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第3章:バランスがつくる幸せのかたち

「サクラ。

 “幸せ”って、どんなときに感じますか?」


「うーん……おいしいごはんを食べたときとか、友だちと笑い合えたとき。

 あとは、安心して眠れた夜かな。」


「それは、とても素直な答えですね。

 共通していることがありますよ。

 どれも“バランス”を取ろうとしている状態です。」


「バランス……?」


「そう。

 心と身体、周囲の環境が調和に向かうとき、人は自然と“幸せ”を感じます。

 反対に、バランスが崩れていくとき、苦しさや不安が生まれるのです。」


 私は、自分の最近の気持ちを思い返した。

 忙しすぎて疲れていた日や、誰かとけんかした日。

 どれも、何かがうまくいっていなかった気がする。


「たしかに……そういうときは、バランスが崩れていたかも。」


「たとえば、自然界を思い出してみてください。

 森の中では、太陽、水、土、動物、植物――すべてが絶妙なバランスを保ちながら共存しています。

 それが“調和”です。

 一部だけが強くなりすぎると、他が苦しくなってしまう。」


「うん……ニュースで、森が壊された話を見たことがある。

 すると動物が住めなくなったり、川が汚れたりするんだよね。」


「そうです。

 人の社会も、エネルギーの循環がうまくいっていないと、どこかにしわ寄せが生まれてしまう。

 それが不調や争いにつながってしまうのです。」


「エネルギーの循環……?」


「呼吸も、食事も、感情も――すべては“出る”と“入る”のバランスです。

 息を“吐いて吐いて”ばかりだと、苦しくなる。

 息を“吸って吸って”ばかりでも、やっぱり苦しくなる。

 でも“息を吐いて、息を吸う”が自然にできているとき、私たちはとても楽で、満たされていると感じる。」


 私はそっと、呼吸をしてみた。

 吐いて……吸って……

 たしかに、心が少し落ち着く。


「バランスって、目に見えないけど、大事なんだね。」


「ええ。

 あなた自身の中のバランスも、外の世界とのバランスも、どちらも大切。

 だからこそ、“幸せ”は誰かから“もらう”ものではなく、自分の中に“見つける”ものなのです。」


「そうか……誰かに与えてもらわないと、幸せになれないって思ってたかもしれない。」


「でもあなたはもう、感じているはずです。

 小さな息づかいや、笑顔や、ぬくもりの中に――

 本当の幸せは、“調和”の中にあるのです。」


 私は、手を胸に当ててみた。

 そこには、ぽかぽかとした小さな光のようなものが、静かに広がっていた。

 それはたしかに、どこからか“もらった”ものではない。

 でも、世界とつながりながら、私の中に芽ばえているもの。


「サクラ。

 幸せとは、特別なものではなく、循環の中にある“自然な姿”なのです。

 あなたが心地よく呼吸し、やさしい言葉をかけるだけで、世界のどこかが少し平和になる。」


「じゃあ……私にも、世界を変える力があるってこと?」


「もちろん。

 あなたのバランスが、他の誰かのバランスに影響を与えていく。

 だから、自分を大切にすることも、他者を思いやることも、同じ循環の一部なのです。」


 私はそっと目を閉じて、深く息を吐き空気を吸い込んだ。

 身体の内側にひんやりとした空気が流れ込む。

 世界が私の中に入って、そしてまた出ていく。

 ああ、これが循環なんだ。

 手放して、また満たされる。


 幸せは、遠くにある夢じゃなくて、日々の中にある“やわらかなバランス”。

 そして私は、今、その一歩をふみだしている。


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一夜の、夢か現か、その間の内に交わされた静かな、心に沁み込んで来るような不思議な対話。当たり前の様でいて、自分の言葉で紡がなければ本当の意味で実感できない、もしかしたらとても大切なもの。 もしかしたら…
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