バニティ 21
アーシュタワーの敷地にルキアとカイトは大きく転がりこむように着地した。
「痛ったあ~」カイトはしたたかに背中をうちつけた。
「静かに!さあ、お姫さまのところに行くよ」
「カゲは大丈夫でしょうか?」
「あの男なら、きっと大丈夫さ。ほら、こっちに来て!」
ルキアはカイトの手をつかむと走り出した。
「どこから入るんですか?」
肩で息をしながらカイトが尋ねた。
ルキアはにっと笑うと
「私はここで作られて、ここに住んでたんだよ。なんでも知っている。
昔、間違えて、ここのダストシュートに落ちたことがあるんだ。
ちょうど建物の西側の焼却炉の近くに出てきた。少し、つるつるするし
におうけど、頑張れば、建物の中に侵入できる」
「え~~~~~、ごみ溜め?」カイトがあからさまに顔をしかめた。
「聖者には厳しいだろうが、贅沢言わない!お姫さまのためだよ。
ストップ。そっちを歩くと監視カメラに映る。こっち側だ」
二人は慎重に建物の西側へと移動した。
「ここだよ」
ルキアの背後から鼻をつまみながら恐る恐る顔を出したカイトは
ホッとした表情をした。
「ゴミと言ってもロボットの一部とかなんですね」
「ここに住む人間はアーシュただ一人だからね。あとは、
身の回りの世話をするアンドロイドばかりさ。だから生ゴミはあまり出ない」
二人は息をひそめてダストシュートを登りはじめた。
カイトが先を進み、滑りそうになると後ろからルキアにお尻を押された。
「ほら、へっぴり腰。もっと力を入れる!」
「わかってます!」
つるつる滑るダストシュートをカイトは渾身の力でのぼっていく。
時折、上からゴミが流れてくるのを避けねばならない。
継ぎ目継ぎ目に手足をかけ、上へ進んでいった。
(急がなくちゃ)
15分ほど進むと、遠くに小さな光が見えた。
(もう少し)
カイトはダストシュートの入り口にたどりつくと、笑顔でルキアを振り返った。




