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信の行く末  作者: チュン


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7、大猿族デルフォンツとの攻防


 パルスの王子、ダイムの叱責を受けた、デルフォンツは、あちこちを斬られ、自由にならない体でふらつきながらも何とか立ち上がると、何故か相対するオルフェに一礼をした後、呪文のようなもの小声で唱え始めた。

 オルフェは、

「どうしたの?ここで負けを認めるのかい?」

 と問いかけたが、その瞬間、息をのんだ。

 デルフォンツの体が大きくなっていく。その変化は、決して速くはないが、その成長は止まることなく、ついには、オルフェが後ずさりをするほどになった。

 やがて、その体は見上げるほど。その一歩で、闘技場から外に出てしまうほどの大きさになった。巨大化がひと段落すると、デルフォンツは、先ほどまで両手で抱えていた棍棒を、改めて手にしたが、それを持ち上げたのは、片手、いや、指先だった。

「やはり大猿族だね、それも王族系の大きさだ」

 突然の声にオービルが振り返ると、そこにいたのは先ほどまでフレイの手当てをしていた、フローラだった。

「かつて、魔族が滅んだ後、人族と龍族と獣族、三国の間に戦さが起こった。その時、獣族を率いていたのが、大猿族、草原の王と呼ばれたブラウンだ。頭は固いが、いい奴だったよ。おそらく、あいつはブラウンの子孫に違いないが、しかし、大猿族を支配するとは、アルテスのエンダール、どれほどの実力奢なんだろうね」

 フローラの言葉で、オービルが目を向けたのは、会場の反対側に座る、そのエンダールの息子、アルテスの王子ダイムだった。試合に目をやるダイムは、変わらず不敵な笑みを浮かべていた。

彼と闘って、果たして勝てるのだろうか。

 オービルが、そう、考えていると、

「おおお、パルスの若き天才剣士・オルフェ、なかなかやるねえ」

 とフローラが声を上げた。オービルが試合に目を戻すと、大きくなったデルファンツの足元を、目にも止まらぬ速さで、オルフェが動き回っている。動きながら、オルフェはデルフォンツのふくらはぎの辺りに攻撃を集中させているようで、見る間に、デルファンツの両足の毛がはがされ、そこに刀傷のようなものが見えた、と思うと、ついには、そこから血が流れ始めたのだ。

ドガーン。

 突然、デルフォンツが尻もちをついて倒れ込むと、大きな音が響いた。すると、オルフェの攻撃は今度は腕に集中し、デルフォンツが身を守るようにかかげた両手が動かなくなり、

ドボッ。

 今度は、棍棒が手から離れ、地面に落ちた。

「武器が持てないんじゃ、もう戦えないね。今度こそ、僕の勝ち、ということでいいかな」

 オルフェはデルフォンツに向って、そう言うと、それからすぐに視線を、先ほど試合に口をはさんだ、パルスの王子ダイムに向けた。ダイムは特に慌てる様子もなく、呆れたような表情をオルフェに向ていたが、その時、不意に首を傾げた。と、その瞬間。

 その瞬間、体の筋肉の各部を斬られ、戦意を喪失していたかに見えたデルフォンツが、最後の力を振り絞ってのことか、その場から飛び出し、オルフェに体当たりをして来たのだ。

 ダイムの様子に注意を奪われていたこともあり、オルフェは、デルフォンツの体当たりをかわすことができなかった。正面からそれを浴びると、そこから突き飛ばされ、はるか反対側の闘技場の壁まで飛んで、それに激突、ぶつかった反動で壁の前に数回転がると、地面にうずくまって、動かなくなった。

「オルフェ!」

 突然の展開に、パルス側のたくさんの場所から、オルフェの名を呼ぶ声が響く。オービルはその場の何人かと共に、オルフェの元へと走り出した。

 オービルがオルフェの元に近づくと、車いすの男性が、いち早く、オルフェの傍らにいて、車いすから降りて、地面に横たわるオルフェに寄り添っていた。

「オルフェよ、私が悪かった。頑張りすぎるなと、一言、声を掛けるべきだった」

 その人物は、オルフェにそんな言葉を投げかけていたが、オービルは、その人物を知っていた。それはパルスでは、その名を知らない者はいない、国の大将軍ヴェルナーだった。数年前、反乱軍鎮圧の際、大怪我をして軍から引退した、大将軍ヴェルナーの一人息子が、オルフェだったのだ。

 すると、

「お父様。ごめんなさい。僕、また油断してしまいました。そう、これは剣術の試合じゃないんだから、気を抜いてはいけなかったんですね。これじゃ、まだ、お父様の後は継げませんね」

 口調は弱弱しかったが、確かにオルフェはヴェルナーに向って、そう言ったのだ。

「おおお、オルフェ。分かった。もういい。何も言うな。今はゆっくり休みなさい」

 ヴェルナーは、そう言うと、オルフェを抱き寄せて、涙を流した。

 と、少しの間の後、

「許せ。パルスの戦士よ。これは私にとって、負けられない戦いだった」

 という、ややかすれた声が響いた。見れば、それは、アルテスの審判シュタインに支えられて立つ、デルフォンツだった。デルフォンツは大猿のままで、シュタインも知らない間に、デルフォンツを支えるためか、大熊に変身していた。

 大熊のシュタインは、声を上げた。

「試合終了!勝者、アルテス国デルフォンツ」

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