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3、ついに来た!ほら来た!やっぱり来た!

「二人ともステータスは確認した?」


私は机の下から這い出てくるのと同時に二人に尋ねた。


「はい。既に確認済みっす。」とデブ蔵が言うと「おいらも確認済みでやんす。たぶん予定通りでやんすよ。」


とチビ助もどうやら無事なようで一安心した。


「とりあえず、これはかなり不味い展開だと私は思う。予備バッテリーが生きてるうちに監視カメラを見ながらの


ミーティングをしましょう。」と私が言うと素早く二人の部員たちはノートパソコンで校舎内に仕掛けられた


隠しカメラの映像を出してくれた。校舎内にいた生徒たちは唖然としてその場から動けないでいる。


そんな中、教師たちが生徒たちに「体育館に集合せよ!」と大声で声をかけまくっていた。


そんな光景をモニター越しに見ながら私たちは会議を進行していた。


「まずは私たちだけはここからすぐに脱出します。反対の人はいますか?」と私が尋ねると2人とも賛成してくれていた。


「こんな校舎ごと転移してしまう組織なんて絶対に悪意しかないはず。したがって、私らは換金しやすいモノを


ここから奪って敵の隙を見て校舎外へ避難します。ゾンビパニック用に準備していたグッズも全て持っていきます。」


と私が言ったところでデブ蔵も発言してくる「部長。今回のケースはゾンビパニックのシュミレーションの


学校放棄verで動いてよろしいっすね。とりあえず、僕は別動隊として今から職員室横の倉庫に移動しますっす!」


と私が指示を出す前にすでに動こうとしてくれていた。「さすがデブ蔵!わかってるわね!この違法トランシーバーを


持って行ってね。以降の連絡はこれで行うこと。」と言って私は2人に違法トランシーバーを手渡した。


トランシーバーを受け取ったデブ蔵は部室を出て職員室横にある倉庫へ向かっていった。


部室に残った私とチビ助は台車に荷物を載せながらもパソコンのモニターの映像も作業の合間合間に確認していた。


台車二台に部室から持ち運ぶべきものを積み終えると同時くらいに体育館にも動きがあったので私とチビ助は


作業を一旦辞めてモニターに注目した。



先生たちに促されるまま整列している生徒たちが移っている不安になって


皆がざわついている。先生たちもどうすればよいのか全くわからないといった様子で困り果てていると


体育館の入り口から中世の騎士のような立派な鎧を纏った兵士たちがぞろぞろと乱入してきた。


生徒たちは一気にパニックとなり女子たちの悲鳴がキンキンと響いていた。


すると、兵士の中から人の良さそうな初老のオッサンが現れてパニックになっている生徒たちに対して


「どうか恐れないでくれんか。」とだけ声を欲した。


その言葉を聞き取れた先生と生徒の一部が悲鳴を上げている生徒たちに静かにしろと促して


数分で生徒たちは静かになった。それを見て再びそのオッサンが喋り出した。


「この度は勇者召喚の儀式で皆を巻き込んでしまい本当に申し訳ないと思っている。ワシはこの国の王である。


おそらくこの中に勇者様がおる。我々は魔王討伐の為に勇者様を召喚したのだ。関係のない者まで巻き込んだのは


申し訳なく思うのだが、こちらも切羽詰まった事態でな。許してほしい。魔王討伐までの生活はもちろん保障する。


当然、討伐後には元の世界にも帰還させよう。」と言ったところで王の後ろから王よりも年上に見える爺さんが


現れて今度はその爺さんが発言した。「皆さま、はじめまして。この国の主宰でございます。先ほど王様が


申したように皆さまの中に勇者様がいらっしゃるはずです。その確認をするためにご自身で『ステータス』と


喋ってみてください。すると、目の前に皆さまのステータスが表示されるはずです。そのステータスを見て


皆さまの職業とスキルをお近くの兵士たちに告げてくださいませ。ちなみに職業が勇者と記載されている人は


