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信の行く末  作者: チュン


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6、若き天才剣士オルフェ

「一体、どういうことだね。私は、試合終了と言ったはずだ。何故、君らは攻撃をやめないのかね」

 闘技場に響き渡ったのは、リンドバの声だった。その声は、大熊から人間に戻ったシュタインと、彼に抱きかかえられた、イズンに対してのものだった。イズンの獣化も解けたのか、彼は目を閉じたまま、ぐったりとした体をシュタインに預けている。

「こんなことでは試合にならん。私は、パルス国の審判として…」

 とリンドバが言いかけた時、

「神宿りは、神との融合。その思いが深いほど、融合も強まる。彼の思いが、これほど強まったのは、それだけ、相対した、そちらの戦士の方が強かった、ということだ。もし、そちらが負けを認めるというのなら、残りの試合、当方の不戦勝ち、としても構わんが」

 と淡々とした口調で答えたのはシュタインだ。さすがに、そう反論され、リンドバは言葉を呑んで、シュタインから目を離し、パルス王に目をやったが、その時のパルス側は、それどころではなかった。

「あんたが王国魔法師のシャリーかい。私は昔から治癒魔法は苦手なんだ。早く強力な魔法で癒さないと、この娘、大変なことになるよ」

 試合の後、血だらけのフレイに、一人で治癒魔法を施していたフローラの元に、パルスの王国魔法師がシャリーを含めて全部で四人やって来て、その場で治癒に参加した。

 しばらく、それが続くと、今度はフローラの手配で、担架を抱えた二人の救護員がやって来た。

「やはり、医務室に運んだ方がいいね。いいかい。私が魔法で、この娘を持ち上げ、担架に乗せるから、魔法師のみんなは、その間も治癒魔法をかけ続けてね」

 フローラの先導でフレイを担架に乗せると、担架は王国魔法師、それにフローラと共に、会場から運ばれていった。

 パルス王はその間、堅い表情でその光景を見つめていたが、やがて、会場に立つリンドバに顔を向けると、簡単な動作と目で、リンドバに合図を送った。それを見たリンドバは、首を縦にして、うなづくと、

「それでは、パルス国は次鋒オルフェ」

 と声を上げた。試合は続投されるようだった。


「オルフェ!」

 その時、オービルは思わず、そうオルフェに呼びかけたが、その後の言葉が続かない。ただ、頭の中では、ここでオルフェが棄権をしたとしても、それも仕方ない、とも考えていると、

「王子、僕なら大丈夫。って言うか僕、これまで一度も負けたことがないんだ。僕が負けるくらい強い敵と戦えるなんて、ワクワクするよ」

 オルフェからは、予想外の答えが返って来た。男子部の若き天才剣士・オルフェ。確かに、まだ幼いオルフェが、パルスの武闘大会では圧倒的な強さを見せていた。

「アルテス国は、次鋒デルフォンツ」

 すると、すぐ、会場にシュタインの声が響き、相手が現れた。相手のデルフォンツは、棍棒を抱えたガッシリとした体格の、半袖半ズボンの男性で、腕も足も、そして頭も顔さえ、黒い毛に覆われていた。もちろん獣化はしてないが、

あれはゴリラ!?

 オービルは、そう思った。


 オルフェが細長い剣を構えると、デルファンツは棍棒を両手で持ち、頭の上で構えた。棍棒は、決して背は低くないデルフォンツの、体に匹敵するほどの大きさで、彼が力を込めて、それを持ち上げていることは、誰が見ても明らかだった。

「そんな重い武器で大丈夫?僕はわざと当たってなんて、あげないよ」

 オルフェが見かねたように声を掛けると、

「ウォー」

 デルフォンツは、そう唸りながら前進し、そのままオルフェに向って、棍棒を振り下ろした。それは予想を超えた速度の動きだった。

ドガ~ン!

 オルフェは棍棒が向かってくる瞬間に、その場から避けたが、振り下ろされた棍棒が、そのまま闘技場の地面を直撃すると、その場に大きな音と共に、大穴が空いた。

「君、君はうちの国の闘技場を壊すつもり?困るよ、それじゃ」

 と、棍棒の穴のすぐ横に立ったオルフェが言うと、

「ウォー」

 デルフォンツは穴から引き抜く棍棒の行く先を、オルフェに向けた。下から向かって来た棍棒も、オルフェがギリギリでかわすと、デルフォンツは再び、棍棒を頭の上まで持ち上げて、構え直した。

 すると、

「ダメだよ。それだと、また、穴が空いちゃう。もう、させないよ」

 と言って、オフフェはデルファンツに向けて、数回剣を浴びせる。細剣の閃きが眩しく放たれた。

「オオー」

 その瞬間、デルフォンツは、悲鳴のような声を上げると、

ボゴッ

 持っていた棍棒を背後に落とした。それと共に、デルフォンツの両腕は、そこから力が抜けたように、だらりと伸びて動かなくなった。

オルフェはデルフォンツの腕のケンを切ったのか?

 オービルがそう考えている間もなく、オルフェが再び、デルフォンツに太刀を浴びせると、今度は、デルファンツが足の力も無くし、その場に座り込んだ。

 それを見て、オルフェがさらに剣を構えると、

「待て。ここで彼が戦争不能なら。君の勝ちとする」

 と言って、オルフェの前に出て、制止したのは、リンドバだ。彼はオルフェを止めると、すぐにデルフォンツに向き直り、

「どうだ、戦いが無理なら、ここまでとするが」

 と尋ねた。

「・・・」

 デルフォンツは何も言わない。だが、少しの間、待って、リンドバが、

「よし」

 と言って、何かを言おうとした時、

「おいおい、まさか、ここで、草原の王と呼ばれた部族が負けるなんて、それは、ないよな。そんなことじゃ、お前の妻と子も悲しむぞ。お前の妻と子を悲しませたくなかったら、ためらわず、そいつをぶちのめせ。やれ、大猿族の王ブラウンの子孫、デルフォンツよ」

 ドス黒い声が会場に響いた。それは、パルスの王子、ダイムが発した声だった。

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