4、チーム『パルスの若き力』の結成
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唯一神への強力な信仰によって生み出される生体変化により、獣になるのが獣族、龍になるのが龍族。それとは異なり、大自然の八百万の神の力を借り、この世界そのものを変化させるのが、人族の魔法だ。だが、人族の魔法は、個人の能力差が大きく、それを使いこなせる者は少なかった。
だから、武器に魔法を施す。そんな技術が生まれたんだな。
昨夜は、あまり寝れなかったオービルは、次の朝、部屋の窓から陽が入り、部屋が十分に明るくなったことを確かめると、昨夜フローラから手渡された獣砕剣をベルトから取り出して、自室で素振りをしながら、そんなことを考えた。
素振りを繰り返すうちに、最初に感じた重さにも、徐々に慣れたように思われた頃、リンドバが部屋に訪れた。
「今から広間で、本日の親善試合に臨む我が国の代表、チーム『パルスの若き力』の結成式が行われます。さっそく王室へ向かいましょう」
リンドバに、そう言われ、オービルは改めて身なりを整えると、リンドバと共に歩き出した。
オービルがリンドバと共に広間に入ると、すでにエンリコ王の前には、イルバ、それにフローラの姿もあった。フレイとオルフェも、直接会話を交わしたことはなかったが、二人が優勝する試合にはオービルも立ち会ったので、顔は覚えていた。
広間には、王と代表者以外にも、それを取り囲むように、パルスの民が入りきれないほど集まっていて、オービルもみなに挨拶をして、代表者の中に加わると、王の前で代表者それぞれの紹介から、結成式は始まった。
式の中でエンリコ王が強調したのは、
「この度の親善試合で大切なのは、自らの力、そして仲間の力を信じることだ。自らを信じ、この国の仲間を信じてこそ、君たちは最高の力を得ることができる。今、この時、チームでの戦いは、すでに始まっている。我が息子、オービルよ、特にお前は、このチームのリーダーとして、それにふさわしい役割をまっとうしなさい」
王に言われ、オービルは改めて気を引き締めた。
結成式が終わると、代表者は大勢のパルスの民と共に、そのまま親善試合が行われる武道場へと、歩いて向かった。通路にも民が大勢いて「パルスの若き力」を、心からの声援で会場へ導いた。
「私は、若くはないんだけどね」
会場に入って、群衆との距離ができると、フローラが、そう言って話し始めた。
「一口に獣族と言っても、数々の種族がいる。私の知る限り、アルテスはタテガミイヌという名の種族で、この種族は長い間、自分の国さえ持たず、獣族の中でも迫害されてきた種族だったはず。それがどうして、国としてまとまり、他の種族を圧倒するほどの力を得たのか、まずはそれが謎だね」
イルバも含め、それを聞いて少し考え込むと、その重い空気を察したのか、
「要は、相手に合わせて、臨機応変に戦うことだね。もっとも、どんな種族であろうと、獣化したら、攻撃力は格段と高くなるから、ダメージだけは受けないようにね。それさえ心得ていれば、大丈夫だからね」
と、フローラがやや明るく言葉を続けると、
「攻撃を受けなきゃいいんだね。素早さなら自信があるよ。おまけに、僕の炸裂剣は、相手の表面だけでなく、内部にもダメージを与える剣だから、獣でも大丈夫さ」
と、しゃべりだしたのは、男子部の若き天才剣士・オルフェだ。
オービスはオルフェを見て、武闘大会で他のメンバーよりも小柄で幼いオルフェが、優勝まで圧倒的な強さで勝ち上った情景を思い出し、
「オルフェ、期待してるよ。頑張ってね」
と声をかけた。
すると、
「君は確か、私の弟子のフェタルトの弟子のディーンの弟子の、誰だっけ、誰かの弟子なんだよね」
と、続いてフローラが、女子部優勝の魔法剣士・フレイに声をかけた。
「はい、コンノ様です。私はコンノ様の弟子で、今回の試合にも、コンノ様直伝の魔法剣を持参しました。これなら、獣化した獣族にも、ダメージを与えられると思います」
と、フレイは答えた。
「フレイも、頑張ってくださいね」
とオービルがすぐに声をかけると、
「分かりました。オービル様、最善を尽くします」
と、フレイはキビキビとした返事で答えた。
やがて、武道場に五人が足を踏み入れると、反対側に、ダイムら獣族代表五人もそこに集まっていて、全員が一斉にオービルたちに顔を向けた。
「ぱっと見ただけじゃ分からないけど、どうやら相手はタテガミイヌだけじゃないね。他の種族も混じってる。混じっているということは、タテガミイヌが他の種族を支配してるって、ことさ。奴らは知能だけは高いからね。やはり、試合では、相手がどんな特徴の獣なのか、見極めが必要だね」
移動しながら、フローラのアドバイスは続いたが、五人が獣族の五人と相対する位置まで来ると、五人の意識はお互いの相手に集中した。
そんな両者の目の前を、会場の脇にいた、リンドバと、もう一人が、歩き出した、二人は、闘技場中央に歩を進め、そこで、ほぼ同時に叫んだ。
「これから、パルス国とアルテス国による親善試合を行います。まずは両国の王の入場。拍手をもって、お出迎えくだい」
すると、壮大な音楽と共に、別々の方向から、二人の王が何人かの従者を引き連れて、会場に現れた。
王の入場が終わると、審判員の紹介があった。リンドバと共にいるのは、アルテス側の審判・シュタインで、歳は取っていたが、リンドバより頭二つ分くらい背が高い大男だった。
リンドバが、
「それでは試合を開始します。まずはパルス国、先鋒フレイ」
と告げると、シュタインも、
「アルテス国は、先鋒イズン」
と声を上げた。
紹介と共に、出て来たイズンというのは、獣族の中でも、他のメンバーのより一回り小さい、男性だが、女性のフレイとそれほど体格が変わらない人物だった。
「あれは、一癖ありそうだね」
フローラがフレイに声をかけた。




