バニティ 14
「さてと、とにもかくにもバニティの中に入らなきゃね」
ルキアが腰に手をあてて、カゲとカイトの顔をじっと見た。
「う~ん。カイトはともかく、カゲのほうはバニティに来る富裕層のお客さまって
いうには無理があるねえ。グアヤキルがしみついている」
ルキアはため息をついた。
「まあ、この場合は行商人に化けるのが一番良いんじゃない?」
門番のルキアが階下から二人に着せる洋服を持って
上がってきた。
「あら、気が利くじゃない?サイズも合いそうだ。じゃあお二人さん
試しにこれを着てみてよ」
二人はルキアが放り投げた服を受け取ると、戸惑いながらも
隣の部屋に着替えに行った。
「じゃあ、私も着替えますか」
ルキアもつぶやくと、着ている服を思い切りよくまくり上げた。
形の良い乳房が勢いよく飛び出してくる。
はりがあり、熟れた桃のようにみずみずしい。
「ホント、こうしてみるとアンドロイドには見えないよね。
ドクターの努力さもありなんだ」
ルキアは鼻歌を歌いながら、フードのついた長いドレスをすっぽりとかぶった。
顔がバレないように、仮面で目を隠した。
やがて、着替えを終えたカイトとカゲが隣の部屋から出てきた。
カイトは麻の素材のフードがついたベージュの上着と、焦げ茶色の長ズボン。
カゲは、厚手の生地で作られた濃紺のブラウスに少しすりきれた黒い革の
パンツを合わせていた。
「マントと剣はどうすればいい」
「さすがに手に持っているのはまずいから、この袋に入れておいて。
正面から入るのは難しいから、夜中にこの小屋の地下通路から
バニティの下水道を通り、潜入することにする」
「わかりました」カイトが真剣な表情でうなづいた。
「見つかれば、捕らえられるかもしれない。その時は、私は
あんたたちを見捨てて逃げるけど、それは覚悟しておいて。
そしたら、まずは腹ごしらえだね」
ルキアは、ウキウキして、いたずらっこのように舌を出した。
「ルキアさん。カゲ」カイトは真顔になると「本当にありがとうございます」
と深々と頭を下げた。