本日より貴族としての身分が確立されています。」と主宰が言うと同時に生徒たちからは次々とステータスという


声が聞こえてきた。それを見て私はトランシーバーでデブ蔵に「今からそっちに行っても大丈夫?どうぞ。」と尋ねると


「OKっす。校舎内はもぬけの殻っす。皆さん体育館に行ってるみたいっすね。どうぞ。」と返ってきたので


私とチビ助は一台ずつ台車を押しながらデブ蔵の待つ倉庫へ向かって無事に合流できた。


「デブ蔵。これは本格的にヤバい転移系だわ。私も色んな転移作品を見てきたけど、ここまで強引で雑なのは


初めてかも・・・。とりあえず、ここを出て隠れる場所は見つかった?」と言うと当然っす!って顔をしながら


デブ蔵はリアカーを引き私たちを校舎外へ誘導してくれた。職員室の廊下の突き当りには裏口があり、


そこから私らは校舎外へ出ることが出来た。そこはまさに異世界の風景が広がっていた。


アスファルトじゃない土の道路。どこまでも続く地平線。までは良かったのだけれど、この世界に似つかわしくない


日本の分譲住宅地の廃墟群が校舎の裏口から出てすぐのところにあった。


「デ、デブ蔵・・・。この廃墟群ってまさか・・・」私は急に恐ろしくなった。


「えぇ。たぶん、これがあのK県の謎の廃墟群ってやつだと思います。思わぬとこで一つの都市伝説を


完全解明しちゃいましたね・・・。とりあえず、ここにはもう誰も住んでないみたいなんでここに隠れましょう。」


と言ってデブ蔵は比較的きれいに残っていた物件に入って行った。私はチビ助にノートパソコンをリアカーから


降ろすように指示をしてからデブ蔵の後に着いて空き家に入って行った。


ここは都市伝説界隈では超有名なK県に実際に存在している廃墟群のなれの果てだ。その廃墟群はただの廃墟群ではなく


ある日、忽然とその街に住む住民が全て消えてしまったかのように消息不明になってしまっているのだ。


とある家ではまさに夕飯を家族で食べていた瞬間に消えていたり、とある家では洗濯物を干している最中に


母親と思われる人が消えていたりと夜逃げなどで人が消えたのではなく、町全体で突然、住民たちが消えているのだ。


近年、ようやくネットの普及によりバカなユーチューバーなどが無断で入り込んで空き家を荒らしまくった


おかげで政府はこの一角を全面封鎖する事態となって今では誰一人として入ることが出来ないようになっているが、


つい最近までは廃墟群のまま誰でも立ち入ることが出来ていたのだ。


私らはその都市伝説を全て解き明かしたのだから本来は部室でどんちゃん騒ぎしても良いくらいなのだが、


ここの住民たちがおよそ30年前にこの地に召喚されたのかと思うと同情せずにはいられない。なぜなら、


今でこそ日本人には馴染み深い異世界転移という設定も30年前では誰一人として理解できなかっただろう。


先ほどの体育館の会話のように王と主宰の言うことを素直に聞き入れた住民は少なかったはずだ。


更に言うと今日、こうして再び勇者召喚をしたということはこの街の住民の勇者は全滅したということなのだから。


奇しくも日本という国は太古の昔から神隠し伝説は数多く残っている。私はその多くがこういった異世界転移もしくは


転生によるものだと信じている。部員の2人も転移と転生については常に警戒はしていた。


今日だってあんなに突然の出来事だというのに2人とも悲鳴の一つも上げてないのだから本当に頼りになる。


きっと、私はこの2人さえいればこっちの世界でも楽しく暮らしていく自信はある。この部を立ち上げておいて


本当に良かったと今日改めて心底思った。


私が何やら考え事をしているので気を使ってかチビ助は無言でノートパソコンを起動させて


体育館の様子をデブ蔵に見せていてくれた。


パソコンから聞こえてくる音声から勇者が決定したことを私の耳に聞こえてきたのだった。


「はぁ~。勇者のくせに浮かれてんじゃねーよ。ば~か。」

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