限界の悔しさ
宿へ戻ると丁度食堂が開いていた。
「今日の夕飯は『ホワイトシチュー』ですよ」
ほかほかのシチューを木で出来たスプーンですくい口に入れれば途端に脳を刺激が走る。
美味し過ぎてシチューをすくう手が止まらない。
だがここで避けようのない事態が起こる。
【満腹】状態だ。
まだ半分以上残っているのに、こんなに食べたくて堪らないのに、私の胃は限界を訴えている。
これ程までに悔しいことがあろうか。
いや、ない。
悔し涙で眉間に皺を寄せながら、余った分は部屋に持ち帰る。
ピュー、ピュピユー…
閉じた窓を開け、口笛の合図を送れば上手く小回りして私の腕にシーク降り立つ。
「よしよし。偉い子だ」
翼の音を最小限に立ち回ったシークの頭を誉めるように撫でるとクルクルと求愛行動を取る。
森に住んでいたときはシークだけが唯一の話し相手だった。
だからほとんどの意志疎通はできる。
「今日の夕飯だ。私は食い切れないからシークが食べるといい」
まだ少し温かいシチューをシークの前に出すとゆっくりだが綺麗に完食した。
「美味しかったか?」
シークの羽を撫で膨らんだお腹を見て笑ってしまう。
満腹でうとうとしているシークはそんな私に怒る気力もないようだ。
毛並みを洗いシーク専用の櫛で解かす。
いつもお決まりのルーディーンはしっかりとシークを寝かしつけた。
寒くないように重くならない程度の毛布を被せれば心地良さそうな鳴き声が耳を伝わる。
特に眠気もない為武具の手入れや点検、整備に時間を使う。
日頃から世話になっている物だけに扱いは慎重だ。
こういう些細な行動が後々大きく繋がることを私は前もって知っている。
それでも時間が余ったので魔道具の設計図を何枚かの紙に描いていく。
空き時間の暇潰しに丁度良く、出来の悪かった昔のモノを幾つか改変したりして遊ぶ。
結局この日眠りについたのは日が昇る一時間ほど前だった。