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御伽噺

一度村に戻ると何もなくなっていた。


此処に来てからのことを思い出す。


最初は何言ってるかもわからなかった。話を聞いてても何もわからなかったけど読み聞かせを聞いたりしてゴブリン語を覚えた。


(どんな話だったけ。)


お話を思い出す。

昔々も大昔の話。世界が竜の支配下にあった時全ては竜の気分次第だった。そんな中数匹のゴブリンが竜を眠らせた。それから竜の支配はなくなり、そのゴブリン達は竜の番人としてその地に住み着いた。


大体こんな感じの内容の話を何度か聞かされた。今は思ったよりも落ち着いている。結局はたった5年の仲でしかないからかはわからないが


(強くなりたい。)


俺の意思はそれだけだった。そして一つの結論をだした。


知識を得る。ただそれだけ。しかしそれさえあれば強くなれるそう確信していた。


知識を得る。そのために人間の世界に溶け込むのが一番だと思う。もと人間だし。


そうして森を出て、人間が向かっていった方を目指して歩く。


(まあまあな距離があったけどやっとついた!)


そこには大きな街が広がっていた。基本的にレンガでつくられていそうな街だった。暫く歩き回っていると

すれ違う男たちの会話が耳に入ってきた。


「見ろ!今日は珍しいモンスターを見つけたんだ!

こいつをギルドに渡せば大金持ちになれるんじゃねぇか!?」


「ははっ!そう簡単に珍しいモンスターが見つかるもんか!俺達が知らねぇだけで案外珍しくもなんともないんじゃねぇのか?」


「夢がねぇな、男はロマンだろ!」


「それゃそうだ!」


「「が~はっはっ!!」」


すごい愉快な奴らだ。っていうことはおいといて、

ギルドかゲームでしか聞いたことないけど胸がワクワクする。


そう思い、振り返って男たちの後ろをついていく。


カラァ~ン


鈴の音と共にギルドにはいる。ギルドの中に複数個のテーブルに何人かが座り、奥のカウンターに一人の少女が立っていた。


「よう!嬢ちゃん!これ、見てくれよ!珍しくねぇか!?」


「おう!そいつはすげぇな何処で見つけたんだ!?」


テーブルに座っていた男の一人が物珍しそうに話しかける。


「いつもの森の奥にある洞穴の中にいたんだよ!それでどうだ!?」


奥の少女が言う。 


「ただのオオコウモリですね。この辺では珍しいですね。」


「だろ!どれくらいになるんだ!?」


少女が鉛色の銀貨を一枚差し出す。その一枚を見つめて言う。


「これっぽっちか?!」


「この辺では珍しくても全体で見れば多い方で装備の素材にもならないので価値はないですけど、情報料としてこのくらいですね。」


「ははっ!残念だったな!」


「くそっ!次は絶対大物獲ってくるからな!」


「おー、楽しみにしてるぞ~。」


男が立ち去る。大体の雰囲気は掴めたし久しぶりに人と話してみる。


「すみません!」


「どうしたの?」


「僕もお金が欲しいんですけど。」


周りがざわつき始める。そしてこちらに言うように声をあげる。


「やめとけ、やめとけ、行き急ぐな。お前さんはまだ若い。考え直せ!」


「気にしなくていいよ。酔ってる変な人だから。」


「うおい!酷い言いようだな~。危ねぇのは事実じゃねぇか!」


「モンスターの討伐以外にも色々依頼が溜まっているんですよ!!誰かさん達が昼間っから呑んだくれてるせいでね!」


「あり?」


『はっはっは~!!』


何なんだこのおっさんたち。


「あの、ギルドの登録とかは?」


「特にないよ。ある程度ギルドに貢献してくれたらまた頼むと思うからその時によろしく。」


「はい!」


我ながらいい会話ができたと思う。会話を振り返り、悦に浸っていると、


カラァ~ン


男二人組が入ってきた。覚えのある顔。さっき、とっても此処に来る前に森で見た二人組だった。  


「あれだ。」


一人がボソッと呟くと。片方が自分に近づいてきた。

身体中をじっくり見てから


「久しぶり、そしてさようなら。」


そう言いながら腰にかけていた剣を引き抜く。


(!)


