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まずは情報収集から

とりあえず状況を整理しよう。


ここはヴィンドール王国という異世界で、目が覚めたら私はエミリアという女性に転生してしまった。


転生したということは、元の日本人だった私は死んでしまったということだろうか。

そのことは特に未練も無いし、むしろ生き地獄のような日々だったからすっきりしているくらいなんだけど。


強いて言うなら、私がこうなった以上途中だった業務は誰かが引き継ぐだろうし、その人にしわ寄せがいかないかが心配だ。

あ、あと遺体は出来るだけ早めに見つけて欲しい。誰にも見つからずひっそりと腐るのはちょっと、いや結構嫌だし。


とにかく問題は、私がどこの誰に転生したのかということだ。


1番あり得る(あり得ないけど)のは、自分が読んでいた、もしくはプレイしていた何かに転生したというやつだろうか。というかそれ以外の可能性が思い浮かばない。


日本人の私はいわゆるかなりのオタクで、特に少女漫画や乙女ゲームなどの恋愛ものが大好きだった。

ヒロインとヒーローの恋模様は見ていてキュンキュンするし、彼氏いない歴年齢だった私はいつかできるであろう彼氏との日々に想像を働かせていた。まあ、その彼氏ができる前に死んでしまったけれど。

とにかく、私が異世界に関係があるのはそれくらいだからだ。


しかし、そうだとしても。

「一体全体、どの作品なの、、、?」


異世界ものは大量に読んだし見た。

そしてそれだけ沢山長い西洋のような名前も見てきた。


お陰で、エミリア・ガーデンシュタインがどの作品のキャラクターなのか全く検討がつかない。

こんなに美人だけれど、この見た目もどこか見たことあるくらいで正直全く思い出せない。


いや、むしろメインキャラではない、ただのモブの可能性もある。


もしそうだったら、下手に悪役令嬢に転生するより面倒だ。


悪役令嬢の場合、作中で名前が出ている分まだどこの誰か、それにどんな世界観か特定しやすい。そこで来たる展開を予測して回避することも一応できる。


でも、作中で一度も名前の出ていないモブの場合、ここがどこかわからないまま無用なイベントや話の流れに巻き込まれる可能性がある。場合によっては死ぬかもしれない。


(この世界でももう一度命を落とすことだけは絶対嫌!なんとか作品と世界観を特定しないと…!)


そのためにはまず情報収集だ。


きりっとして顔を上げた先には、先程のメイドが不思議そうな顔をして立っていた。


「…ごめんなさい。まだ少し頭がぼーっとしていて…。夢じゃなくて現実だってはっきりさせるために色々教えてほしいことがあるのだけど、いい?」


かなり苦しい切り出し方だが、これ以外に思いつかないので仕方がない。


「かしこまりました。なんでも仰ってください」

「ありがとう。ええと、まず貴方のお名前は?」


相手に質問するのならば、まずは最低限名前を把握しておくのが礼儀というものだろう。


「アンリと申します」

「そう、アンリ。手始めに、私と私の家族のことについて教えてちょうだい。私の年齢は?学院などには通っている?」


「お嬢様は今17歳でいらっしゃいます。学院などには通っておらず、この侯爵邸で家庭教師の方とご一緒に日々学んでおられます」


年齢は大方予想通りだ。

何せこの容姿の美しさと、社会人の私には無かった肌のハリがそれを物語っている。


(学院に通っていないということは、舞台が学院のものは除外できるはず…。他にも色々聞いてみよう)


「わかったわ。次に私の家族について教えて。ええっと、まず私の家族は何人いるの?家族関係は良好かしら?」


「エミリア様にはお父様であるガーデンシュタイン侯爵と奥様、それにお兄様であるカイン様がいらっしゃいます。家族関係は非常に良好で、時間があるときは皆さまで旅行に行かれたりなどもされています」


なるほど。

ということは、家庭内で複雑な立場にあるキャラクターではなさそうだ。


(私がメインキャラだって仮定した上で考えると、悪役令嬢の線は薄そう…。あ、でもむしろ甘やかされて育ったタイプもいるから油断はできないけど)


本音を言うと、主人公と少し関わりのあるモブくらいが正直1番楽なのだが。


とにかくもっと情報が必要だ。大方絞り込めたけれど、まだまだ候補は沢山ある。


私は朝食を食べた後に、この侯爵邸の書庫に向かうことにした。

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