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信の行く末  作者: チュン


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11/11

11、救い救われ


11

 右肩をケルベロスに噛まれ、左腕を骸骨兵に押えられ、気を失ったまま体を起こされているイルバに迫るのは、大剣を振り上げた、ゾンビ化したプトレマイオス。助けに入ったリンドバも、骸骨兵に弾かれ、地面に横たわって、悲嘆の声を上げている。そんな状況に、観客の誰もが目を覆った時、突然の光が、そこに舞った。

 次の瞬間、そこにいた全員が目にしたのは、胴体が真っ二つになったプトレマイオスと、首から下が切り落とされたケルベロス。骸骨兵に至っては、頭から剣が振り下ろされると同時に、黒いススと化した。

 ケルベロスと骸骨兵から解放されたイルバは難を逃れ、ゆっくりその場に座り込んだ。

「おおおお」

 観客から巻き上がった、ものすごい大声援の先にいたのは、剣を構えたオービルだった。

 オービルが手にしていたのは、試合の前日、伝説の魔法使いフローラから手渡された、勇者トーマスの三種の剣。一本のベルトに、龍眠剣、魔封剣、獣砕剣という三つの剣が備わった、不思議な剣だが、その時、オービルが使ったのは、当初、試合で使うはずの黒の鞘の獣砕剣ではなく、白い鞘の魔封剣だった。

(魔封剣、魔を封じると聞いたが、まさか、こんなに斬れるとは)

 その剣の切れ味に、一番驚いていたのは、それを手にしたオービル自身だったが、その光景を見て、意外にも不敵な笑い声を発して立ち上がったのは、獣族の国アルテスの王子、ダイムだった。

「おおお、その剣こそ、我らの今後を脅かす八つの邪剣の一つ、三種の剣ではないか。よし、分かった。ここで大人しく、その剣を私に献上するなら、お前たちへの攻撃は、ここまでにしてやろう。さあ、お前、剣をベルトに収め、こちらに差し出しなさい」

 ダイムは、そう言いながら、右手を差し上げ、オービルに近づいて来た。

 だが、そんなダイムに向って、今度はオービルが言い放った。

「馬鹿を言うな。お前たちになんて、この剣を渡せるか。ダイム、お前こそ、ケガをしないうちに、今すぐ、ここから立ち去れ」

 するとダイムは、その場で呆れたように、オービルに言葉を返した。

「ぷっ、お前こそ、愚か者だな。今のお前は、その中のどの剣を使おうと、俺にかすり傷さえ与えることは不可能さ。使う剣、以前に、俺とお前とでは、剣の腕前が違うのだ、そのことが、お前には分からないのか」

 ダイムはそう言うと、腰に身に付けていた剣を引き出し、オービルに見せつけるように掲げた。太くて長い剣は、オービルが手にする魔封剣より、はるかに大きく、そして重量感があった。

 そこでオービルは、魔封剣をベルトに収め、改めて、獣砕剣に持ち替えた。獣を砕く獣砕剣は、取り出した時の大きさが、若干、魔封剣より大きかったからだ。オービルは、獣砕剣を手にすると、そのまま一気にダイムに斬りかかった。

 オーピルの攻めは、一太刀ではなく、上下左右に斬りこんだが、ダイムはそれを平然として受け流した。そして、今度はダイムが剣を振り下ろすと、オービルは一旦はそれを受け止めたが、ダイムの剣の勢いに押され、そのまま斬られそうになり、何とか、体を後退させ、それをかわした。

 しかし、それからは、ダイムからの攻撃をよけるが精一杯で、オービルはよけながらも、逃げ道のない、闘技場の隅へと追いやられた。

(強い、僕も剣には自信があったはずなのに、この強さは何だ。ダメだ.とてもかなう気がしない)

 オービルの頭にそんな考えが浮かんだ時、それを見たダイムが、オービルに勝ち誇ったような表情を見せた。そして、その表情を見た時、オービルに突然の記憶が蘇った。

(あれ?あれってワイゼンバウム?彼じゃないのか?)

 その時、オービルの頭に浮かんだのは、オービルの前世だった。オービルの頭の中に、まるで水が流れ込むように、前世の記憶が一気によみがえった。

 前世、ピアニスト志望であった彼は、ピアノコンテストで、ライバル、ワイゼンハウムに、その才能の違いを見せつけられ、夢を砕かれたのだ。

 前世のオービルがコンテストで予選落ちした夜、主宰者主催の懇親会会場で、勝ち残ったワイゼンハウムが、彼をあざ笑うように見せた表情が、まさに、その時のダイムの表情そのものだった。

 前世のオービルは、そのすぐ後、落ち込んだ心のまま不慮の事故で、帰らぬ人となったのだ。

(この絶望感は、何だ。ひょっとして、僕はまた、彼にやられるのか。これが僕の宿命なのか)

 オービルはすっかり気落ちし、剣を持つ手にも力を失い、その場で棒立ちになった。すると、

「そうか、観念したか。だったら安心しろ、苦痛のないように、一撃でお前を葬ってやる」

 ダイムは、そう言うと、ひときわ高く剣を持ち上げて、オービルに斬りかかった。


「王子、しっかりしてください」

 ダイムの振り下ろした剣が、オービルの身体に届く寸前、オービルは大きな手に抱えられ、その場から移動した。振り下ろされたダイムの剣は、そのままオービルを抱えた大きな手の主に当たったが、それは鈍い音を立てただけで、振り下ろしたダイムの身体をも巻き込んで、弾かれた。

 放心状態だったオービルが、我に戻って顔を上げると、彼を抱えているのが、硬い金色のうろこを携えた、大きな龍であることに気づいた。

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