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バニティ 16

「ここが……バニティ……」カイトは薄暗がりの中、目を凝らした。


「正確には、バニティの裏通り。表は、あの派手な音楽が聞こえてくるところだよ」

マンホールの蓋を閉めながら、ルキアは明るい方へ目を向けた。


「カイト。私の言うことをよく聞いて。カイトは金持ちの坊々に見えるからね。

先頭を歩くんだよ」


「えっ?僕が?」


「私たちは、お付きの従者のふりをするから」


「わかりました」


「いい?胸をはって堂々と歩くこと。何を見ても動揺してはいけない。

あと、カゲは少し目線を落として、付き従うように歩くこと。わかった?」


「ああ」カゲが無表情にうなづく。


「じゃあ、まずここから右に20m進んで。そこに青いカーテンがかかっている窓がある。

その窓を左手に曲がってまっすぐ行く。とにかく、何を見ても動揺してはいけないよ」


カイトは唇を引き締めてうなづくと胸をはり、歩き始めた。


なんといっても僕はアーク出身だ。聖者の街だ。何度も自分に言い聞かせる。


右に20m進み、青いカーテンを確認する。

建物の角を曲がり、細い路地に入りこんでいった。


カイトは鼻をつく嫌なにおいに顔をしかめた。

進んでいく壁ぎわにもたれるように無数の人間が座り込んでいる。


かつては羽振りが良かったのであろう。服や持ち物に名残りがある。


もっとも金や銀でできた細工物などは、とうの昔に野盗に盗まれたあとだ。


人々は口を半開きにして、虚ろな眼差しで宙を見ている。そこら中に

死にゆく人間の腐臭が漂っている。


「うっ」声を上げかけたカイトをルキアは後ろからこづいた。


吐き気をおさえてカイトは路地を抜けた。あと数歩で明るい大通りだ。

心の中で自分の歩数を数えて無になろうとした。


3歩、2歩、1歩。よし!


大通りだ。


そこは光り輝く黄金の街だった。


「ゴールド、ゴールド、ゴールド」

男が叫びながら小躍りしている。

「お客さん、どこから来たの?寄ってかない?」

道化のようにおどけて声をかけてくる。

「ここは、ゴールドの都。黄金の街!」




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