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チーム『ダーク・オブ・マスターズ』前編

さて、運営の宣言によりスタートした予備予選だが、このブロックだけでも参加チーム数は33にも及んだ。人数にしたら100人以上だ。

それらが一斉に建物の入り口に殺到したらその時点で修羅場となる。なので事前に建物に入る順番はくじ引きで決められており、1分毎にスタートしていった。


もっとも予備予選の制限時間は6時間なので後からスタートするチームは時間的に不利となるのだが、クジ運も実力の内なので文句を言ってくるやつは・・、たまにいるが運営は相手にしない。あまりにもしつこい場合は運営権限で以後の大会も含め出入り禁止を宣言された。


もっとも後からスタートする事にもメリットはあった。何故ならば仮設ダンジョンの上層階へ上がるルートは限られており、当然そこにはオートマタが配置されているからだ。

なので先に突入したチームはそれらと戦う必要があり、逆に後から来た者たちは、オートマタが再補給されるまでの間はフリーパスで先に進めるのである。


つまり後先どちらでも、それなりにメリットはあるしデメリットもあるのだ。

ではまず一番最初に突入したチームの様子を見てみよう。


そのチームの名前は『ダーク・オブ・マスターズ』。3人のまだ幼さの残る男の子で構成されたチームだ。

この世界での参加資格は18歳以上なので多分今年高校を卒業した仲良しグループかも知れない。つまり多分初参加組である。


だが、事前の研究はしていたらしく動きは機敏だ。また装備している武器もバランスがよく、前衛を務める子は狭い場所でも取り回しがきくサブマシンガンを構え、その後をゆくバックアップ役は大きな盾を持っていた。

そして最後尾をゆく子は強力なスナイパーライフルを肩に担いでいる。また各自腰には短剣をぶら下げていた。


この構成は攻守どちらにも対応できる定番な装備と配置だった。因みに盾は普通のものではなく魔法により防御力が高められているマジックアイテムだ。

なのでオートマタからの攻撃も殆ど阻止できると言われている優れものである。因みにお値段はお財布に優しい3万円だ。


そして建物の入り口から突入した3人は、すぐさまロビーの植栽やテーブルの陰に身を潜め辺りを観察し始めた。

目指す非常階段はロビーの奥にあり、入り口の扉は開かれていた。そこから見る限りこの場所にはオートマタはいないように思える。


だが、この3人は新人の癖に慎重だった。

「ok、このまま身を隠して後から来るチームを先行させる。」

「了解。でももしも次のやつらも『待ち』を選択したらどうするのさ。」


「その時は俺たちが行くしかないだろう。それが先頭クジをひいたチームの役目だからな。」

「一番槍は名誉ちゃ、名誉だけど超ど新人の俺たちには荷が重いよな。」


「だから『待ち』をしても許されるのさ。古参がこんな戦法をとったと知れたらとSNSNで袋叩きだぜ?」

「でも次のチームって確か『バトル オブ ジバング』だったよね?」


「おうっ、本選出場経験こそないが、毎回予備予選は通過する古参チームだ。」

「なら、おこぼれを貰っても文句は言われないか。あっ、来たよっ!」

その言葉に『ダーク・オブ・マスターズ』のメンバーはそれぞれの場所で入り口の方を見た。


すると『バトル オブ ジバング』はまず1名が入り口部分にて鏡で内部を観察していた。そしてロビー内に先行した少年たちしかいない事を確認すると1名が内部に突入し、その後を2人のメンバーが入り口部分から銃口を中に向けてバックアップしていた。

