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第二十八話 私だって……

 オリヴィア改め、ミラが従属されたことをなんとか隠蔽で隠してもらい、これで問題はなくなったと思っていたら、アンナがこちらをジッと見てる。

「どうした?」

「ずるい……」

「は? ずるいってなにが?」

「オリ……ミラだけずるい! 私も名前を変えたい!」

「ああ、それか。それなら、アンナの好きにすればいいだろ。なにもずるくはないと思うが?」

「なら、私にも名前を下さい。いいですよね?」

「なに言ってんの、アンナ!」

「だって、ミラだけなんてずるいじゃない!」

「ずるくない!」

「ずるいわよ!」


 ミラとアンナが『ずるい』『ずるくない』と言い合っていると、アリスが面白そうに言う。

『ふふふ、面白いことになったわね』

『ふざけるなよ! どうすんだよ……』

『いいじゃない。その子も名付けてあげればいいじゃない』

『お前、それだとアンナまで俺に従属することになるじゃないか!』

『だって、それがあの子の願いなんだから、応えてあげなさいよ』

『アンナの願いって……なにかの間違いだろ?』

『ふぅ、鈍感もここまで来ると可愛そうになるわね。いい加減気付いてあげなさいよ』

『でも……』

『いいから! 早く名付けてあげないと、他の子達がこの騒ぎで集まってくるわよ!』

『でも、他のメイドには『アンナ』として、もう知られているのはどうするんだ?』

『そんなの、通称『アンナ』にして、本名を『アンナ』じゃないのにすればいいのよ』

『そんなのでいいのか?』

『いいのよ!』

 アリスの言う通りなら、通称『アンナ』と呼べる名前にすればいいってことだよな。


 まだ、言い合っているミラとアンナの間に立ち、言い合いを止めさせる。

「なに?」

「止めないでよ!」

 まだ言い合いを続けようとするアンナの両肩に手を載せるとアンナの顔をジッと見て告げる。

「アンナ、君を『アンジェリーナ』と名付ける。いいかい?」

「はい。私はこれから『アンジェリーナ』を名乗ります」

 そう、アンナが言った瞬間にミラの時と同じ様に雰囲気が変わる。


「やっぱりか……アンナ、君にも『隠蔽』を覚えてもらうよ」

「え~このままでいいのに……」

 アンナを少し強めに見ると分かりました頷いたので『隠蔽』スキルをコピーし使ってもらい、鑑定すると『従属』が隠されたことを確認出来た。


「うふふ」

「ふ~ん、随分うれしそうね。アンナ」

「そりゃあね……」

 アンナがなにか言いたげにこちらを見る。


「はぁ、ほら。もういいから。昼食を済ませたら、ここを引き上げるぞ」

「え~早くない?」

「もう、十分だろ。それにお客さんもいるみたいだしね。フク、ちょっと伝言お願い」

「いいよ。なんて言えばいい?」

「ああ、それはな……だ。頼んだぞ」

「うん、分かった。じゃ行ってくるね」

 フクはその場で転移する。


「こんにちは。兄ちゃんからの伝言を言うね。『お役目はここまでだ。これ以上、追ってくるのなら直接会って話すことになるぞ』だって。じゃ、ちゃんと伝えたからね。バイバイ!」

 追跡者の背後に転移したフクはシンからの伝言を話し終えると、元の位置に転移する。


「行ってきたよ。返事は聞かなかったけど」

「ああ、それでいい。ありがとう」


「シン、フク、出来たわよ」

「ああ、分かった」


 アンナ達が作ってくれた昼食を済ませると、洞窟からの撤退作業を始める。

「撤退と言っても、なにも持っていく物はないけどね」

「そう言うな。なるべくお前達の痕跡を消すのが目的だ」

「ああ、そういうこと。なら、アイツらに奪われた私達の荷物も持っていかないとね」

「荷物だと? そんなこと言ってなかったじゃないか」

「だって、聞かれなかったし……」

「とにかく、その荷物は彼女達の目に触れるのはマズいな。フク!」

「はい。全部収納でいいの?」

「ああ、それでいい。アンナ、案内を頼む」

「分かりました。フク君、こっちよ。着いてきて」

「うん」


 フクに荷物の回収を頼み、ミラと一緒に忘れ物がないかを見て回る。

「山賊の割には、なにもないな。いや、なさ過ぎる」

「シン、どういうこと?」

「なあ、山賊がなんでこんな森の奥にいたと思う?」

「なんでって、人を襲うからでしょ?」

「そうだよな。でもな、この森に好き好んで入ってくる奴がいると思うか。俺なら、どんな理由があろうと安全な街道を選ぶけどな」

「う~ん、分からない。なにが言いたいの?」

「だから、物盗りが目的なら、こんな山奥じゃなく街道沿いにアジトを構えるものじゃないか。少なくとも誰も通らない。強い魔物がいる森の奥になんかにはアジトは作らないだろ」

「そう言われればそうね」

「それにチャーリーの隠密もおかしい。俺は、ここの場所は教えていない」

「……え? ちょっと待ってよ。なら、この場所をお兄様は最初から知っていたと言うの?」

「ああ、そう考えるのが自然だな。ひょっとしたら、最初からこの計画に加担していた可能性もあるな」

「なんで? お兄様がそんなことをして、なんの得があると言うの?」

「さあな、自分に都合の悪い連中が纏めて始末出来ると思えば、そうでもないだろ」

「……」

「お前が山賊に誘拐される。そして、それをチャーリーが討伐するってのはどうだ?」

「……」

「そして、妹であるお前を助けようとしたが、お前は間一髪で間に合わずに殺されていた。チャーリーは、誘拐犯の山賊を纏めて討伐した。そして、その手柄を元に領民に報告する。そして、父母がお前を始末しようとしていたことも告発する。そうやって、父親を領主の座から引きずり下ろし、自分はその後釜に座る。まあ、父親は口を聞けない様にするとかしておけば、実子でないことを言えないから、なにも心配することはなくなる」

「……嘘よ。お兄様は私が生きていることを喜んでくれた」

「でも、帰ることは許してくれなかった」

「……いつかは帰ってきてもいいと言ってくれたわ」

「でも、帰ってくるなら始末すると言われた」

「……」

 ミラはなにも言えなくなったみたいだ。唯一、自分を心配してくれたお兄様が加担していたかも知れないとなれば、ショックも相当だろう。


「兄ちゃん、終わったよ。ん? ミラはどうしたの?」

「ああ、なんでもない。気にするな」


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