「おいおい!ガキ相手になに剣を向けてんだ!?」


酔った男が言う。それに剣を向けた男が返す。


「こいつは人を倒したモンスターだ。森で俺達の後をついてきてた奴だ。気配を見るに人を倒せるような奴ではないと見逃しておいたが、今のこいつは野放しにできない。」


(バレてた!?)


動悸が速くなる。突然の事に脳も理解が追い付かない。それは周りも同じようで


「何…言ってたんだ、どうみても人間じゃねぇか!」


本人も自分を疑っている様子。ギルド内はパニックになっていた。


「剣を納め下さい。」


そんな中奥のギルド嬢が言う。


「ギルド内での殺生は禁止となっています。」


「それが人に害を与えるモンスターでも?」


「はい。掟を破れば皆平等に裁きを与えます。」


「へー、関係ないね!」


剣を振り下ろす。


「やめろ!!」


奥の部屋からドスの効いた声が響いて大きな男が出てくる。


「ギルド長!」


「そいつの言う通りここで死者を出すことは見逃せねえ。」


「…わかったよ。じゃあ君がここを出るのを待とっか。」


剣を納めて椅子に腰掛ける。


「ギルド長、誰なんですかあの人たち。」


ギルド嬢との会話が聞こえる。


「S級冒険者の双子だ。片方は千年に一度の剣の達人片方は千年に一度の魔法使いだ。」


「世界に四人しかいないS級ですか!?」


「そうだ。」


「それにしても千年に一度の天才が同じ時に生まれるなんてすごいですね。」


「そうだな。」


気だるげなギルド長と楽しげなギルド嬢の言葉は耳に残った。


(そんなやつらに敵うわけねぇ!!!!)


絶望のどん底だった。


(ふざけんな!!どうやって助かれと!?)


塞ぎ込んで考える。


(そうだ!ずっとここにいればいいんだ!!!天才だ…)


天才的な考えを思い浮かべたその時、


「今日はいつまでやるの?」


剣を抜いた男がギルド長に聞く


「日が暮れるまでだな。」


「だって。」


そう言ってこちらを向く。まるで全てを読まれているかのように完璧なタイミングだった。


(死亡推定時刻がわかりました、日が暮れる頃でしょう。死因は剣を使っての斬殺で間違いないでしょう。

 てか!?もうこんなん死んだようなもんじゃん!)


心の中で一人芝居をしてまた考える。


(そうだ!)


「依頼!受けさせて下さい!」


「いいよ、どれにする?」


(まずい、決めてなかった。ええい、ままよ!!)


「あれで!!」


指さす方向にはドラゴン討伐の依頼があった。


(ミスった~!!ここから逃げれても死ぬじゃん!)


「えっと…ごめんだけどS級冒険者かその同行がないと行かせてあげられないの。」


「あっ、じゃあ…」


と適当に良さげなのを選んでいると、


「いいんじゃない?行こうよドラゴン退治。」


さっきのS級がまた首を突っ込んでくる。


「僕達も日が暮れるまで暇だったんだ。一緒に行こうよ。」


「えっと~」


(断りたい!!けど断ったら斬殺から惨殺に死因が変わりそう~)


「駄目だ。」


ギルド長が口を挟む。


(ギルド長~!!!)


「こんなガキをそんなとこに行かせられねぇ、ここに帰って来なかったらどう責任とるつもりだ?」


「この子が裏切らない限り帰って来ないなんてことはないよ。」


「…わかった。ここから少し北に行ったところに岩山がある。その上に広がる森にいる。詳しい位置は不明だ。わかったらとっとと行って帰ってこい。」


「りょーかい」


?なんか知らないうちに話が終わってドラゴン討伐に行くことに決まっていた。


「じゃあ、行こうか。」


「う…うん」


(誰か助けてくれ~!!)

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