表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王さまのお言葉

作者: 曲尾 仁庵

 ふははははははははっ!


 愚かな人間どもよ!

 地に這い、天を望むこともできぬ憐れな者どもよ!

 自らの卑小さを自覚することもなく、欲望のみを追求する滑稽な存在よ!

 今、貴様らに言っておきたいことがある。

 この魔王の言葉を直接受け取る僥倖を、地に伏し涙を流して喜ぶがいい。


 愚かな人間どもよ!

 過去に学ぶこともなく過ちを繰り返す度し難き者どもよ!

 己を世界の支配者と疑わぬ傲慢を

 捨てるべき時が来た!

 己を至高の存在と驕る厚顔を

 捨てるべき時が来たのだ!

 目を凝らし

 耳を澄ませ!

 不都合な真実を

 しかと受け入れよ!


 今、

 この世界で

 どれほどの命が

 無為に失われているか

 知っているか。

 貴様らが声高に叫ぶ

『正義の戦争』とやらで

 どれだけの苦しみが

 世にまき散らされているか

 知っているか。

 貴様らの無関心が

 どれだけの犠牲を生むか

 知っているか。

 貴様らの矮小な想像力が

 何を傷付けているか

 知っているか。

 星の嘆きが聞こえぬか。

 大地の悲鳴が聞こえぬか。

 風が運ぶ痛苦を

 気付かぬふりで通すつもりか。

 荒れ狂う海の怒りの意味を

 理解する必要を感じぬか。


 大気は灼熱のごとく、

 極北の氷は溶け、

 島は沈み、

 森は炎に包まれているぞ。

 ただの偶然か?

 貴様らの怠惰が

 世界を蚕食していると

 思わぬか?

 貴様らの世界は

 己の視界の範囲だけか?

 他者の苦しみを

 悲しみを

 怒りを

 わずかでも想像できぬか?

 己以外のためには

 指の一本も動かせぬか?

 誰かが勝手に解決せよと、

 己に責任がないことのみを盾に

 生きていくつもりか?

 それでよいのか。

 本当に、

 貴様らはそれでよいのか!

 この私に

「愚かな人間どもよ」と

 言い続けられる存在で、

 本当によいのか!


 愚かな、

 愚かな人間どもよ!


 もう時間はないぞ。

 だが、

 間に合わぬでもない。

 視野を広げよ。

 世界に思いを馳せよ。

 他者の痛苦に

 心を寄せるのだ。

 ただそれだけで

 世界は変わるぞ。

 世界は、

 変えられるのだ。

 お前自身の手で、

 世界は変えられるのだ!


 愚かな人間どもよ。

 この私に

「愚かな人間どもよ」と

 呼ばれ続けることを拒む、

 人間の矜持に

 期待する。


 以上だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