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信の行く末  作者: チュン


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5/10

5、王国親衛隊女子部フレイ

「あれは、一癖ありそうだね」

 フローラの呼び掛けに、フレイは無言でうなづくと、そこにいたチーム「パルスの若き力」のメンバーに一通り目をやった後、闘技場の立ち位置に向けて歩いて行った。

「頑張れ!」

 パルスの王子オービルも、思わず、そう声をかけたが、フレイは王国親衛隊の女子部に所属していることから、

「隊長、頑張って」「フレ!フレ!フレイ」

 といった華やかな女の子の声などが、会場に響き渡った。

 闘技場の中央で、歩いて行ったフレイと、アルテス国先鋒イズンは、十メートルほどの間隔で向き合ったが、スラリと背の高いフレイと比べると、イズンは頭一つ分ほど背が低い。身体も華奢で、腰にある剣も細くて短くて、見た感じは強そうには見えないが、

小さくて、的が絞りにくそうだな

 というのが、オービルの感想だった。

 だが、リンドバが発した、

「それでは、試合開始!」

 の声と共に、まるで短距離走のスタートのように勢いよく飛び出したフレイは、驚くような速さでイズンに向けて剣を繰り出した。

 それに対し、イズンは細身の剣を抜いて、器用にフレイの剣をしのいだが、やがて、

「オワ!」

 フレイの剣がイズンの脇腹をかすめ、イズンが声を上げた。それを確認したフレイは、一気に勝負をつけようとしたのか、さらに剣を振り回す速度を速めた。

 剣の腕は、明らかにフレイの方が上だった。なので、その後、数回、フレイの剣先がイズンの体を傷つけ、イズンから声にならない声が何度も漏れたが、そんな中、

「さあ、いよいよ獣化だね。彼は、どんな獣かな。まあ、見た感じで想像はできるけどね」

 フローラの声で、オービルは改めて思い出した。

そうだった。相手は獣族だった。

 そこで、フローラに疑問をぶつけた。

「獣族は、どうして途中で獣化するんですか。最初から、獣で戦えばいいのに」

 するとフローラは、

「獣化は、宗教と感情の融合なのさ。相手に傷つけられ、相手に反撃したい、相手に勝ちたいといった、強い感情がわき上がってこそ、思いが形になる。今のイズンはまさにそんな状態になりつつある、と言うことさ」

 と答えたが、そんな答えが終わるや否や、やや甲高い声が会場に響いた。

「我が神、獣神ルバートの名において」

 その声を発したのは、イズンで、それを聞いたフレイは、何か身の危険を感じたのは、一層、繰り出す剣の力を強めたように見えたが、それに臆することなく、イズンの言葉は続いた。

「我が神、獣族ルバートの名において、ここに、我が牙を解き放たん!」

 すると、フレイの目の前から突然、イズンの姿が消え、そこから数メートル離れた場所に、全身が白い毛で覆われた、小さな動物が現れた。

 それを見て、フローラは、

「やっぱり、あいつか。こりゃ大変だ」

 と言うと、すぐ、

「フレイ、避けるんだ。今すぐ、その場から離れなさい」

 と大声で叫んだ。

 フローラの声を聞いても、フレイには、その意味が分からなかったのか、現れた小さな動物を見つめたまま、その場に立ちすくんでいる。すると、やがて、

プシュ!プシュ!

 何かを切り刻むような音が聞こえ、見れば、フレイの服が何カ所か避け、それと同時に、フレイの頬に細長い切り傷が現れた。

「フレイ、かまいたちだよ」

 フローラが、さらに声をかける。すると、フレイは、

「私は逃げません。私は負けません」

 と、つぶやきのような声を返すと、かまいたちを避けるためなのか、体の前で円形に剣を振り回し始めた。

 それを見て、イズンは、

「ハハハ、バカな奴。お前など切り刻んで、跡形もなくしてやる」

 と声を発したが、

プシュ!プシュ!

 という音は、時間と共に、音の間隔が短くなっていて、フレイの剣は確かに、イズンのかまいたちを弾いてはいるが、すべてを弾ききれず、服を刻み、さらに、その下の肉を刻むと、フレイのあちこちが血で赤く染まり始めた。

 だが、フレイの口から時折、聞こえるのは、

「私は逃げません。私は負けません」

 という、つぶやきだ。

「ダメだ。彼女は、王国親衛隊女子部の埃だけで戦っている。そんなもののために、自分を犠牲にすべきじゃない」

 そう言ったのは、オービルの剣の師匠イルバだ。オービルは、そう言えば、王国親衛隊女子部には、王国財政縮小のため、解散の話が出ていたことを、思い出した。だが、その瞬間、

「きゃああ~~」

 会場に女性の悲鳴のような声が響き、慌てて、フレイに見ると、何と全身血まみれのフレイは、そのダメージからか、もはや立っていることもかなわず、その場に片膝をついたのである。

「ダメだ。こりゃまずいよ」

 フローラが叫ぶと、オービルの守り役であり、パルス側の審判である、リンドバが、

「試合終了!アルテス国イズン、君が勝者だ」

 と、慌てた様子で、フレイの負けを宣言した。ところが、

 ところがイズンはフレイに対する攻撃をやめることなく、なおも、かまいたちはフレイに降り注ぎ、なおもフレイの傷を深めていく。すでにフレイの体のほとんどが真っ赤に染まり、フレイのダメージは計り知れないものになっていた。

「おい。やめなさい」

 とうとう、リンドバはイズンの背後に回り、イズンを腕力で抑え込もうとしたが、空中に浮かんだイズンは、フワフワして掴むことすらできなかった。

 見かねて、イルバを先頭に、オービルたちもフレイに駆けよろうとした時、目の前で、突然、獣化によってなのか、大きな熊に変身したのが、アルテス側の審判シュタインだ。シュタインは真正面から、自らも、かまいたちを浴びながら、イズンに突進し、そのまま、その大きな体でイズンを包み込んだ。

「もういい、やめろ。やめなさい」

 シュタインに大声で諭され、そこで、ようやく、イズンの攻撃が止まった。

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