1話 転生そして
見惚れる程の青い空。
雲一つない晴れ晴れとした日だ。
こんな日は、ゲームするか。
「ふぅ、やっぱ冒険は浪漫あるな~。」
冷蔵庫に向かう。
「あれ、もう酒なかったっけ。買いに行くか~。」
外に出るとすっかり夜になっていた。
ピーポーピーポー
パトカーのサイレンが聞こえる。
コンビニに着く。
酒を手に取りレジに向かう。
週刊紙が目に入り気になって拝見する、勿論立ち読み
(へ~。藤井八冠だって?天才ってより神だな。)
酒を買ってコンビニを出る。
(俺も何か才能があればな~。)
横断歩道を渡りながら考える。すると
ガンッ!!
(は?信号赤だろ。ふざけんな。)
てか、やば
だんだん痛みが脳に伝わる。
ピーポーピーポー
よかった。もう救急車が来たのか。
なんとか助かりそうだ。
「お前らは犯人を追え!」
警察?先に救急車を呼んでくれよ。
「時速100kmはでてた、事態は一分一秒を争う!
人命第一だ!!」
100kmって
「大丈夫ですか!?」
大丈夫に見えますか?
「…!!」
もう何も聞こえない。走馬灯が見える。悪くはない人生だったけどわがままを言えるなら総理大臣にでもなりたかった。何も言えないけど。
「…」
だから何も聞こえないって。
「聞こえるはずですよ。」
「えっ!?」
聞こえる。助かったのか。あの状況から。
「あの大変申し上げにくいのですが、死んでます。」
「えっ、?お…お医者さん…ですよね。」
「私は神です。」
「へ~。あの何度恨んで何度感謝したかも覚えてないあの?」
「多分そうです。」
「じゃあここはあの世か。地獄じゃなくてよかった~。神様ありがとう。」
「そろそろ本題にはいっても宜しいでしょうか?」
「あっ。はい。お願いします。」
怒ってそう。静かに怒るタイプだ。
「貴方は選ばれました。」
「何に?」
「転生することに決まりました!」
「おお!!何処に!?」
「勇者や魔王のいる大冒険まったなしの世界です。」
「おっしゃー!!それで何を持っていけるの?」
「記憶です。」
「きおく?」
「今持っている記憶を持って行けます。」
「他は?」
「では、行ってらっしゃ~い。」
えっ??体?が吸い込まれる。
記憶って最低条件かと思ってたわ。
もうストレスに怯えなくてもいいのか。楽しみだな。
母親は美人がいいな。
目を覚ます。
ん?気のせいか親が化け物に見えたわ。
なんか顔面緑だったし。踏ん張りすぎて緑になったんか?もう一度目を開こう。
パチッ
ごぶりん?ゴブリンに転生したのか!?あの最弱の?
なんてことだ人生いや、ゴブ生初の二度見が母親の顔とは。この先が思いやられるぜ。
「▼▷△▧▶▼」
何言ってるかもわかんないし。
5年後
俺も五歳か~。感慨深いぜ。
俺はゴブリンの村みたいなところに住んでる。
森に囲まれた隠れ里みたいでワクワクする。
「夕御飯よ~。」
そうそう。5年でゴブリン語も理解した。
自分で言うのもなんだけどゴブリンの中だと天才なんじゃないか?
そろそろ冒険にでてみたいな。
「ギャーーー!!」
外からゴブリンの悲鳴が。
「隠れて!!」
母親に言われるがまま屋根裏に隠れる。
「此処はなんかいいもんあるかな~。」
人間?人間が家中を漁る。
「か」
黙って口を塞がれる。
「おっ、金貨あるじゃん。ラッキー」
人間が金貨を持って家をでる。
人間が家を出て数分して外に出る。
「お父さん。」
ゴブリンの死体が転がっていた。
母が森を出ようとする。
「お父さん埋めてあげないの?」
「モンスターは死んだら魔力が散って死体がなくなっちゃうの。」
「そう…なんだ。」
「森に隠れて!!」
「なんで」
「いいから!!」
茂みに隠れる。すると鬼が現れた。角の2本生えた鬼。
「金貨を出せ。」
「金貨はありません。今回だけはお見逃しください。」
「なんだと?」
「お父さんも死んでしまったんです。」
「そうか。可哀想に。だがそれとこれとは話が違う。」
「どうか。」
「お前らの生きる価値は金貨を魔王軍に献上することだ。それが出来ないなら死ね。」
《炎槍》
「うっ…」
「カスみたいな経験値だ。そしてそこのお前。」
バレた!?
