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*とある暇な日の悪戯書き*

プロローグ的な…


 忙しさと喧騒の溢れる街の片隅、薄暗く埃っぽい路地裏の一角には赤煉瓦の壁に燻んだ鉄製の片扉があった。「骨董屋(antique)-open- 」と書かれた木看板が無ければ此処が店であるとは誰も思わないだろう。

 閑古鳥すら寄り付かない程人の気配を感じさせない店内は、騒がしい都会の街とはかけ離れた静けさに包まれていた。

 窓から申し訳ばかりに差し込む日光と白熱電球が発する暖色光に照らされた室内には、魔術的な紋様の刻まれた壺や、針がXIIIとVの所で止まった大時計、洋墨の入っていない古びた万年筆など、統一性の無い物品達が陳列されていた。表の路地とは裏腹に埃の一片すら付いていないのは、此処の管理人の手入れの賜物であろう。

 それらは一見適当に並べられただけのように見受けられるが、何か特異的な法則に従って、何処か絶妙で美しい均整を保っているようにも思えた。——それこそ何か数秘術的な秘技の鱗片である。

 さて、そんな店内の奥、両開きの玄関から曲がる事なく立ち並ぶ棚々の合間を通り抜けた先の、散らかった勘定場には、異国風の安楽椅子に腰掛けた人影が一つ見受けられるだろう。

 それが、私。この骨董屋・輝石菴の店主にして店番の骨董商である。


*   *   *   *   *


 とまぁ、此処まで少しカッコつけて私の店について記してきた訳だが、なんとも微妙な出来だ。

 と云うより、客が少ないなど、何が嬉しくて自分を貶していたのだろうか…残念ながら図星であるのだが。

 まぁ、私は静寂を愛する性分であるに、この程度のことは、気にもとめない、と自己弁明も記しておこう。

 それはそうと、暇つぶしがてら書いているこの手記であるが、本来は私の業務日記なのである。

 今日は、暇潰しがてら普段の私の仕事について色々書き込んでいるだけだ。

 まぁそれは私にとっても、自分の仕事の再確認になり有用であろうから決して無駄なことではないと思いたい。

 そもそも普段、私はこの日記に何を書き込んでいるのか、と云う話である。それはこの骨董屋、と云うより私が受け持つ少し特別な仕事に関連しているのだ。

 この店には偶に不思議な、魔法の込められた道具が訪れることがある。いや、この店特有と云う訳でないのだろう、と云うのも此処に訪れる魔法道具の数々は、既にその力を失いかけているものが殆どで、その類のものは他の店に訪れたところでその力を見出されることなく、他の物品と共に倉庫の肥やしに成るか、棚に陳列されていることだろう。

 幸いにして、私には魔法を見出す力と、その道具の声を聞く術がある。故に、魔法道具としての一生、道具としての半生を終えるそれら物品の、謂わば最期の言葉を書き留めるのが、私の仕事であり使命である。と云ってもただの自己満足であるのだが…。

 この日記は、そんな私と魔法道具達の対話の書留だ。彼らの散漫とした声を聞き拾い、私なりにまとめた手記である。

 っと、珍しく来客のようだ…左の扉を三回ノックしたと云うことは常連さんかな?

 ふむ、流石に疲れたな、よくもまぁこんな由無し事を此処まで書きつけたものだ。

 さてと、そろそろ筆を置き、本来の業務に戻ることにしよう……。

.......お読み頂き有難う御座います。

それでは、また、ごゆるりと

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