転生少女の初殺し
森の薄暗い細道に入った時に「それ」は起きた。
ガサッ
葉が衣類にこすれる音が複数鳴り、いかにも盗賊崩れの恰好をした男らが草木の中から掻きわって出てくる。
下品た笑みを浮かべる彼らに少し機嫌が上がる。
傭兵になる以上人を殺す経験はしておきたかった。
しかし下手に殺してしまえば面倒ごとになるのは分かっていたので都合の良い練習台が必要だったのだ。
彼らの装備を見る限り下っ端の寄せ集めのようなものだろう。
リーダー格と見られる男がいないとなれば巨大な組織というわけでもない。
完全に包囲し油断しきって手を伸ばす男の腕をナイフでボトリッと切り落とす。
数秒遅れて絶叫した男に事態の異常さを悟った他の男達が一斉に飛び掛かるが連帯感の欠片もないそれにナイフ一本で応戦し一人一人確実に命の芽を摘んでいく。
最後に残ったのは最初に腕を切り落とした男だけ。
なお絶叫し続けは地に尻をつけ座り込み、恐怖に排泄物を垂れ流している。
近寄りたくはなかったため魔術で殺そうとしたがふと疑問に思いピタリと動作が止まる。
「お前、何故私を狙った?」
「ヒッ! お、俺達は呑気に歩く極上のタマがこんなイかれ野郎だなんて知らなかったんだ! ヒィイ、死にたくねぇヨォ!」
「結構だ。もういい」
無詠唱で水魔法を男の口元に発動させるともがもがと喉を搔きむしり苦しみ悶えながら死んでいった。
いっそのこと一思いに殺された方がまだ良かっただろう。
ただ私は、最大限の尊重として「生きる時間」を引き延ばしただけだ。
例え男が「死にたい」と口に出していれば一瞬で済ませたものを。
装備や金目の物をあらかた剥ぎ終わり最後に男の言った言葉に思考を費やす。
「極上」の意味。
暑さにフードを取ったことで顔が露出しているが、人間の価値の基本は容姿が大きい。
まだ発展途上の身体では価値はまだ低い。早急に顔を隠す必要があるな。
街に着いたらまずは仮面を買うことにしようと予定を組み込む。