」


 イーヤサーサの活躍アピールを、セイエアさんは柔らかな笑顔で受け流す。

 ……美しい。


 そう、セイエアさんは美人なのである。

 目鼻立ちははっきりとしていて、それでいて穏やかな表情はいつ如何なる時も崩れることはなく。緑色の艶やかな髪色は目にも優しい。冒険者でありながらメイクもバッチリ決まっていて……さらには潤いのある桜色の唇から放たれるその美声は、それだけでオレたちの心を癒してしまいそうなほどに透き通っている。


「あっ、ラセラさん。怪我をしていますよ」

「えっ」


 彼女がめざとくオレの怪我に気づいた。

 そういえばさっきの戦闘中、敵のロングテール・ウルフがローリング噛みつきアタックによってオレの後頭部に噛みついたのだ。すぐに引き離したので無事かと思ったが、セイエアさんに指摘を受けるということは血でも流れていたか。


「いけません、すぐに回復術(ヒール)をかけますね」

「ああ、お願いしますセイエアさん」


 そしてセイエアさんによる治療が始まった。



「少しだけ頭を下げてください……そう」

「こ、こうですか」


 オレは彼女と向き合って、少しだけ頭を下げた。すると、彼女は正面からオレの頭を抱き込むように手を伸ばし、そっと後頭部に手を添える。


回復(ヒール)


 彼女が術を唱えると、オレの頭は薄緑色(ライトグリーン)の優しい光に包まれた。

 セイエアさんの回復(ヒール)はとても心地がよい。温かくて、柔らかで……しかもなんだか良い匂いがするのだ。


 そして目の前に広がるのはこの世の絶景。

 オレの頭を抱き込むようにしている体勢のおかげで、清楚なローブを着ていながらも強く主張するセイエアさんの豊かな胸がオレの視界を埋め尽くす。

 なんてこった。知らぬ間にオレは天国にでも迷い込んでしまったか? まさにこの世の極楽、Sランクの絶景といったところか。ああ、いつまでもこうしていたい……。


「くっ……羨ましいな」


 隣でイーヤサーサがわかりやすくこの桃源郷を羨ましがっている。奴は昔から中距離を保ち、なるべく安全に戦える槍こそがベストだとのたまっていたが、今回はそれが裏目に出たようだな。ふっふっふ。



「さ……終わりましたよ。大人しくできてえらいですね。とてもいいこ」


 そう言ってセイエアさんはオレの頭をヨシヨシと優しく撫でた。まるで赤ん坊やペット扱いだ。

 こういう扱いは、人によっては怒り出す人もいるかもしれない。だがオレはというと……あまり悪い気はしなかった。いや、それどころか……この上ない安らぎのようなものを感じる。


「セイエアさん! じっ実はボクも手を擦りむいてしまってですね。いやぁ、全然我慢できるといえばできるのですが、ワンチャンばい菌が入ってしまうリスクも無きにしも非ずというか!」


「まあ、大変。ではすぐに治しますね」


 そういうとセイエアさんはオレの元を離れ、今度はイーヤサーサの治療へと取り掛かった。夢の時間はお終いだ。


 イーヤサーサが擦りむいたという手を出すと、セイエアさんはそれを綺麗な指で上から下から包み込み、回復(ヒール)の光を放つ。


 治療を受けるイーヤサーサはうっとりと恍惚の表情を浮かべている。

 わかるぞ、イーヤサーサ。

 気持ちいいよな、セイエアさんの回復(ヒール)……。


 本来、オレたちのような駆け出しの冒険者に、セイエアさんのような素敵な回復術師(ヒーラー)が加わってくれるというのはそうそう無い話だ。

 オレたちは相当に運が良かったと言える。


 そう、セイエアさんが仲間になってくれたのは一週間ほど前のことだった……。

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