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p.7

 懐かしい思い出に浸りながら、私が鼻先の匂いを堪能していると、不意に玄関チャイムが室内に響いた。至福の時間を邪魔されたくなくて無視を決め込んでいると、「すみませーん!」という声と共にドンドンとドアを叩く音が続く。どうやら居留守を使っていることはバレているらしい。


 仕方がないので玄関へ向かい、扉を開けた私の顔は瞬時に凍り付いた。そこにいたのは、私が最も会いたくない、会ってはいけない制服姿の男性二人だった。


 どうしてこんなところに?!  まさか、バレたの?!


 動揺して微動だにしない私に向かって、彼らは大きな声で言った。


「こんにちはぁ! 警察ですが!」

「あのぉ、こちらにお住まいの方ですかねぇ?」


 その声で我にかえった私は必死に笑顔を作ると、愛想良く返事をした。


「はい。そうですけど……何か御用でしょうか?」

「実は最近この辺りで窃盗事件が多発してましてね。ちょっとお話を伺えますか?」


 警察官の言葉を聞いて一瞬にして青ざめる。まずいことになった。何とか誤魔化さなければ……。


「えっと……どんなことでしょうか?」

「ここ一週間ほどご在宅でしたか? ご自宅を空けられたりとかは?」

「いえ……」

「そうですか。では、最近身の回りで変わった事とかはありませんでしたか?」

「変わった事?……特には」

「こういう事は隠さずに言っていただいた方が我々も、住民の皆さんのお力になれるのですが……」

「そう言われましても……」

「そうですか……」


 私は、「何を聞かれても絶対にボロを出さないように。大丈夫、きっと上手くいく」 そう自分に言い聞かせながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。


 警官二人は顔を見合わせ、少し困ったような表情を浮かべつつ、何事かを小声で話し合っていたが、やがて一人がこう切り出した。


「あなたはこの部屋に住んで長いんですか?」

「へっ!?」


 しまった!!


 予想外の質問に思わず素っ頓狂な声が出てしまった。


「どうしました?」

「いえ、何でもないです……」


 ダメだ。落ち着け。冷静になれ。


 大きく深呼吸をして気持ちを切り替える。


「ええっと……、先月引っ越してきたばかりです」

「ふむ。じゃあ、隣人やこのマンションの住人とはあまり交流を持ったりは?」

「交流ですか……? 顔を合わせれば挨拶をする程度ですが」

「そうですか。怪しい人物を見たり聞いたりしたとか、不審者がいるなどという噂を聞いたことはないですか?」


 一体何の話だ。私の犯行がバレたわけではないのだろうか。

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