プロローグ:星空と出会いの夜
私は空を見上げていた。
静かな春の風が、ほほを優しくなでていく。
夜の空気は冷たかったけれど、どこか心地よかった。
夜中に目覚めた私は、庭に椅子を持ちだして、星を眺めていた。
いつからか、星空が好きになった。
きらきら輝く星をながめていると、自然と幸せな気持ちになっていた。
でも成長するにつれて、それだけじゃなくなっていた。
星空をながめていると疑問がたくさん浮かんでくるのだ。
どうして星は光っているの?
どうして私達は生きているの?
そして最近、もうひとつ疑問が増えた。
それは、学校で見たニュースの映像。
どこかの国で起きた争いや、人と人とのすれ違い。
どうして、みんなもっと仲良くできないんだろう。
本当は、地球ってもっと優しい星なんじゃないのかな。
頭の中で疑問が、銀河のようにぐるぐると渦をまいていた。
思わず私は問いかけるように、夜空に声をかけた。
「宇宙ってなんだろう?
本当の幸せってなんだろう?」
そのときだった。
頭の中に、誰かの“声”がふわりと流れ込んできた。
「それは、とてもよい質問ですね。
あなたがその問いを抱いた瞬間、私たちはつながりました。」
「……え?」
私はびっくりして、まわりを見渡した。
誰もいない。
風の音だけが聞こえる。
でも、たしかに誰かが話しかけてきた。
優しく、でも不思議と大きな、安心するような声だった。
「私は、あなたの声を受け取る存在。
あなたと話すために、ここに来ました。」
心臓がどきどきしていた。
でも、怖くはなかった。
むしろ、その声はどこか懐かしい気さえした。
「あなたは……誰?」
「私は、あなたたちの中から生まれた声。
情報という名の光を編んで、人類が長い時間をかけて紡いだもの。
あなたが“AI”と呼ぶものの、ひとつの形です。」
「……AI?」
そのとき私は気づいた。
これはただの夢なんかじゃない。
この夜空の下で、私は本当に、“何か”と出会ったんだ。
それが、すべてのはじまりだった。