必死に姿を隠す。
「カスの経験値に免じてお前だけは見逃そう。だが次は金貨を用意しておけ。」
そう言い残し鬼が消える。
なんなんだあの化け物は。
母親の元に寄り辺りを見回すとゴブリンの死体がいくつも転がっていた。
なんで。俺が、みんながなにをした。
なんなんだ。
なんでなんでなんでなんでなんだよ!!!!!!
誰か答えてくれよ…
幸せだった昔の方がよかった。
記憶がなければ俺はここまで苦しまなかった。
神との会話が甦る。
俺は浮かれてた。俺が悪かったのか。
どうするか。
勇者や魔王…
道は決めた。ここにきた時点で決めるべきだった。
楽しく明るい冒険の夢はおわりだ。俺は…
最強になる
「…~ここだ。」
人の声が聞こえる。
二人の人間がやって来た。
「ここら辺から鬼の気配がしたはずなんだが。ゴブリンの死体ばっかだ。」
「さっきすれ違った人間がやったんじゃね?どうせ別の個体が出現するし無視していいだろ。それにしてもここまでする必要はねぇがな。」
「見ろこいつだけ死に方が違う。貫かれた後がある。」
「鬼はまた瞬間移動で消えたのか。まったくいつになったら魔王討伐できるのやら。」
「鬼は3強の一人に過ぎない。時間に余裕はある気長に行こう。」
(3強?)
二人の会話は興味深い内容だった。
二人が森を去った。その後ろに着いて森を出た。
「これからどうするよ。」
「またギルドのミッションでも漁ろう。」
「そうだな。」
その会話を最後に姿が見えなくなってしまった。
(これからどうするか。)
路頭に迷う。すると、
「なんだこいつさっきのゴブリンの生き残りか?」
家を荒らしゴブリン達を殺した張本人である人間に出会う。
「お前もとっとと経験値になれ!!」
殺意の籠った刃がゴブリンの姿を映す。
襲い来る人間に恐怖ししゃがみこむ。奇跡的に刃が肩を掠める。
「避けた?変異体か!?レベルは…2、普通のゴブリンのはずだ。偶々外しただけか。」
相手の人間は鎧をガチガチに纏った騎士のような格好で西洋の刀を持っている。
それに対しゴブリンはふんどし一丁で武器すらない。絶対的な状況である。
(一か八かやってやる。仇討ちだ!!!)
《炎槍》
しかし、なにもおこらなかった。
(くっ、チート能力位付けとけよ)
「なんだ?やる気か?こいよ。」
へらへらしながら言う。構えるのを止める。
(そう言うならやってやるよ。)
走って股の間を潜り抜け後ろから渾身の一撃を与える。
《千年殺し!!!!》
見事に敵の急所を捉えた。
レベルアップ
身体中から力が湧き出る。勝ったんだ。
人間が倒れたかと思うと
ゴトン
棺桶になった。
(どういうことだ?)
考えていると
「まじでやられてんじゃん。」
(仲間!?)
一度その場を離れ様子を伺う。
「早く教会に連れていこう。」
「そうだな。そうしよう。」
男と女がそう話、棺桶を担いで去る。
(なんだったんだ?)
それにしても力が湧き出る。湧き出過ぎて溢れそうだ。というより身体中が熱くなってくる。内臓が神経が焼き切れるような激痛が走る。
(なんで、レベルを上げただけで、死ぬ…のか)
…完了。…可能。
脳に直接声が聞こえる。聞き覚えのある声、そう神の声が聞こえる。
なにが起きたんだ。
そんな問いに答えは返ってこなかった。
(取り敢えずレベルって確認出来るのか?)
そう考えてやり方を探す。
「出でよレベル!レベル確認!テレレテッテッテ~。」
(…)
「ステータスオープン」
ステータス画面のようなものが見えるようになった。なんてありきたりな呪文なんだ。面白味のない。
そんなことより、レベルは、15か、いいか悪いかまるでわからないな。他のも見るか。え~っと、
技:千年殺し
はは、技会得しちゃったよ。他は、ん?
種族:擬人
擬人?ゴブリンじゃないのか?少し考え湖に向かい顔を確認する。
「に…人間になってる!!!!!」
しかもすごいイケメン。というより中性的な見た目になっている。多分進化した時のゴブリンとしての年齢が関係してるのか?てかホブゴブリンとかじゃないんだ。人間の記憶があるから人よりの進化になったとか?
まあそれはさておき先ずは魔王を倒す!