【side-アレン】メバエハジメタモノ(9)
※"【side-アレン】メバエハジメタモノ"は残酷な描写を含みます。ご注意ください。
「グランデ様、サラマン様
ありがとうございました。」
会場へ戻るとティアナ様にお礼を告げられた。
しかし、レオン様はしばらく何も返さなかった。
「あの・・」
沈黙をやぶろうとしたその時、
「君のセリフには根拠がない」
レオン様が口を開いた
「え・・?」
「あっ・・えっと・・・・」
困惑するティアナ様に
「でも、信じてみたくなる」
レオンはそう告げると
「ふっ」
と、笑みをこぼした。
感情を見せないと有名な氷の貴公子の笑顔
しばらく驚愕していると、
ふと頬を染めたティアナ様の姿が視界に入った。
熱い何かが胸を焦がす
「・・・?」
その正体にこの時は気づいていなかった。
それから時間をあけないうちに、
ユリウス公爵の元へと弟子入りすることが決まった。
魔法騎士が多く滞在する地に、
劣等生である自分が赴くことに父は心配したのだろう。
許可をとるために条件を与えられた。
週に一度、ミシューレ家に出向きアルフへ剣術を教えること。
父はきっと、いつでも逃げられるようにと心の拠り所を与えてくれたのだ。
ユリウス家の敷地はとてつもなく広く、公爵邸と訓練場は遠く離れていた。
それでもティアナ様の話題はとびかっていて、名前が上がるたびに胸がドキッと高鳴った。
そんなある日、学院を卒業しめったに会えなくなっていたオーウェン兄さんとクロウド家でばったり遭遇した。
「アレン?なんでここにいるんだ?」
オーウェン兄さんは、今年になってポーションなど定期購入商品の大手取引先をクライン公爵から引き継いだ。今日は休日だったのだが、数年に一〜二本入るかどうかという貴重な最上級ポーションが手に入ったので最大手の取引先であるクロウド公爵家に商品を届けたところだったらしい。
自分も、クロウド家に弟子入りした経緯を全て伝えた。
「それで、魔法訓練は順調なのか?」
「いえ…思うようには……」
「そうか…」
少し呼吸をおいて
真剣な表情をした兄さんが口を開く
「…アレン、俺の力は知ってるよな?」
「うん。鑑定スキルだろ?」
「あぁ。このスキルが見えるものは知っているか?」
「物の種類や成分、人の名前や属性だろ?」
「実は…それだけじゃないんだ」
「え?」
「俺は性質も見えるんだ」
「性質?」
「あぁ。教科書には載っていない妖精や精霊の性質も」
オーウェン兄さんの告白に目を見開いた。
鑑定スキルにそんな力があるなんて聞いた事がない。
「猫妖精ケット・シーは人を惑わせる力に長ける。
その性質は強欲で欲しいものは何でも奪い取る盗人。
契約すると属性を奪われるが奪うこともできるようになる
反面、強欲さが融合していき道徳心が欠落する」
『属性は奪われるが奪うこともできる』
強くなることに強力な執着心を持つ今のアレンに
他の言葉は頭に入らなかった。
瞳の中に灯ったゆらりと揺れる炎
ふらふらと立ち上がると
オーウェンを残しその場から去っていった
その後姿を見つめながら
「なぜケット・シーが君に憑りついたと思う?」
オーウェンは呟く
「どうしようもなく惹かれたのさ。
君の中に眠る、かつての君主の血に」
その表情は喜びに満ちていた
「善人なんて背徳感に溺れた偽善だよ」
一年後、
アレンは中級魔法を扱えるようになっていた。
(※)ムーンライトノベルズに載せている作品のR15指定バージョンです。
(※)改訂している話には★マークを付けています。
(※)ムーンライトノベルより更新は遅れます。
(※)ムーンライトノベル版(https://novel18.syosetu.com/n9962hu/)
(※)ムーンライトノベル版には18禁描写が含まれます。ご注意ください。