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警官たちの真意が掴めず、警戒を顕に首を必死に振る私の返答を確認すると、警官たちはそれ以上追及することなく、あっさりと帰っていった。
彼らが去ってしばらくした後、私はその場にしゃがみ込み頭を抱えた。冷や汗が止まらなかった。上手くかわせただろうか。私は先ほどの会話を必死で思い返す。
しばらくして、気持ちが落ち着いてくると私は一人眉根を寄せた。
あの口ぶりは、まるで私ではない誰かを探しているようではなかったか。まさか、私ではない容疑者候補がいるのだろうか。このマンションに。
そんな考えに行き着き、私は大きく息を吐いた。それならば当面の危機は去ったと考えて良さそうだ。だが油断はできない。これからは失敗しないようより一層慎重に行動しなければ。
それから数日後、玄関前が俄に騒がしくなった。何だろうと思って外の様子を窺うと、先日の警官を含む数人の男たちがそこにいた。
あの日以来、警察の動きには細心の注意を払っていたため、今度は落ち着いて対応することができる。私は平静を装うと玄関から顔を出した。彼らは私を見るなり驚いた様子を見せた後、申し訳なさそうな顔をして謝罪を口にした。
「ああ。先日はどうも。少々うるさかったですか。申し訳ない」
私は愛想笑いを浮かべると、彼らに問いかけた。
「一体どうしたんですか?」
すると彼らは、少し迷った様子を見せた後に、こう言った。
「実は……最近この辺りを騒がせていた下着泥棒を逮捕しまして。今日は、その証拠品の応酬に」
私は一瞬呆気に取られた。
この人は何を言っているんだろう。下着泥棒はここにいるじゃないか。
私がポカンと口を開けて警官を見ていると、彼は言いにくそうに声のトーンを落とした。
「実は、お隣が犯人だったんですよ。女性の隣人なんて一番最初に被害に遭いやすいのに、本当に被害はありませんでしたか?」
私は言葉を失ったまま動けなかった。
どういうことだ? この男は誰のことを話している? お隣さんが下着泥棒? つまり、それは……。
全身から力が抜けてその場にへたり込む。他人が部屋に侵入したかもしれない気持ち悪さと同時に恐怖を覚え、震える手で口元を覆った。
そして同時に、私は自分が犯した罪を後悔した。私がクッションに詰めた下着の分だけ、今の私と同じような思いをした人がいるはずだ。
私は、一体今まで何をやっていたのか。今更ながら、自分の愚行の恐ろしさを思い知った。
それ以来、私は下着泥棒をしていない。