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バニティ 12

「僕は、ディアナの病気を治す方法を探すために旅に出ました」


カイトは、両手でハナザサ茶のコップをそっと覆うと、目線を下に落としたまま

ぽつりぽつりと話しはじめた。


「ディアナというのは、僕の従姉妹です。僕の母は、僕が幼い頃に謎の病で

亡くなりました。ずっと元気だった母が、ある日を境に目覚めなくなったのです」


「目覚めなくなった?」訝しげにルキアが眉をひそめた。


「そうです。前の夜は、いつも通り僕の頭を撫でて、おやすみなさいと

笑顔で部屋の明かりを消してくれた母は、翌朝、何時になっても

起きてきませんでした。心配になった僕が、両親の寝室に行くと、

父が頭をかかえてうなだれていました」


カイトはその時のことを思い出して、涙ぐんだ。


「お父さん。お母さんはどうしちゃったの?眠っているの?」


「カイト」父はとても疲れた表情で顔をあげた。

「うん。眠っているんだ。疲れているんだろう。もう少し寝かせてあげようね」


ところが、母は何日たっても何週間たっても目を覚まさなかった。


飲まず食わずなのに、肌の血色も良く、まるで生きているようなのに。


でも、どれだけ呼びかけても、身体を揺さぶってもぴくりともしなかった。


「お母さん、お母さん」母の枕もとで何度呼びかけたことだろう。

繰り返すごとに、絶望的な気持ちになり涙がこみあげてくるようになった。


やがて、周りの大人たちがひそひそと話し出す。

「先代の奥様もそうだったから……」

「でも、三代前でも同じことがあったはず……」

「けど、あの方はもうかなりのご高齢でしたでしょう?お若いのに気の毒な……」



カイトはその時のことを思い出し、軽く鼻をすすったが、気を取り直して

語り始めた。



「それは、僕らアークの碧眼の一族の女性に起こる謎の奇病でした。

ただ、全ての女性に起こるわけではないし、何歳のときに起こるという

決まりがあるわけでもない。原因も分からないし。治療法もない。

周りの大人たちは運が悪かったと嘆くだけでした。やがて、母は

共同墓地に埋葬され、泣きじゃくる僕を慰めてくれた人が、

歳の離れた従姉妹のディアナでした」


「ディアナは僕にとって、唯一の光でした。母を失って、悲しみにくれていた僕に

笑顔を取り戻してくれた人です。そんなディアナが、母と同じ病に倒れました。

僕は治療法を探すため、アークを飛び出しました」


カイトは、決意に満ちて目をキッと見開くと


「真実の山に行こうと思ったのです。真実の山の老師なら何かをご存知かも

しれないと。でも、ディアナは今、バニティで囚われていると

聞きました。僕は助けに行かなくちゃいけない」


ルキアは神妙な表情で、カイトの目を見つめながら聞いた。


「バニティに行けば、子どもは殺されるかもしれない。それでも行くのかい?」


「行きます。たとえ、一人でも僕は行く」


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