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転生少女の覇道または邪道  作者: 濃姫
転生少女の巣立ち
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寛容な人間

 「手当たり次第何でも良い。ただ私を容姿で判断しないことが条件だ」


 「それは無理があるんじゃないかな。君はどうみてもまだ幼い子供だ」


 困ったようにやれやれと呆れ笑う男。正直言って今ここでこのバーごと燃やしてやってもいいが私は寛容なのだ。


 「どの部位から燃やしてほしい?」


 だからこそ此方も綺麗な笑顔で返す。


 「そのよく回る下世話な口か? それとも役割を真面にこなすことすらできないその目か? いや、もういっそ脳から燃やして新しく作り替えてやってもいいぞ?」


 わざと大きく口に出せばバーの空気に亀裂が走る。


 「…君にやれるの?」


 今度は笑顔を無くし、神妙な顔で言い放った男の顔面を手で鷲掴む。


 その瞬間バーにいた人間が一斉に私のもとへ駆けるが時既に遅し。


 ボウッ……


 腕から灯った火は男の顔面を容赦なく焼き潰す。何やら絶叫が聞こえるが手を緩めるつもりは毛頭ない。その異様な光景に迂闊に手を出せず傍観する同類ら。


 暫くして目も口も鼻も消えてしまった男から手を離す。


 「お客様、何をなさったのかご理解のほどはなされていますか?」


 「安心しろ。殺すつもりはない」


 マスターが恐らく全力の殺気を出し威圧するがそんなことはあっけらかんと腰に巻いたポーチから一つの瓶を取り出す。


 「さっさと話せ情報屋」


 瓶の中身を男の顔目掛けて溢す。


 瓶から流れた液体が掛かるとその箇所から男の顔は修復され、先程のおぞましいほど焼き爛れた顔は見る影もない。


 「最上級…、ポーション」


 ざわざわとひしめくバーと己の身に何が起こったのか未だ真面に状況判断もできない無能。 

 

 「それで、誰が幼い子供(ガキ)だと?」


 こうまで言ってようやく自分の置かれた状況を理解した男は少々の恐れと自信への嘲笑を表情に出し深く頭を下げた。


 「申し訳ございません。情報屋とあろう人間が見た目だけで判断した結果がアレです。どうかお情けを」


 「御託はいい。早く情報を売れ」


 「三日後の早朝から此処から西に三十km進んだハーリア街の領主が募集しています。彼処(あそこ)は隣国との国境なので常に人手不足ですから特に年齢制限はありません。雇う条件としては犯罪歴がないこと。ご希望に沿えましたか?」


 「値段は?」


 「…まさか、支払って頂けるんですか?」


 此処に来て男の呆けた顔は始めて見た。しかしそんなことを口に走るとは一体私を何だと思っているのやら。


 「当然だろう。相応の品には見合った対価を、だ」


 少々苛ついた態度を見せると男はそれ以上何も言わなかった。


 「この程度の情報なら銀貨一枚で結構です」


 小袋から銀貨い一枚を取り出し机に置いて席を立つ。それにしても一刻も早く帰って欲しそうな雰囲気には腹が立つな。


 「あ、お客さん。ドリンクはいいんですか?」


 男の目線は私が席を立った机の上に飲み残したドリンク。


 「あー、…ついでに腕の立つ仮面屋の場所を教えろ」


 「え? あぁ、このドリンクと引き換えという訳ですか」


 特に否定もしなかったのが肯定の表れだ。


 「ハーリア街のスラムに『D』がいます。その名を言えば案内されるでしょう」


 聞きたい情報もある程度買ってようやくバーを出た。まだこの身体に不健康な酒と煙草の空間は受け付けられないようだった。

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