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バニティ 20

裏口を出ると、ルキア達はドクターアーシュの住むタワーめがけて走った。


「なんなんだ、あいつら。おかげで店がぐちゃぐちゃだ」

琥珀が情けない声を出す。


「どうせ近いうちに世界は滅ぶんだ。今さら店の一つや二つ

どうってことないじゃない」ルキアがクククッと笑った。


「世界が滅ぶなら、せめてその前にルキアにいい夢を見せてもらいたいよ」

琥珀が媚びるような上目遣いをした。


「高くつくよ」


四人は曲がりくねった裏道を駆け抜けていった。

やや息切れしている琥珀とは対照的に、ここまでの冒険で体力がついたカイトは

カゲとルキアのペースにぴったりついてきている。


「銀色オニヤンマだ」カイトが上空から聞こえる羽音に気付いた。


幼児の身長ほどもある巨大なトンボが舞い降りてきた。


「琥珀。あんたは関係ない。そこの抜け道から地下にもぐりな」

ルキアが叫んだ。


琥珀は目でうなづくと、一団から離れて下水道の中へダイブした。


その時、三人の行方を阻むように左右から無数のカマキリが飛び出してきた。


カゲが袂から長剣を取り出し、カマキリたちを切りつける。


だが袋小路に迷い込んだのか、高い壁が前方にそびえたっていた。


「行くよ、カイト。この向こうがアーシュのタワーだ」


ルキアはカイトの胴体を片手でひょいとかかえあげた。


「わわわっ」カイトが手足をバタバタさせる。


「カゲ、悪い。ここを頼む」

カゲは静かにうなづくと、壁の前に軽くしゃがんだ。


ルキアはカゲの膝、肩へと足をかけるとカイトを抱えたまま

高く跳躍した。


そのまま4~5メートルもあろうかという壁を勢いよく飛び越えてゆく。

月の光がルキアたちの影を映し出す。

カイトの「わ、わ、わ、わ、わ~~~~~~」という声が響いた。



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