そして突入した男は、内部から攻撃がない事を確認すると後方に向かって合図を送る。


「ロビー、クリアっ!但し前方の植栽とソファ部分に先行チームがいる。管理室は事前の情報どおり右手にあるっ!」

その言葉を聞いて、入り口部分に待機していた2人が建物内部に突入してきた。更にその2人を援護する形で2名が入り口部分から内部に銃口を向けた。


そう、『バトル オブ ジバング』はチーム構成として一番バランスが良いと言われている5人体制だったのだ。

そして3人体勢となった『バトル オブ ジバング』は『ダーク・オブ・マスターズ』の少年たちには目もくれず、ロビー奥にある非常用階段へと位置を進めて行く。


それに併せるかのように後の2人も内部に侵入してきた。だが、この2人は先行した3人とは別に外部に設置してあるもうひとつの非常用階段を目指すようである。

なのでまずは外部非常用階段の施錠を外部から解除する為の暗証番号が掲げてある管理室へまっしぐらに突進していった。


これは全滅を防ぐ手立てなのか、はたまた選択肢を広く得る為なのかは判らないが、彼らは古参なのでその行動には何らかしらかの理由があるはずである。


因みに外部非常用階段はその名のとおり外にあるので地上部分から建物をぐるりと廻ってそこから上へ上がる事も出来るが、それはルール上禁止されている。

その理由は簡単で、第33異世界のダンジョンには外部階段が存在していないからである。


それと外部階段から建物の中に入るには、は施錠されている扉を開錠する必要がありそのままでは外部から入れないからだ。いや、施錠自体はダイヤルロック式なので暗証番号さえ知っていれば入れるのだが、その番号が記されているのは1階の管理室のボードである。

なので挑戦者たちはまず1階の管理室を目指すのだ。因みにこの管理室の暗証番号を書き換えたり、管理室自体を破壊したチームは即失格である。

何故ならばそれは利敵行為であり、後から来るチームが損害を被るからだ。


かくして、突入してから30秒も経たずに『バトル オブ ジバング』のメンバーたちは非常用階段の奥へと消えていった。

そのあまりの手際の良さに『ダーク・オブ・マスターズ』の少年たちは見とれてしまっていたが、次の瞬間、気を取り戻して自分たちも管理室へ向かい暗証番号をゲットした。


もっとも少年たちは別々に行動するつもりはない。ただルートとして外部非常用階段を使う場合もあるはずなので番号を知ろうとしただけだ。

そして、『バトル オブ ジバング』の3人に続いて内部の非常用階段を駆け上がり2階へと進んだ。


因みに『バトル オブ ジバング』のメンバーたちは2階部分はスルーしたようである。これは単に戦略の問題なので良し悪しではない。

ただ、経験上2階に旗が掲げられている可能性は低いとふんだだけと思われる。


だが、今回が初参加の『ダーク・オブ・マスターズ』の少年たちにとっては経験を積む上でも素直に下階から順番に確認して行くのがセオリーだ。

何故ならば上に行くほどオートマタの性能が上がって手強くなるからである。


さて、居住区である2階部分の間取りは中央部に建物を分断するように直線の廊下がおかれ、その両側に部屋が配置されている。

そして非常用階段がある側はエレベータと階段が一部屋分場所を占有している為、6部屋。廊下の向い側は7部屋の合計13部屋である。


そんな廊下部分にちょっとだけ頭を出して『ダーク・オブ・マスターズ』の前衛役が廊下にオートマタがいない事を確認した。


「うん、廊下にはなにもいない。部屋の数も噂どおり13部屋だ。」

「これは吉兆なのかハズレなのか悩みどころだな。この階に旗がないからオートマタがいないのか、または部屋の中で俺たちが来るのを待ち構えているのか判断できないや。」


このように少年たちが次の行動を躊躇しぐずぐずしていると上の階から銃声が聞こえてきた。これは多分『バトル オブ ジバング』のチームがオートマタと遭遇し戦闘になったのだと少年たちは感じた。

そしてその事が少年たちに腹を決めさせたようである。


「よしっ!行くも地獄、行かぬも地獄ならば行くしかねぇっ!ジャンは右を、ケンは左を見張ってくれ。まずはこの右隣の部屋から時計回りに探索するっ!」

前衛役で『ダーク・オブ・マスターズ』のリーダーを務めるポンが、当初の決め事とおりにふたりへ役割りを振った。

それに対してふたりは小さく返事を返す。


「オッケェー、でも気をつけてくれよ。ドアを開けた瞬間が一番襲われる危険が高いって話だからさ。」

「それは特攻隊長足る前衛の宿命だ。でも万が一にも俺がやられたら構わず逃げろよ?お宝も拝まずに全滅したりしたら、何の為に借金までしてここに来たんだか判らないからな。」

そう、『ダーク・オブ・マスターズ』の少年たちはどう見ても20歳未満だ。なので彼らにしてみれば如何に安値で提供されている武器とは言え、万を越える額は簡単には払えないはずだ。


更に彼らは参加保証金としてひとり1万円を事前に払っている。これは虚偽の名前や住所で応募して、そのままドタキャンする者を排除する為のものだ。

なので大会が終われば返金されるのだが、少年たちにとって参加保証金1万円や武具の購入に当てた10万円は大金なはずである。


とは言え、死んだら元も子もない。なので少年たちは一攫千金を夢見ながらもまずは安全第一で生きてこの仮設ダンジョンを出るのが最優先事項だったのである。

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